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病院建設

病院建設・再整備計画に活用できる補助金の話

※2022.9.9改訂(2019.5.8公開)

病院経営を取り巻く環境は依然厳しく、建設費の高騰が続いていますが、事業を継続するために必要な工事は行わなければなりません。 そのような時は、建設に関わる補助金を検討してみてはいかがでしょうか。
特に民間病院では、健全経営を実現するための建設投資を考える上で、補助金の有効活用は欠かせません。

そもそも建設に関わる補助金にはどのような種類があるのか、取得の条件は何か、取得までの期間はどのくらいか、まず初めに何を検討すれば良いのかなど、様々なことが分からないという法人様は多くいらっしゃいます。

今回は建設に関わる補助金の動向をおさえた上で、補助金活用事例をご紹介しながら、戦略的に補助金を活用する手法についてご説明します。

病院の建て替え、再整備計画に補助金の活用を検討している、申請までの手続きに不安がある、そのような場合には是非、プラスPMへご相談ください

補助金の近年の動向

採用補助金事例

表1は、当社が支援を行っている民間病院のプロジェクトで給付された補助金名、建設工事費に占める補助金の割合を表しています。

補助金と言っても、各都道府県により補助金の種類、交付条件、金額に若干の違いがあるため、どれを申請すれば良いか迷うこともあるでしょう。そのような時は、金額の大きい以下の3つの補助金が利用可能か検討してみてはいかがでしょうか。

病院名地域給付された主な補助金の種類建設費に占める補助金の割合
A病院 関東 医療施設耐震基本計画等作成支援事業
医療施設近代化施設整備事業
13.4%
B病院 関西 医療施設近代化施設整備事業
耐震対策緊急促進事業
9.3%
C病院 関東 医療施設耐震化等補助事業
夜間救急補助金
9.0%
D病院 九州 地域医療介護総合確保施設設備整備事業
第二次救急医療機関移転・建替支援
6.2%
E病院 関東 医療施設耐震化等補助事業 4.4%
F病院 関東 病床機能転換促進事業費補助金 4.2%

表1 近年の民間病院の補助金活用事例

①医療施設等耐震整備事業 ―古い既存病院の建替、改修の際はまず検討―

約40年以上前に建設された建物は、現行の耐震基準を満たしていない可能性があります。このような古い耐震基準の建物の改修、建替のための補助金です。既存病院の耐震性能が不明な場合、その調査を行う時にも補助金が出るケースがあります。
昨今、耐震基準を満たさない病院が少なくなりその役目を終えつつありますが、医療機能や病床数への制限が少ないため、終了期限が来る前にぜひ活用したい補助金です。

具体的な事例として、救急機能の強化と将来の増床による病院規模の拡大を目指していたC病院様では、病院の規模縮小や機能変換が適さないと判断し、耐震化事業での補助金取得を目指し計画を進めました。診断の結果、複数ある建物の中に耐震基準を満たさない建物があり、補助金の対象となりました。

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このように、一部の建物が耐震性能を満たさない場合でも申請ができることもあります。さらに補助金の承認がおりたことにより、低金利での借り入れが可能なWAM(独立行政法人福祉医療機構)からの融資枠の拡大も可能となりました。

②医療施設近代化施設整備事業 ―病院建設を期にスリム化を考えるなら―

病院における患者の療養環境、医療従事者の職場環境、衛生環境改善などへ使える補助金です。
ただし、一部の病床が足りない地域を除き病床数を10%程度削減する必要がある他、病院機能の制限もあるため、建替後の病院経営方針に合致しているか確認する必要のある補助金です。
申請可能となれば大きな金額を申請でき、且つ他の補助金と併用しやすい補助金となっています。

当社の支援事例では、強みを持つ科目の機能拡充を希望されていたA病院様において活用しました。
A病院様では稼働が少ない病床の整理を行い、補助金によって診療・外来部門を整備、地域との交流スペースを設置することで、効率的な病院運用につなげました。

地域医療介護総合確保施設設備整備事業 ―病棟機能の見直しで機能強化―

地域における医療および介護の総合的な確保を推進するための基金として、病棟機能転換や、地域の連携促進のための施設整備に使われています。
一般急性期病棟から地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟への機能転換に対して申請するケースが多く、建替えを期に病棟機能を変更する際にはぜひ活用を検討したい補助金です。

病床に加え、必要諸室の整備や設備についても申請ができるため、将来の病院像を初期に決めることが補助金取得の鍵になります。
近年は地域医療構想に合致する事業への補助として、病棟機能転換以外の事業でも補助をするケースが見られます。各行政での取り組みを確認してみてはいかがでしょうか。

当社が支援したD病院様では、補助金額を①の耐震化補助金と比較し、病棟機能変換を行う当補助金を採用しました。一般急性期病棟を回復期リハビリテーション病棟に機能転換する際に、機能訓練室や機器設備の整備も補助対象となり、耐震化補助金よりも金額が大きくなったためです。
対象部分が重複する場合は、複数の補助金の金額比較を行うことも重要です。

上記①~③は金額も大きく魅力的ですが、いずれも建設事業の進め方に制限があり注意が必要です。

補助金の落とし穴

内示日程による制限

補助金の種類によっては、建設スケジュールに大きく影響が出る可能性があります。
特に医療施設の建築で多く申請される医療施設等設備整備費は、国からの内示時期である夏以降にならないと施工者選定の入札をすることができません。
開院目標や借入開始時期が明確な事業では、注意が必要です。

他の申請スケジュールとの調整

福祉施設や保育施設を施設内に設ける複合施設の場合は、各施設の開設、補助金取得に向けた申請スケジュールをまとめたマスタースケジュールの作成をお勧めします。
高齢者施設は、行政で工事の進捗度合を定めている場合も多く、医療補助金の内示が出た後に施工者選定を行うと必要な進捗に達しないことがあります。
そのため事前に行政へ相談し、進捗条件緩和の調整を行ったケースもあります。

借地による事業をお考えの法人様は、賃貸料発生時期の確認も必要です。工事がまだ始められないのに賃貸料は払っている事態にならないよう注意しましょう。

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着工時期や工事中の制限

補助金によっては、内示年度内に着工をすることが条件になっているものもあります。そのため、入札後から契約までにかかる期間、契約後に着工できるまでの期間を見込んでスケジュールを調整する必要があります。
さらに厳しいものですと、工事の年度内出来高(工事の進捗具合をパーセントで示した数値)を指定しているものもあります。工事の進捗予想も踏まえて、各種スケジュールを決定しましょう。

発注方式の制限

建築工事の発注には様々な方式があり、プロジェクトの性質に合った発注方式を選択することが重要です。

従来は、設計は設計事務所が行い、施工は建設会社が行う、設計施工分離発注方式が多く採用されていました。しかし、「スケジュール通りに完成させたい」「施工者のノウハウを設計段階から取り入れ、建設費を抑えたい」など様々な理由から、設計・施工を一括で発注するなど、従来とは異なる発注方式でプロジェクトを進めるケースもあります。
補助金を採用する際は、複数の発注方式を選択できるか確認すると良いでしょう。

上述の設計・施工一括発注方式は自治体によっては過去に前例がないこともありますが、公平性が確保されている入札の仕組みであることや、他の行政での実例を自治体担当者様に説明し、補助金を獲得した案件も増えています。

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発注方式毎に異なる採用のメリット、ポイントを解説する記事を公開しています

補助金の申請をしないことも戦略

制限のある補助金を取得しない選択もあります

補助金は大雑把に言うと、国の医療政策に合わせた病院の施設整備を後押しすることが目的となります。
そのため、政策に合致した病院を作る際には大きな補助金額を申請できるかもしれませんが、独自の強みを持った病院となると対象となる補助金が少ない、もしくは無いということもあります。

制限のある補助金を無理に申請しようとすると、補助金によりスケジュールや発注戦略に制約がかかり、建設プロジェクト全体に大きな影響が出ることもあります。

例えば、

  • 明確な開院目標があるにも関わらず、半年間入札が行えず完成時期が遅れる
  • コスト削減が可能な発注方式を選択できず、補助金の額以上に工事費が高くついた
  • 補助金取得のために使用頻度の高くない部屋を作り、余計な建設コストがかかった

などです。

プロジェクトを円滑に進捗させるためには、計画と補助金のバランスを取ることも大切です。

補助金を取得しない場合のメリット

補助金を申請しないメリットとしては以下があります。

  • 市況に合わせ、発注時期や発注戦略を柔軟に変更できる
  • 特定建設会社の指名採用ができる
  • 予算に合わせて、工事範囲の一部をリース契約とするなど、計画変更ができる

案件によっては、発注戦略により補助金を取得する場合以上のメリットが見込める可能性があります。特定の建設会社が所有する特許工法や施工ノウハウを設計に取り込み、工期短縮や部材の削減を行い工事費の削減もできます。

また、補助金申請時期に合わせて無理に設計期間を設定すると、結果として時間が足りなくなり、懸念の残った計画で建設会社の入札をしなければならない可能性もあります。

戦略を立てるためにも事業の初期で方針決定を

補助金を獲得するためには、設計が始まる1年程前から補助金の調査を始めることをお勧めします。
計画が具体的でないため相談しづらいと感じるかもしれませんが、ぜひ早めに自治体の窓口を訪ねてください。何を聞いたら良いか困ったら、以下を聞いてください。

  • 施設整備に活用できる補助金はありますか?
  • 国庫補助金以外に、市区町村や民間主導の補助金はありますか?
  • 今後新しくできそうな補助金はありますか?

きっと丁寧にご対応いただけると思います。

さらに自治体によっては、病院を整備するための補助事業を新たに設けていただけるかもしれません。「駅前活性化への貢献」「地域に資する建物」として予算を作っていただけた自治体の事例もあります。

補助金の活用で最適な整備計画を

病院建設プロジェクトは、地域医療ニーズや病院の現状、将来目指すべき医療機能など様々な要因によりスタートします。そのためプロジェクト初期は考えることが膨大となりますが、初期に補助金を検討することは以下のメリットがあります。

  • 行政との協議を行うことで、施設整備の方針作りがより明確になる
  • 医療ニーズと自院のポジションを客観的に考えるきっかけになる
  • 補助金申請、内示時期のスケジュールをもとに、事業スケジュールを考えることができる

申請に必要な図面や提出物の提出時期は、設計期間や施工期間のスケジュールを考える基準になることもあります。申請する補助金によっては医療機能の方針だけでなく、要求される諸室名や広さの記載を求められるものもあり、目的、ボリューム、どういった施設にするかを考えるきっかけにもなるかもしれません。

厳しさが増す病院建設市況においては、しっかりとした方針をもってプロジェクトを進めることが成功の鍵です。その方針を立てるため、まず補助金を調べてみてはいかがでしょうか。大きな補助金額の申請が難しい案件では、少額でも申請時期や内示時期による制限のない補助金を積み上げ、申請を行うこともできます。
建設費を抑えるための発注戦略、工事予算確保の一助となる補助金の両輪で事業費を検討することは、法人様の目指す施設建設を進める上で有効です。

プラスPMでは、数多くの病院建設プロジェクトを支援しており、事業の性質に合わせた最適な補助金のご提案を行っています。
建替え後の病院収支の最適化のため、補助金を最大限活用した事業をお考えの皆様、ぜひ一度プラスPMにご相談ください

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