PM/CM、建設コラム

本記事はデータセンターの建設を検討している事業者様向けに、プラスPMで大型データセンターのCS(コア&シェル)の建設プロジェクトを支援した経験から、データセンターを建設する際、コンストラクション・マネジメント(以下、CM)方式を採用することで得られるメリット・有用性と具体的な支援内容について解説します。
建設プロジェクトにおいて、CM方式を採用することで発注者は以下のようなメリット・有用性が得られます。
建設プロジェクトにおける、CM方式のメリット・有用性
データセンター建設を進行する際にも、よくある課題に応じて以下のようなメリット・有用性を得られます。
| 課題 | メリット・有用性 |
|---|---|
| 要求水準定義の難しさ | 将来のラック数や電力・発熱量を踏まえた要件整理を専門的にサポートし、的確な初期計画を策定してもらえる |
| 立地の選定 | 電力・通信・災害リスク・法令規制などを総合的に評価し、最適な立地選定の判断材料を提供してもらえる |
| CS工事とFO工事(※1、2)との区分・調整 | 複雑なCS工事とFO工事の区分とそれぞれの工事時期をCM会社に判断してもらえる。その結果、工期の短縮や手戻り・無駄な工事の削減(コストの削減)、施工品質の向上が期待できる。 |
| 事業者の選定・比較 | 設計・施工会社の選定基準を明確化し、提案・見積もり内容を建築の専門家として第三者的立場で評価してもらえる |
| 社内リソースやノウハウの不足 | 施設の立上げ経験の少ない企業でも、専門家に発注者側の立場で計画立案から運用準備まで一貫して支援してもらえる |
| コストマネジメント | CS工事において、専門家から工事費や設備費の精査・改善事項の提案をしてもらうことで、コスト最適化が実現できる |
| 省エネ・創エネ・蓄エネ対応の知識不足 | CS工事では、省エネ性と信頼性を両立する設備構成の提案を受けることができ、長期的なランニングコスト削減につながる |
※1 CS工事:コア&シェル(Core & Shell)工事。データセンターの建物本体工事のこと。
※2 FO工事:フィットアウト(Fit Out)工事。おおまかに表現すると、本体工事以降の架装工事やエンジニアリング整備の統合工事のこと。
データセンターの建設には建築や設備に関する知識だけでなく、通信や電力、セキュリティ、運用体制など幅広い専門知識と高度な計画力が求められています。
そのため、発注者の立場で、専門的に支援してもらえるCM会社を起用し建設を行う「CM方式」が注目を集めています。
進行段階別にCM会社が提供する支援内容について解説します。
「基本構想段階」は、プロジェクトの目標や大枠を決定するうえで、最も重要なステップです。 CM会社は発注者のパートナーとして、以下のような初期支援を行います。
基本構想段階での一般的な支援内容 例
データセンター建設における具体的な支援例は以下のとおりです。
データセンター建設の場合の支援内容 例
それぞれについて解説します。
他の建築プロジェクトと同様に建設計画の事業採算性を数値で「見える化」し、投資判断に必要な技術的裏付けを提供します。
データセンターの建設に適した場所を選ぶために、以下の観点を総合的に評価し、最適な立地選定をサポートします。
立地を選定する際の検討項目
上記条件を定量的に整理し、運用面・災害対応・将来の拡張性を踏まえた立地選定の意思決定を支援します。
データセンター建設では将来を見据えた設計を初期段階でどれだけ織り込めるかが、長期的な安定運用の鍵となります。
CM会社は下記のポイントを考慮した基本構想の立案を支援します。
拡張性・柔軟性をもたせるためのポイント
上記のように初期段階から拡張性を描いておくことで初期投資を最適化しつつ、将来的な事業展開への柔軟性も確保できます。
設計・施工者選定段階では、CM会社から以下のような支援が受けられます。
設計・施工者選定段階での一般的な支援内容 例
データセンター建設における具体的な支援例は以下のとおりです。
設計・施工者選定段階での支援 例
それぞれについて解説します。
データセンターの建設では、設計事務所や施工会社の選定がプロジェクトの成否を大きく左右します。 電源・空調・通信・セキュリティといった各設備が高度に連携するため、汎用建築とは異なる評価基準が必要です。
CM会社は例えば以下のような評価項目で選定方法と評価基準の策定を支援します。
| 事業者 | 評価項目 例 |
|---|---|
| 設計事務所 |
|
| 施工会社(ゼネコン/サブコン) |
|
また、コンペや入札に向けての評価シートやウェイト配分(価格・技術・実績のバランス)も策定し、発注者が公正かつ技術的に根拠のある判断を行える仕組みを構築します。
データセンター建設では、電源・空調・通信・セキュリティなど多岐にわたる工種ごとの専門業者から提出される見積書を、発注者自身で精査・比較するのは容易ではありません。
CM会社は、各社から提出された見積内容について、
などを技術的視点で査定し、価格の適正化と過剰見積の排除を支援します。
さらに、発注者に代わって価格交渉や契約条件の調整も行い、コストの最適化を支援します。
設計段階では、CM会社から以下のような支援が受けられます。
設計段階での一般的な支援内容 例
データセンター建設における具体的な支援例は以下のとおりです。
データセンター建設の場合の支援内容 例
それぞれについて解説します。
データセンターの無停止運用を前提に、CM会社が設計図書を精査し、以下の観点から技術的な妥当性を確認します。
あわせて、エネルギー効率と可用性の両立をサポートします。
データセンターでは情報システムを守るための「防衛線」として、物理的なセキュリティ対策が不可欠です。 そのため、CM会社は監視カメラの設置、電磁波シールド設置、生体認証による入退室管理、サーバールームまでの動線分離など、物理セキュリティに関する設計内容を多角的に精査・評価します。
そのうえで施設全体のセキュリティ要件に照らし、漏れや過不足のない計画となっているかを確認し、必要に応じて改善提案を行います。
データセンターの建設では高い信頼性と性能を維持しつつ、初期投資の最適化が求められます。 CM会社は施設の品質や運用性を損なうことなく、コスト削減につながる技術的な代替案を検討・提案します。
例えば、
などの具体的な提案を行い、プロジェクト全体のコスト最適化を図ります。
データセンターでは将来的なサーバールームの増設やテナント構成の変更に対応できる拡張性と柔軟性が求められます。
CM会社は建物の構造・設備・動線などの計画を確認し、将来のレイアウト変更や電力増強に支障がないかを検証します。 また、テナント誘致を見据えたゾーニングや共用部の計画についても、利用効率と利便性の観点から助言を行い、長期的な資産価値の確保を支援します。
データセンターでは初期段階で全設備を導入せず、将来的な需要増に応じて段階的に機能を拡張するケースが多く見られます。
CM会社は「今後予定される後工事(FOにおける、ラック設置工事、電源設置工事、空調工事など)」を想定し、現段階の設計においてそれらがスムーズに行えるよう、スペース・配管・配線経路の確保状況を確認します。
後工事を見据えることで、将来的な施工時の制約や再工事リスクを最小限に抑えます。
データセンターではCS(コア&シェル)とFO(フィットアウト)の区分や役割の明確化が重要です。
どこまでをCSで行い、どこからをFOが引き継ぐのかを事前に明確にしておくことで、後の工程でのトラブルを防ぎ、スムーズな施工につながります。
上記のような支援により、発注者は工事の品質や契約内容を確実に確認でき、円滑な引き渡しと施設の運用開始を実現することができます。
施工段階では、CM会社から以下のような支援が受けられます。
施工段階での一般的な支援内容 例
データセンター建設における具体的な支援例は以下のとおりです。
データセンター建設の場合の支援内容 例
それぞれについて解説します。
データセンターでは、微細な塵埃(ちり・ほこり)・ウィスカ(whisker)がIT機器の故障原因となるため、徹底したクリーン管理が不可欠です。
CM会社は、
などを通じて、高い清浄度を維持した施工環境の実現支援を行います。
データセンターでは、建物本体をつくるCS(コア&シェル)工事と、内部設備を整えるFO(フィットアウト)工事が密接に関わります。
それぞれの工事が重なる部分では、工程や作業内容のずれが生じやすいため、現場での施工調整が欠かせません。
CM会社はCSとFOの工事工程や作業範囲、設備の接続箇所などを整理し、関係者間の調整を行うことで、工事全体のスムーズな進行を支援します。
データセンターでは大量の電源ケーブルや通信ケーブルが張り巡らされるため、配線の品質がシステムの安定稼働や将来の運用効率に直結します。
CM会社は各ケーブルが設計図どおりに正確かつ機能的に敷設・ラベリングされているかを厳しく監督し、保守性や拡張性に優れた配線環境の実現をサポートします。
データセンターでは非常用発電機やUPS(無停電電源装置)、非常用発電設備、精密空調機などの大型・重量機器の搬入・据付が、施工工程の中でも特にリスクの高い作業となり、定期的なリプレイスが必要となります。
CM会社はこれらの重要機器について、以下の点を重点的に管理します。
上記によって設備の損傷や工程遅延、現場での事故リスクを最小限に抑えつつ、計画どおりの据付を実現します。
竣工・引き渡し段階では、CM会社から以下のような支援が受けられます。
竣工・引き渡し段階での一般的な支援内容 例
CM会社を選ぶ際は、以下の基準を元に判断することが重要です。
CM会社選びの基準
データセンター建設は「技術」「コスト」「スケジュール」のすべてにおいて、的確な判断と高度な調整が求められるプロジェクトです。
だからこそ、発注者の立場に立ち、長期的な視点で寄り添ってくれるパートナーとともに進めることが、成功への重要な鍵となります。
ただし、CM会社によっては、CS(コア&シェル)には対応できても、FO(フィットアウト)には対応できない場合があります。
プラスPMは「約30,000㎡規模のデータセンター建設プロジェクトを支援した実績」を持ち、CS(コア&シェル)工事だけでなく、FO(フィットアウト)工事の一部にも対応してきました。
建設プロジェクトの進め方や体制づくりでお悩みの際は、ぜひプラスPMへご相談ください。
当社コンサルタントによる初期ヒアリングは無料です。まずはお客様のご要望をおうかがいいたします。