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設計施工一括発注方式(DB方式)で契約後のトラブルを防止するためのポイント

※2020.3.17改訂(2017.9.4公開)

国土交通省が「地方公共団体における多様な入札契約方式の導入・活用」を促進していることもあり、最近では、公共工事においても設計施工一括発注方式(デザインビルド方式-DB方式)を採用している案件が増えています。
今回は、この設計施工一括発注方式における留意点を解説致します。

設計施工一括発注方式(DB方式)とは何か

タイプは大きく分けて2つ

設計施工一括発注方式(以下DB方式)には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 基本設計は設計事務所が行い、実施設計+施工を施工会社が行う形式
    (ここでは、仮に『実施設計DB方式』と呼ぶこととします)
  • 基本設計から施工までを一貫して施工会社が行う形式
    (ここでは、仮に『基本設計DB方式』と呼ぶこととします)

この2つのタイプを比較した場合のメリット、デメリットをご紹介します。

実施設計DB方式の特徴

まず、実施設計DB方式の特徴を説明します。

メリット:コスト変動リスクが小さい

基本設計で仕様をある程度固めた状態で発注を行うため、発注者の要求事項をより多く取り入れた条件で発注することが可能です。
そのため、工事費確定後、設計施工者(ゼネコン)が設計業務を開始してからの変更の可能性が低くなり、結果、設計変更によるコスト変動のリスクが小さくなります。

デメリット:事業期間が長くなる傾向にある/技術提供を受けられる余地が少ない

  • 実施設計DB方式では、基本設計を実施する設計者を選定し、その後、実施設計と施工を行う設計施工者を再度選定する必要があります。よって、基本設計DBよりも、一般的には事業期間が長くなる傾向にあります。
  • 基本設計者によって、ある程度計画の骨格や仕様を決めてからの発注となるため、計画についての提案を求めて発注する場合には、設計施工者から技術提供を受ける余地が少なくなります。

※基本設計の内容については変更しないという条件で発注した場合を想定しています

基本設計DB方式の特徴

では、基本設計DB方式を採用した場合のメリット、デメリットはどうでしょうか。

メリット:事業期間が短くなる傾向にある/多くの技術提供を受けられる

設計・施工分離発注方式、実施設計DB方式に比べ、選定を行う回数が設計施工者(ゼネコン)選定時の1回で済むため、事業期間の短縮ができる傾向にあります。
それに加え、設計プランが固まらない段階での発注となるため、設計施工者から計画における提案を求める場合、多くのノウハウ、技術提供を受けることが可能です。

デメリット:コスト変動リスクが大きい

仕様が固まらない状態での発注となりますので、工事費確定後、設計を進める中で発注者側の要望を取り入れながら進めることになります。
提案された計画を変更しながら設計を進める必要があるため、計画変更によるコスト変動リスクが高まります。

見積条件を設定しよう

DB方式を実施するうえで、基本設計DB方式及び、実施設計DB方式に共通して留意すべき点は、見積条件をしっかりと設定してから発注を行うことです。
見積条件をしっかりと設定する方法として、以下のような書類を作成してから発注を行うことをお勧めします。

要求水準書(業務仕様編)

要求水準書(業務仕様編)とは、設計施工者に業務中にどのようなことを実施してもらうかを明確に記載した書類です。

例えば

  • 設計及び施工の対象物
  • 業務期間
  • 適用基準や法令
  • 設計中に実施してもらいたい調査業務の内容
  • 基本設計完了後、実施設計完了後、竣工時に提出する成果物一覧
  • 工事における留意点

...など、設計施工業務を行う上で、設計施工者に依頼したいことを明確に記載する必要があります。

この水準を記載しないと、発注者が要望する業務を実施してもらえないこともありますし、場合によっては追加費用が発生する場合がありますので、しっかりと記載することをお勧めします。また、発注者側の要求事項は当然プロジェクトごとに異なるので、その都度新たに設定をしていく必要があります。

組織内で計画の承認や合意形成をする時期が決まっており、その合意形成に計画図(基本設計図書)が必要な場合は、基本設計図書の納入時期を要求水準書に明記するべきです。
また、工事中の期間の制限、工事時間の制限、周辺道路などの利用制限がある場合には、あらかじめ明記しておくことをお勧めします。

しっかりと条件を提示し発注することで、契約後の設計施工者トとのトラブルリスクを低減することができます。

事例

例えば、下記のように記載しておけば、発注者が要望する時期に、必要な成果物を受領することが出来ます。

〇基本設計図書の納品時期
『発注者は、●月の理事会において、本計画の説明を予定しており、その説明において、基本設計図書及び工事費概算書が必要になる。設計施工者は、本要求水準書の基本設計図書成果物一覧表に記載の提出物を●月末までに発注者に提出し承認を得ること。提出方法及び検査方法については、P●に記載の通りとする。』

要求水準書(施設性能編)

要求水準書(施設性能編)とは、発注する施設がどのような性能を担保する必要があるか、最低基準を明確に記した書類です。特に、『基本設計DB方式』で発注する場合は、基本設計図書がないため、この要求水準書が非常に重要になります。
この要求水準を設定しないと、建物が設計施工者のお任せ仕様となってしまいます。

施設性能をまとめるにあたっては、発注者側が思い描く建物になるよう、性能を保証してもらいたい内容を整理して確実に提示することをお勧めします。

施設性能の要求水準策定の重要なポイント
仕様を固めすぎると設計施工分離発注と変わらなくなってしまい、設計施工者ノウハウの享受幅が減少してしまいます。逆に、あいまいに発注すると、発注者が意図する建物にならなくなってしまうので、要求水準の固め方(バランス)が重要です。

性能条件として記載する内容は、
例えば

  • 必要な規模、面積、諸室等
  • 構造における条件
  • 空調方式などの設備要件
  • 災害時に施設を稼働させる条件(ライフライン確保日数等)

などを明確に記載する必要があります。

事例
施設計画において、必ず作ってもらいたい諸室があり、その諸室の面積が●●以上あれば、補助金がもらえるなどの条件が分かっているならば、『●●諸室●●㎡以上を計画』という風に要求水準を提示しましょう。

また、災害時の対応として、BCP(事業継続計画)に配慮した施設が求められることが多くあります。
災害時の機能維持条件を提示する場合、例えば以下のような記載をします。記載の他、プロジェクトの特性に合わせて、要求水準を付け加えることもお勧めしています。

〇災害時における機能維持確保
『 ライフライン(電力、上水、下水、医療ガス等)遮断時は、復旧までの相当期間(3日以上)の機能維持を確保すること。』

まとめ

今回はDB方式を採用する場合の2つのパターン『基本設計DB方式』と『実施設計DB方式』をご紹介しました。

どちらにもメリット、デメリット、特徴があります。その特性を把握し、プロジェクトに最適な発注方式を採用することが、事業計画を円滑に進めるうえで、非常に重要です。
また、どちらの発注方式を選択しても、見積条件(要求水準書)が非常に重要となりますので、発注者側は要求事項を明確に整理し、設計施工者に依頼したいことを確実にまとめ上げた見積条件(要求水準書)を作成して発注することをお勧めします。


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