コンストラクション・マネジメント 株式会社プラスPM

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指定管理者制度の活用と官・民2病院の合併。
地域医療再生の手本となる川西市立総合医療センターの秘密に迫る

川西市立総合医療センター川西市立総合医療センター

川西市立総合医療センター

高齢化と人口減少。この不可避な潮流の中で、多くの自治体が公立病院の維持に苦悩しています。全国には8,000以上の病院があります。この10%にあたる約800病院が公立病院ですが、多くは地域の深刻な高齢化と人口減少の影響で、自治体からの財政支援によって経営が成り立っているというのが現状です。
兵庫県南東部にある川西市も同様の課題を抱えていました。1983年に開業した市立川西病院は2002年に赤字経営に転落。2014年には経営健全化団体になってしまいました。地域の公立病院として市民の健康を守り続けたい想いとは裏腹に、毎年発生する10億円の補助金投入。もはや病院や自治体の努力だけではなんともならない状況でした。

しかし、この市立川西病院は2022年9月に川西市立総合医療センターとして再スタートを切ることができました。開院2ヶ月もせずに病室はほぼ満床で、課題だった医師不足も解消。どのようにして川西市は地域医療の課題を解決したのでしょうか。その裏には、指定管理者制度の思いも寄らない活用方法と、苦難の道であっても地域医療を守りたいという川西市と医療関係者の想いがありました。
課題が山積する地域医療において、再生に向けたひとつのモデルケースとして注目される川西市立総合医療センター建設プロジェクト。構想段階からプロジェクトを牽引した、川西市健康医療部の作田哲也部長にお話を伺いました。

病院を改革せねば市が潰れる! 経営健全化団体になってしまった公立病院

川西市 健康医療部部長 作田 哲也 様

川西市 健康医療部部長 作田 哲也 様

「病院が出来た約40年前は、川西市の人口がもっと増える可能性もありました。北部にニュータウンができて、継続的に人口が増える想定で、地域医療の要として市立川西病院が建設されたのです。実際に2001年あたりまでは大きな赤字を出さずに経営していましたが、医療制度改革で研修医制度が見直されて医師の確保が難しくなったあたりを皮切りに状況が悪化し、病院や自治体単体の努力だけでは課題解決が出来ない状態になっていきました」と、作田様はプロジェクトが動き出した頃の状況を振り返ります。


当時の市立川西病院は、現在の川西市立総合医療センターが建つ場所よりも7〜8キロ北にありました。高齢化が進む中で患者の増加は見込めず、立地の不便さから医師も通いたがらない状況でした。市も病院も、手を変え品を変えて対策を検討しましたが、抜本的な解決方法は見つからないまま、毎年10億円の赤字を市が財政支援する形で運営されてきました。
「病院の老朽化も進む中、一刻も早く病院改革をしなければ川西市そのものが潰れてしまうかもしれない。そうしたギリギリの状況で行き着いたのが、指定管理者制度の活用と官民2病院の合併でした」(作田様)

病院再編の負担を10%にした驚きの策

プラスPMチーフマネジャー 濵田 徹

プラスPMチーフマネジャー 濵田 徹

知恵を絞った川西市が行き着いた抜本的解決策。それは、医療法人協和会とタッグを組むことでした。協和会は川西市発祥の医療法人で、複数の病院を経営しています。そのひとつである協立病院は老朽化による建て替えを予定しており、すでに市街地近くに土地も確保していました。 この協立病院と市立川西病院が合併し、指定管理者制度を活用して新病院の運営を協和会に委ねること。そして、協立病院が確保していた土地に新病院を建設すること。この2つを実現することで、病院建て替えに必要な財源を確保し、継続して地域医療を提供し続けられる可能性を見出しました。


事業費負担割合

事業費負担割合

指定管理者制度とは、公共施設の管理・運営を、民間企業や団体などに代行してもらう制度です。また、病院を再編すると国からの財政支援(地方交付税措置)として総費用の40%の支援を受けることができます。一般論で考えると、総費用の40%を国からの支援で賄い、残りの60%を2病院で折半することになります。しかし、毎年多額の赤字を財政支援し続けていた川西市が、病院改革のために出せる額は限られていました。そこで、川西市は大胆な提案を行います。
「川西市が出せる額を正直に協和会さんにお伝えしました。そして、総費用を折半し、川西市側が負担する50%のうち40%は国からの支援を活用する、つまり川西市側の負担は10%ということにさせていただきました」(作田様)
普通に考えると、この提案は市に都合の良い内容です。しかし、協和会側も様々な補助金を活用できること、2病院を統合することで、単体で新病院を建設するよりも良い病院ができること、公立病院の運営に関われること、そして何より、協和会も川西市発祥であったため、地域医療を支えられることに意義を感じてくれたといいます。
「地域の病床数が決まっている関係で、協和会さんはこの統合によって1つ病院を閉じることになりました。にもかかわらずこの提案を受けてくれた協和会さんは、大きな決断をされたと思います」と作田様は語ります

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医療従事者との対話、市民との対話。困難を極めた大改革

協和会との座組は決まりましたが、本当に大変なのはここからでした。官民2つの病院を統合することは、まったく違うカルチャーを1つにするということです。また、元々市立川西病院にいた職員にとっては、公務員ではなくなることと、給与のダウンを意味していました。当然、院内からは大反発が起きました。川西市は職員に対して、向こう4年間の給与の維持と、どうしても公務員でいることを希望する場合は、病院以外の現場で公務員として働く道を示しました。その結果、元々いた病院職員のうち60人弱が別の職場に異動となりました。
また、新病院設立に先行して、2019年4月から協和会が指定管理者として市立川西病院の運営を開始しましたが、別の病院にいた職員同士がそれぞれのスタイルを受け入れることは容易ではありませんでした。
「病院内のチームビルディングについては協和会さん側が率先して行ってくれました。たとえば、新病院では看護師長さんが市側の職員なら、副師長さんは協和会側の職員にするというふうにたすき掛けで組織を作ったり、キーマンとなる人間を入れ替えたり。両者が徐々に団結できるように工夫をされていました」(作田様)

医師・看護師などスタッフが憩い、交流できるスタッフコモンズ

医師・看護師などスタッフが憩い、交流できるスタッフコモンズ

一方で、反発は市民からも噴出しました。病院を合併して南に移すということは、北部地域の住人からすると病院が遠くなることを意味します。この統合で市の赤字が減り、新しい立派な病院ができるとしても、身近にあった病院がなくなるのは不安なことです。
「とにかく、ひたすら市民と対話しました。小さな説明会でも全て参加して、市が置かれている現状と、これしか解決策がないことを説明しました。その際に大切にしたのが、ブレずに同じことを説明し続けることでした。最後まで納得はいただけなかったかもしれませんが、同じことを繰り返し説明させていただきました」(作田様)

新病院建設に関連して開催された会議の数はゆうに200回を超えるといいます。
「どれほどの苦労があろうとも、川西市は公立病院を維持しなければなりませんでした。なぜなら、公立病院は救急、小児、周産期、つまり政策医療の要です。市民が安心して生活するには、市民病院が必要なのです」と、作田様は力強くおっしゃいます。


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新病院はほぼ満床! 医師不足の課題も解決!

こうして、2022年9月に川西市立総合医療センターがオープンします。現在の状況について作田様にお伺いすると、「開院から約2ヶ月ですが、ほぼ満床です。消防本部からも、市内の搬送率がアップしているし、搬送時間も短縮できているという報告がありました。また、新病院になったこと、立地が良くなったことで、課題だった医師のリクルーティングも順調に進んでいて、すでに80名の医師がここで働いています」と嬉しそうに教えて下さいました。中には、「本当に気持ちの良い病院でした。看護師さんもお医者さんも丁寧に対応してくださったし、病室からの眺めも最高でした」と、わざわざ退院後に電話をくれた方もいたそうです。

2階にはテラスがあり眺望もよく、緑あふれる空間となっている

2階にはテラスがあり眺望もよく、緑あふれる空間となっている

地域の植生・生態などを記したマップも掲示されている

地域の植生・生態などを記したマップも掲示されている

十字を重ね合わせたような特徴的な建物配置により、どの病室からも眺望が望める

十字を重ね合わせたような特徴的な建物配置により、どの病室からも眺望が望める

新病院の特徴の1つに、全室個室である点があります。これは公立病院には非常に珍しいことで、200床以上の公立病院では日本で2つ目の事例といわれています。個室であることで、入院している方は周囲を気にせずに自分の治療に専念することができます。看護する側の負担は大きいですが、患者さんファーストの病室にしたいというのは、協和会側の強い希望でした。

また、地域の基幹病院として地域包括ケアシステムの要となる病院になるために患者支援センターを設置し、病院内だけでなく、院内外の多職種連携による支援・調整を行っています。


周辺自治体や地域の病院、医師会などで『地域医療連携推進法人』を設立

地域医療改革は、病院建設だけに留まりませんでした。周辺自治体や、地域の病院、医師会などと一緒に『地域医療連携推進法人』を設立して、地域医療に関わるメンバーで手を取り合う仕組みを作ったのです。
「市立川西病院の跡地に、隣接する猪名川町の今井病院が移転してきてくれたのです。しかも、この地域に必要な回復期の病院として来てくれました。ただし、ある程度の規模で病院を経営するには、協和会が持つ病床数の中から、今井病院に50床お渡しする必要がありました。通常、病床の移転は難しいのですが、地域医療連携推進法人を設立すれば、病床の移転は可能です。そこで、どうせ法人を作るなら、地域医療に関わるみんなで座組を作りましょう、となった次第です」(作田様)

こうして、川西市の医療改革は新たなスタートを切ることとなりました。

患者様への分かりやすさ、文字の大きさ、厚みなど細かなところまでこだわった診察室入り口のモニター付きサイン

患者様への分かりやすさ、文字の大きさ、厚みなど細かなところまでこだわった診察室入り口のモニター付きサイン

最後に、コンストラクション・マネジメント(CM)について、そしてプラスPMについての評価を伺いました。
「CMを入れて本当に良かったです。というのも、自治体職員である自分たちだけでは、ゼネコンさんと対等にお話ができなかったと思います。川西市のような人口15万人程度の自治体には、専門性を必要とする建築を自前で行うことは困難です。私たちの気持ちを汲み取って交渉にあたってくれるプラスPMがいなかったら、今の病院はできていなかったでしょう。プラスPMを必要としている自治体は、まだまだあるはずです」(作田様)

取材中は、この他にも多くの地域医療への熱い想いや、苦労話、プラスPMへの高い評価を伺うことができました。
川西市立総合医療センターは、公立と民間の2病院を統合した一大建設プロジェクトとして、今後地域医療構想を考えるうえでの1つのモデルケースになるのではないかと思います。そのようなプロジェクトをご支援できたことを誇りに思います。

担当者から

「熱意」をかたちにするお手伝い

プラスPM東京支店
チーフマネジャー

濵田 徹

川西市様にプロポーザルにて当社を特定いただいたのは2018年6月の事ですので、それから4年以上が経過して、開院を迎えたことになります。
本事業は、まずなんといってもスピードが大切でした。川西市様にも指定管理者である医療法人協和会様にもご協力いただき、早期の意思決定と後戻りしない事業進捗を成し遂げることで、予定より早期の建物竣工引き渡しが可能となったと思っています。
既存病院である市立川西病院と、地域に根差した民間病院である協和会様の協立病院が、1つの病院を共につくり上げるというプロジェクトである本件は、公立病院としては他事例の少ない全室個室ということもあり、非常に難度の高いものでした。公立病院と民間病院を一体化させるのは、意思決定プロセス上も容易ではないですが、建設以外の部分でも非常に大きな負担が発注者様にのしかかります。これを成し遂げられた発注者の方々は本当に凄いと思います。
「既存市立病院の経営難を克服し、これからも長年にわたって患者さんに愛され続ける病院を、なんとしても川西市につくる」という市と協和会の方々の熱意は並々ならぬものでした。当社は、最適な品質の病院を最短のスケジュールで予算内に建設するため、短期間で最高の成果を出すことを意識してご支援にあたりました。
これまでに築いてこられてきた地域の皆さまとの関係や病院の理念・経営スタイルなど、川西市様と協和会様で議論を重ねられ出来上がった新病院は、きっとこれからも素晴らしい病院として地域の皆様に愛されるものであると確信しています。

建築概要

工事名称川西市立総合医療センター建設工事
事業主川西市
工事場所兵庫県川西市
敷地面積11,250.91m2
建築面積7,126.78m2
構  造RCST造
階  数地上9階
延べ面積36,619.14m2
コンストラクション・マネジメント株式会社プラスPM
設計監理清水建設株式会社一級建築士事務所
施  工清水建設株式会社
工  期2020年10月~2022年5月

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