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病院建設で「省エネとZEB」を考えるときに最初に読む記事

『省エネ』。それは病院建設における大きなキーワードの1つです。
環境問題の解決は世界の共通課題であり、そのことは建築物分野も例外ではありません。特に、大きなエネルギーが使用される病院では検討すべき事項です。また、昨今の高騰する光熱費から見ても、ランニングコスト削減に直結する省エネルギー化は、病院経営の重要なポイントと考えられます。
当社も、省エネに関するお問い合わせを公共、民間、問わず各病院様からいただいています。

そこで今回は、病院計画における省エネについて、省エネ指標の『ZEB』を中心に、その背景と取組みのポイントを説明いたします。

リード(樹木のイラストに聴診器をあてる医者).jpg

病院建築での省エネの現状

求められる環境意識

わが国では、2050年のカーボンニュートラル社会実現に向けて、2030年度の温室効果ガス排出量の2013年度比46%削減を目標として掲げています。
国内エネルギー消費量のうちの約30%は、建築物の利用によるものであると言われています。

2021年に閣議決定された地球温暖化対策計画では、
『2030年に目指すべき建築物の姿としては、(中略)、新築される建築物についてはZEB基準(※エネルギー起源CO2排出量を2013年度比51%削減。)の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す』
とされ、これからの新築建築物においては、省エネの実現が1つの命題となっていると言えます。

建築物における省エネ規定

国内における建物の定量的な環境評価としてBEI(Building Energy Index)があります。BEIは、以下の式から求められます。

新築・改修建築物のBEI = 設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量
※1設計一次エネルギー消費量:設計時の想定消費エネルギー量(設置する設備により異なる)
※2基準一次エネルギー消費量:室サイズ・室用用途ごとに設定された2013年基準の消費エネルギー量

新築・改修建築物のエネルギー消費量(設計一次エネルギー消費量)が基準建築物(基準一次エネルギー消費量)より少ないほどBEI値は小さくなり、省エネ性能の高い建物として評価されます。
この評価を基準として用いている法律に「省エネ適判」と呼ばれる「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下「建築物省エネ法」)があり、これは"規制措置"と"誘導措置"の2つから構成されています。

①規制措置

2017年の施行当初から現在までは、BEI≦1.0を満たすと建設許可がおりることになっています。しかしながら、2024年4月(施行予定)に「建築物省エネ法」が改正され、基準値が用途別に強化されることとなりました。今後の病院建設においては、BEI≦0.85(現行から15%の強化)が義務付けられます。
さらに、この基準は2030年に向けて段階的に上がっていくことが予想されています。

②誘導措置

近年、建物の環境評価として『ZEB(Net Zero Energy Building)』という言葉を耳にしたことある方も多いと思います。
いくら省エネに取組む必要があるからといって、日々使用している建物のエネルギー消費量を完全に"0"にすることは不可能です。そこで、省エネにより使用エネルギーを削減すると同時に、エネルギーを創ること(再生可能エネルギー等)によって使用分を賄い、エネルギー消費量を正味(Net)で"0"(BEI=0)にするという考え方がZEBです。
省エネへ向けた取組みを進めていくには、規制措置だけでなく、建築物の性能を評価・認証し、建物オーナーの社会的評価の向上を促すことが重要になります。そのために役立つZEBについて、次で詳しく解説いたします。

環境評価

ZEB評価について

ZEBは、以下の4段階で評価されます。

  • ZEB:➀再生可能エネルギー(以下、再エネ)除きBEI≦0.5、➁再エネ含めBEI≦0
  • Nearly ZEB:➀再エネ除きBEI≦0.5、➁再エネ含め0≦BEI≦0.25
  • ZEB Ready:再エネ除きBEI≦0.5
  • ZEB Oriented:①延べ面積10,000㎡以上、②再エネ除き(病院) BEI≦0.7、③未評価技術の導入

日本における建築物のエネルギー消費性能を対象とした環境認証制度として、第三者認証であるBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)があります。BELSでは、BEIの値によって5段階で評価され、性能が良いほど☆の数が増えます。ZEBの基準を満たしている場合、☆表示に加え、上記4段階のZEB表示をすることができます。
これまで、物流倉庫、オフィスビルなどではZEB化が進んでいました。

一方で、設備導入のハードルが高く、設備効果が相対的に小さくなりがちな、大規模、かつ24時間稼働でエネルギー使用量の大きい急性期病院においては、その実現が遅れている傾向にありました。しかし、近年、ZEB Orientedの制定や各設計事務所や施工会社のノウハウ蓄積により、急性期病院でもZEB化の事例が出てきています。また、地方自治体などの公的病院でも計画要件としてZEB実現を求める事例も増えています。

ZEB化のメリット

ZEB化のメリットは、以下の4つが挙げられます。

  1. 光熱費の削減
  2. 快適性・生産性の向上
  3. 不動産価値の向上
  4. 持続継続性の向上

ZEB化した急性期病院では、年間数千万円単位の光熱費削減効果を実現した事例も見られます。
もちろん、消費エネルギーを削減するために、施設利用者に我慢を強いる計画ではいけません。建物外皮の性能や設備性能が高いZEB化であれば、空間の快適性等を向上させることもできます。このような省エネと快適性等の両立がZEBの基本的な考え方になります。

最新の事例

さらに、ZEB化をご検討中の病院様にご参考にしていただけるように、ZEB化実現のポイントを簡単に説明いたします。

建築計画の妥当性検証

「建築物省エネ法」の評価対象となるのは、空気調和設備、換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機です。そのため、『ZEB実現には設備面で配慮をすれば良い』と考えられますが、そうではありません。
まずは建築プランが重要です。建築プランは設備能力低減に大きくつながっています。
たとえば、病室は法規上、必ず自然採光が必要な部屋になりますので、外壁側に面して配置されます。外壁面から受ける外部負荷は大きい(外壁側は外気温の影響を受けやすく、日射が入りやすい)ため、病室の配置、個室率、外壁性能等を検討することが重要です。それらの最適化により必要な空調能力が小さくなり、設計一次エネルギー消費量が減少することでBEIが向上します。

設備仕様の確認

次に、設備計画です。病院では、空気調和設備、照明設備、給湯設備の消費エネルギーが大きい傾向にあります。建築物内の環境を維持するために必要なエネルギー量を減らす技術(パッシブ技術)と効率的にエネルギーを利用するための技術(アクティブ技術)を活用することで、設備能力の低減を図ります。
これには、適正な機器能力の選定を行い、過剰に設計しないこと、高効率の機器や総合的に省エネ効果の高い設備システムを導入することが求められます。前述した通り、快適な設備システムとの両立が求められますので、設備計画をチェックしながらプロジェクトを進めていく必要があります。

建設費の上昇

一方で、留意点もあります。ZEB化にあたり、建設費が上昇することを認識しなくてはなりません。省エネには、設備機器の効率化や外壁性能の向上、未評価技術の導入が必要になります。国交省により、病院用途でのZEB Ready達成には建設費13%の上昇が必要という報告もされています。

上記から分かるように、ZEB化の実現には計画当初から検討を行うことが重要です。途中でZEB化を計画しようにも、プロジェクトが進み大きな変更ができない設計後半に省エネ計算したものの、結果が思わしくないが設計スケジュールが足りない、ZEB化により予算が超過してしまうなど、事業断念の可能性リスクもゼロではありません。
ただし、当社のようなCM会社を導入することによって、事業当初より事業の全体を把握することで、ZEB実現性の検証とコストコントロールが出来ます。

まとめ

ここまでで、病院計画における省エネについて、『ZEB』を中心にその背景と取組みのポイントを説明いたしました。
病院建設においては、その利用者への利便性や機能だけでなく、建物の性能についても社会的責任があります。病院におけるZEB実現は、夢ではなく、担当者の挑むべき課題になりつつあります。
病院施設の省エネ、ZEB化にご興味をお持ちの方は、ぜひプラスPMにご相談ください。


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