- トップアスリートのキャンプ誘致による地域振興と経済活性化
- 「スポーツランドみやざき」のブランド力の向上
- 質の高い施設環境での県内アスリートの育成
お客様の声公共施設
トップアスリートも満足する品質を実現。
スポーツランドみやざきの核となる
屋外型トレーニングセンター誕生秘話
アミノバイタル®トレーニングセンター宮崎
気候が温暖で、快晴日数は全国トップクラスの宮崎県は、行政が中心となって「スポーツランドみやざき」構想を進めています。その流れの中、2023年4月に竣工したのが、「アミノバイタル®トレーニングセンター宮崎」です。この施設は高品質なトレーニングを実現する屋外型トレーニングセンターであり、トップアスリートはもちろん、アマチュア・一般県民も利用することができます。
トレーニングセンター完成の裏側には、宮崎県担当者の奮闘がありました。建設期間は2022年から2023年にかけての約1年間、また、世界情勢の影響により物価上昇が著しいタイミングです。さらに、竣工予定のすぐ後には代表クラスの合宿が控えていたため、遅延は一切許されない状況でした。
このような中、宮崎県はどのように世界に誇る屋外型トレーニングセンターを生み出したのか、その誕生秘話に迫ります。お話は担当者の1人である宮崎県商工観光労働部 観光経済交流局 観光推進課 スポーツランド推進室の渡邊様に伺いました。
宮崎県がトレーニングセンターに求めた3つの役割
宮崎県 商工観光労働部
観光経済交流局 観光推進課 スポーツランド推進室
担当リーダー 渡邊 祥一郎
宮崎県といえば、名だたるプロアスリートのキャンプ地として有名です。温暖な気候と日本有数の快晴日数に魅力を感じて、プロ野球やJリーグのチームが毎年キャンプに訪れます。ラグビー日本代表も宮崎県で練習を重ねてきました。最近は、トライアスロンやゴルフの合宿地としても人気だそうです。
この恵まれた環境と、プロチームの合宿受け入れ実績やそこで得たノウハウを活かして、さらなる合宿の受け入れ誘致、それによる誘客、さらには観光振興に繋げていきたい。それが、宮崎県が掲げる「スポーツランドみやざき」構想です。この構想を具現化した施設の1つが、屋外型トレーニングセンター「アミノバイタル®トレーニングセンター宮崎」となります。
本センターは、次の3つを実現できる施設を目指し、2022年から建設をスタートしました。
建設の専門家でなくても、自信を持って意思決定できるように
プラスPM シニアコンサルタント
小川 直人
しかし、プロジェクトが具体的になればなるほど、宮崎県はある課題を突きつけられます。本プロジェクトは設計施工一括方式で進められていました。しかし、宮崎県ではこの方式での建設プロジェクト事例が少なかったのです。
「本プロジェクトを担当する商工観光労働部は、建築技師がいませんでした。そのため、建設会社から具体的な提案を受けても、建築の専門的な知識のもとで判断することができなかったのです。また、2023年4月までにはセンターをオープンして日本代表の合宿候補地として名乗りを上げたいという思いもあり、遅延が許されない状況でした」(渡邊様)
プラスPMコンサルタント
阿部 裕介
これらの課題を解決するため、宮崎県はプロジェクトの途中でコンストラクション・マネジメント会社を採用するプロポーザルを実施しました。
検討の結果、プラスPMが採択され、建築技師不在という宮崎県の課題を汲み取って、県が安心して意思決定できるようにサポートを開始します。一例を挙げると、建設会社から県に提案を行うときは1つだけではなく複数の案を出してもらい、それぞれのメリット・デメリットを明確にしてほしいと依頼しました。また、建設会社からの提案に対して、意思決定を行いやすくなるような追加資料を自社でも作成しながら、必要に応じて建設会社に要求します。要求する際にプラスPMは、「建築面で決めなくてはならないことと、その期日とコスト」「提案での変更点と運営への影響」を発注者へ明確に伝えることを意識しました。
「プラスPMは、提案に対して様々な補完をしてくれました。それによって、わたしたちは安心して意思決定をすることができました」(渡邊様)
「資料のなかで印象深かったものの1つに、芝へ与える水についての検討があります。アミノバイタル®トレーニングセンター宮崎のアピールポイントの1つが、競技別に最適な芝を配置している点です。例えば、サッカー・ラグビー場は最高品質の天然芝、多目的グラウンドは耐久性のあるハイブリッド芝を配置しています。天然芝の育成には大量の水が必要であるため、当初、これにかかる費用の軽減を目的として井戸を掘ることが検討されました。しかし、太平洋に隣接した立地であったため、井戸水に塩分が含まれていることが判明します。そこで、建設会社にイニシャルコスト減のメリットだけでなく、ランニングコスト増のデメリットも明示された資料として、向こう10年分の水道代を算出し、仮に井戸を掘った場合と水道を使った場合のイニシャルコスト・ランニングコストを算出してもらいました。この資料を根拠に、県は水道水を使うという決断を下しました」(プラスPM 阿部)
「実は、我々がプロジェクトの途中から参画したように、渡邊様もプロジェクトの途中から担当されました。このような建設プロジェクトに抜擢されて、全体像を把握するだけでも大変だったかと思います。我々は、渡邊様が自信を持って活動できるように、情報提供や意思決定のサポートを行いました」(プラスPM 小川)
物価上昇、スケジュール管理、あらゆる波を乗り越えて
ラグビー・サッカー場と多目的グラウンド
本プロジェクトが進行していたのは、2022年から2023年にかけての約1年間であり、コロナ禍や不安定な世界情勢の影響など、様々な要因で急激に物価が上昇しているタイミングです。プラスPMでは、プロジェクトに参画した当初から、建設途中での物価上昇による建設費用の高騰を懸念して、事前に準備できる対策を検討していました。そして2022年8月、いよいよ建設会社から物価上昇を理由とした値上げ交渉が来たのです。
「本プロジェクトは公共事業ですので、当然公金で賄われています。予算を上げることはなかなか県民の理解を得ることができません。しかし、現実に物価は上昇しているわけです。そのような状況の中、どのように対処すればよいのか検討し、方針を決定する必要がありました」(渡邊様)
そこで、宮崎県とプラスPMは締結済みの工事請負契約を改めて見直して、あらかじめ物価上昇への対応をどのように取り決めていたかを確認し、その上で適切な対応を検討しました。物価上昇に関しては、国が定めた算定ルールがあるので、それに則りながら建設会社の要望も踏まえつつ、方針を決定していきました。
物価上昇以外にも、本プロジェクトの難しいポイントの1つがスケジュール管理でした。管理すべきは建屋の進捗だけではありません。たとえば、当時は半導体不足が深刻で、スポーツ施設に必要な設備機器の納品に遅れが出る可能性があったため、納品の進捗を細かく管理しました。また、競技場には電力会社に申し込んでから実際に送電されるまでに期間を要する案件がありました。そこで、建設会社にお願いして、新しい施設に電力を引き込むための手続きを早めに開始してもらうなどにより対策しました。
難しいプロジェクトを限られた時間で完遂するには、関係各社の協力・連携が重要です。そこで、コロナ対策で当初はオンライン中心だった会議を、月に1回、県庁にて対面で実施することになりました。これにより、顔の見える、信頼し合える関係性を築くことで、県、建設会社、CM会社が一丸となってプロジェクトに臨む体制を構築しました。
プラスPMは病院のCM実績は業界トップクラスで、生産工場のCM経験も数多くあります。一方で、スポーツ施設に関しては実績が多いわけではありません。しかし、渡邊様はプロジェクトを進める中で不安を感じたことは一切なかったとおっしゃいます。
「CMが行うべき仕事はたくさんありますが、大切なのはコスト管理、品質管理、そしてスケジュール管理です。建物の用途は違ったとしても、この3つを管理する上でのアプローチは変わりません」(プラスPM 小川)
アミノバイタル®宮崎トレーニングセンターでは、東京2020オリンピックの木造施設建設に使用されたレガシー材を活用している
宮崎から世界に羽ばたく。ハイレベルなトレーニングセンターが完成
そういった紆余曲折を経て、アミノバイタル®トレーニングセンター宮崎は2023年4月に予定通りオープンしました。ここで改めて、この施設の魅力について渡邊様に伺いしました。
「動線を意識した構造になっていて、ロッカーを出たらすぐに屋外施設・屋内施設にアクセスできます。そのため、分刻みで質の高いトレーニングを行えます。先程、阿部さんがおっしゃったように芝にも自信があります。アスリートのみなさまには、ぜひスポーツキャンプに適したこのトレーニングセンターで練習を重ねて、世界に羽ばたいて行ってほしいです。もちろん、トップアスリートだけでなく、県民のみなさまにもご利用いただけます。これだけ高品質の芝のピッチで一般の方がトレーニングをする機会はなかなかないと思います。ぜひ、練習、スポーツイベントなどでの利用をご検討いただければと思います」(渡邊様)
すでにトップアスリートチームも利用を検討されているというアミノバイタル®トレーニングセンター宮崎。この施設を起点に、宮崎県はスポーツの聖地としてさらに発展していくことでしょう。
担当者から
「安心できる意思決定」のお手伝い
シニアコンサルタント
小川 直人
本プロジェクトは、宮崎県が掲げる「スポーツランドみやざき」構想にとって重要な位置づけでした。そのため、このプロジェクトに参画できたことを大変光栄に感じながら、業務に携わっておりました。
業務では、基本設計デザインビルドの特性を活かし、国内外のトップアスリートの誘致ができる高い品質を確保しながら、タイトなスケジュールで予定通りに進められました。この結果へ至れたのは、当社のマネジメント力だけではなく、宮崎県様のプロジェクト推進力と、それに応えられる設計・施工会社の技術力があったからこそであり、まさにチーム力が生んだ成果だったと思います。
今後、このトレーニングセンターが地域振興と経済活性化、アスリートの育成の一端を担い、県民に愛される施設となることを確信しております。
コンサルタント
阿部 裕介
本プロジェクトにアサインされたのは建物運用開始の丁度1年前でしたが、まだ解決しなくてはいけない課題が山積みの状態でした。限られた時間のなかでこれら課題を解決するために、月に一度の総合定例とWEBミーティングを活用し、各種議題をクリアしていきました。
少し変わったプロジェクトの思い出として、施工期間の終盤には宮崎県がWBCのキャンプ地となっていたため、出張のための飛行機確保が難しかったというエピソードがあります。今後、各種大会が開催される際には本プロジェクトの建物が利用されることを明確にイメージできた瞬間です。
近年稀に見る物価上昇に相まみえながらも予定通りプロジェクトを完遂できたのは、県ご担当者様方のご奮迅と設計・施工会社様の多大なるご協力の賜物です。この場を借りて厚くお礼申し上げます。
建築概要
工事名称 | 屋外型トレーニングセンター建設工事 |
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事業主 | 宮崎県 |
工事場所 | 宮崎市山崎町浜山 |
敷地面積 | 65,398.69m2 |
建築面積 | 3,450.79m2 |
構 造 | S造 |
階 数 | 2階 |
延べ面積 | 3,731.33m2 |
コンストラクション・ マネジメント | 株式会社プラスPM |
設計監理 | 吉原・和広・NTTファシリティーズ屋外型トレーニングセンター整備 事業特定建設工事共同企業体 |
施 工 | 吉原・和広・NTTファシリティーズ屋外型トレーニングセンター整備 事業特定建設工事共同企業体 |
工 期 | 2022年3月25日~2023年3月31日 |