お客様の声生産工場

未来を見据えた“変化に強い工場を目指して”の挑戦
―生産コンサルと共創した可変性×信頼×スピードのプロジェクト

株式会社トリケミカル研究所 南アルプス事業所株式会社トリケミカル研究所 南アルプス事業所

株式会社トリケミカル研究所
南アルプス事業所

トリケミカル研究所は、最先端の化学研究技術を駆使し、半導体製造に不可欠な「高純度産業ガス」を生産する企業です。本社は山梨県上野原市にあり、近年の半導体需要の高まりを受け、生産能力の増強が急務となっていました。
その中で始動したのが、南アルプス事業所の新設プロジェクトでした。しかし、同社には建設分野の専門技術者がおらず、複雑なプロジェクトを主導するノウハウが不足していました。

そこで、同社は生産コンサルタントとプラスPMの支援を受けながら、事業予算の立案から基本構想、VE提案型の設計施工者選定、建物が完成し引き渡しを行うまでの関係者間の調整へコンストラクション・マネジメント(CM)を導入しました。CM導入によって、コンカレント・エンジニアリングの採用や関係各社との連携を実施し、工程の最適化と可変性の高い建屋の実現を目指しました。

プロジェクトでは、途中で製造する産業ガスの種類が大きく変わるなどの変更点も生じましたが、チームで課題へ柔軟に対応できる体制を構築していたため、納期を守ったまま仕様変更を実現。無事、将来の拡張も視野に入れた高効率・高品質な施設を予定通り竣工に導きました。

本記事では、信頼構築のプロセスや、現場で起きた「変化」とそれに「対応する力」の実例を通じて、今後の工場建設を担う方々に向けたヒントを探ります。

用地選定から始まった挑戦

大杉 宏信 様

株式会社トリケミカル研究所
取締役執行役員 技術部門担当 大杉 宏信 様

新工場の構想は2015年頃から静かに始動していました。

元々同社は山梨県上野原市に工場を構えていましたが、半導体需要が高まる中、既存工場ではスペースに限界を感じて拡張を検討するも、その余地がありませんでした。そこで、将来を見据えて広い土地を探し始めたのが本プロジェクトのきっかけです。地元山梨県だけでなく、埼玉などの近県から九州まで複数の候補地を見て回る中で、事業継続計画(BCP)や交通アクセス、本社との距離感を考慮し、最終的に選ばれたのが山梨県南アルプス市でした。


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管理棟エントランスには南アルプス市より贈られた山梨県の郷土伝統工芸「甲州鬼瓦」が飾られている

「半導体の進化スピードは加速度的です。お客様であるデバイスメーカーの要求に応えるには、早い段階で用地を確保しておく必要がありました」と、取締役 執行役員の大杉様は語ります。

榎本 正幸 様

株式会社トリケミカル研究所
生産技術部 部長 榎本 正幸 様

しかし、トリケミカル研究所にとって、今回のような大規模工場建設は初めての経験でした。過去に上野原の工場建設を行った際は、社内だけで十分に対応できていたといいます。

ところが今回の新工場は、同社の既存工場をすべて合わせても建設費、敷地面積ともに上回る大規模なものでした。どの建設会社が良いのか、どれくらいの費用が妥当なのか、工期をどう管理するべきか。そうした基準を持ち合わせておらず、「自分たちでは判断できない」ことが課題となりました。


"CMって何?"から始まった協業

太田 帝 様

株式会社トリケミカル研究所
第三製造部 部長 太田 帝 様

当時、同社は新工場建設プロジェクトを進めるにあたり、生産コンサルタント企業の支援を受けていました。製造装置のレイアウトや動線、将来の拡張性に関することから、新工場に異動する社員のチームビルディングのことまで、生産性に関わる様々なアドバイスを受けることができたといいます。そこで、建設面に関しても不安があることを生産コンサルタントへ伝えたところ、CMの導入を勧められたそうです。当然、CMという言葉には馴染みがなく、最初は導入効果について懐疑的でした。とはいえ、建設に関する課題を解決してくれるならと何社かに話を聞く中で、プラスPMに出会いました。


福田 剛志

プラスPM
チーフコンサルタント 福田 剛志

「プラスPMの話を聞いて、みなさんが建築のプロフェッショナル集団だとすぐに分かりました。この人たちは建築のプロとして我々の立場で考えてくれるに違いない! と直感しました」(生産技術 部長 榎本様)

こうして2022年7月から、新工場建設プロジェクトにプラスPMが参画しました。

本プロジェクトは、敷地内に合計7棟の施設を建設する計画となっており、建屋ごとに異なる機能や仕様が求められるなど、設計・施工の調整に高い専門性が必要でした。


変更が相次いだプロジェクトをどう乗り切ったか

実際にプラスPMが担ったのは、新施設に対する要求水準書の作成、ゼネコン3社のプロポーザルの運営、VE(Value Engineering)提案の評価、価格やスケジュールの妥当性チェックなど、まさにプロジェクト全体の土台をつくる役割でした。

「ここまで大規模な工場となると、我々ではコンペ(プロポーザル)の要求仕様すら書けなかった。そこを一緒に組み立ててくれたことが本当にありがたかった」とトリケミカルチームは振り返ります。

このプロジェクトの特筆すべき点の一つに、途中で発生したいくつかの仕様変更をどう乗り越えたか、という点があります。

半導体工場で使用される素材は半導体の世代が変わるたびに変更になります。また、半導体の生産自体が国際情勢や国の政策方針の変更からも影響を受けます。こうした背景の中、建設開始後に、工場で製造予定だった製品が変更になることが決定しました。工場の構造そのものも見直しが必要となり、2階建から平屋へと再設計することになりました。

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これに対してプラスPMが最初に取った行動は、設計を担当していたゼネコンに対して生産開始スケジュールに遅延を発生させない為にいくつかの手法があるが、どれなら採用できるかを確認することでした。

浸水対策として工場入口に設置された止水版

浸水対策として工場入口に設置された止水版

「建設プロジェクトに変更は付き物です。大切なのは、ゴールを守ること。ゼネコンさんと相談して、どういうスケジュールを組めば目指す工場を納期の中で実現できるかを話し合いました」(プラスPM福田)

幸い変更が起きたのが本格的な建設前だったので、スケジュールには大きな影響が出ないということが確認でき、納期を守ったまま仕様変更を実現しました。
また、新工場は釜無川のすぐ近くのため、浸水対策をどの程度施すかという点においても様々な調整を行いました。結果として、敷地の一番低い場所を起点に1.5mの増水まで対応できる様にしようと判断し、床のかさ上げや、防水扉や止水板を設置するなどの対策を施しました。BCPの観点で、環境変化にも強い工場建設が進められていきました。

トリケミカルチームからは「様々な変更点が発生する中、CMがいなかったらどこかで妥協していたかもしれない」という声もありました。


地産地消と環境配慮を象徴する木造管理棟

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この工場のシンボルともいえるのが、地域の木材を使って建てられた"木造の管理棟"です。これは、創業者でもある会長の強い意向によるもので、「せっかく南アルプスに建てるのだから、地元の素材を使い、地域に愛される建物にしたい」との想いから生まれたアイデアでした。

当初はすべて鉄骨構造で計画されていましたが、途中から木造への変更が指示され、プラスPMとゼネコンが連携して山梨県産材の確保に奔走しました。

「南アルプスは山が多いものの、実は建材用の木材は限られている地域です。それでも"なるべく山梨県産、なるべく日本産"というご要望に応えるために、ゼネコンさんのネットワークを駆使していただき調達しました」(プラスPM福田)

こうして完成した管理棟は、地域の方にとっても「あの木造の大きな建物」とランドマークになっている他、「富士山が見える工場」「地元に根ざした工場」として、従業員や視察に訪れた投資家からも好意的な声が多く寄せられているそうです。

未来を見据えた可変性の高い設計

新工場は、同社にとって初となる"連続生産ライン専用工場"です。「製品や生産ラインは需要に応じ変化するが、一般的に建屋は簡単には変えられない。だからこそ、柔軟に対応できる建屋でなければならなかった」と製造部 部長の太田様は語ります。

そのため、将来の増築を繰り返さないためにライン追加にも対応できるよう、梁や基礎には拡張可能な構造を採用し、必要な空間はあらかじめ確保しました。設計段階から将来を見据えた発想が、長期的な設備投資の有効性を高めています。
また、太田様は「完成後、"ここで働きたい"という声が社員からも聞こえてきたのが嬉しかったです」と語っていました。

生産性や安全性だけでなく、社員のモチベーションを高める場としても、南アルプス事業所は大きな意味を持っています。

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新工場では2025年8月より試作を開始しており、2026年の本格的な生産開始を目指して生産ラインの調整が進められています。

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"施主の味方"として寄り添い続けたCMの存在

プロジェクトを通じて、プラスPMは"施主の味方"として徹底した姿勢を貫きました。
「天気、風向き、日照、災害リスクなど、自分たちでは考えもしなかった視点をたくさん与えてくれました。新たな検討事項が発生するたびに、率先して複数の解決策を提示してくれたのも印象深かったです。比較資料も分かりやすく、納得感がありました」と榎本様は振り返ります。
また、「担当の福田さんを筆頭に、誰が出てきてもサービスの質が変わらないのが印象的。さすが、チームで動くことをモットーにしている会社だと思った」というコメントも頂きました。

最後に、改めてCMを導入するメリットについて振り返っていただいたところ、「入札を伴う場合はもちろん、入札を伴わない建設工事であっても、建設費用の妥当性やスケジュール管理などについて、適切な助言が得られます。
また、コンサルフィーに見合う以上のコストダウンに繋がる提案が得られるはずです」という力強いコメントを頂きました。

ますます需要が高まる半導体。
日本一の富士山を望む南アルプスの地から、未来の産業を支える最高品質の製品が出荷され、世界へと届けられていく――。
この新たな一歩が、次の時代を切り拓いていくことを願っています。

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担当者から

「変化に挑む工場づくり」を支えるお手伝い

プラスPM
チーフコンサルタント

福田 剛志

生産施設の建設プロジェクトはその取扱品によって千差万別です。食品工場では衛生管理面、少量多品種の金物工場なら可変性、など注意するポイントも多様です。その重要度や優先度も異なりますから、その都度、最新の規制やノウハウを確認しながらプロジェクトを支援しています。毒性高圧ガスや危険物を製造される本プロジェクトでも久しぶりに化学反応式に触れ、新鮮な学びの姿勢で参画し始めたことを思い返します。
私共は化学のプロではありませんので、トリケミカル研究所様のノウハウを細部まで完璧に理解することは叶いません。しかし、建設プロジェクトにかけるお客様の願いや考えは建設の専門家として全て受け止めて理解し、基本構想書や発注資料に落とし込んだり、設計施工者へ向けて代弁したりしました。そうしたお客様のいちばんの理解者であろうとする姿に、ときに私共より詳しく高い設計や建設の技術を持つ設計施工者も共感してくれました。その共感が、相次ぐ変更の節目でも、関係者一同を同じ目標に集中させてくれたのだと思います。
製品の本格出荷はまだ先ですが、本プロジェクトを通して日本はもとより世界の半導体産業や人々の生活に役立てることを嬉しく、そして楽しみに感じています。

建築概要

工事名称株式会社トリケミカル研究所 南アルプス事業所建設事業
事業主株式会社トリケミカル研究所
工事場所山梨県南アルプス市
敷地面積約29,699m2
建築面積約5,422m2(全体)
延べ面積約5,537m2(全体)
コンストラクション・マネジメント株式会社プラスPM
設計監理株式会社フジタ
施  工株式会社フジタ
工  期2024年4月~2025年3月

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