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なぜ介護療養病床の転換は進まないのか?介護医療院へ転換することの課題とメリットを考える

2018年4月に創設された「介護医療院」は長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とした施設です。介護医療院は日常的な医学管理の機能と居住施設としての機能を兼ね備えており、介護療養病床が廃止となった今、その需要が高まっています。

しかし、2019年7月現在も介護療養病床から介護医療院への転換は順調に進んでいるとはいいがたい状況となっています。

その理由は何なのでしょうか。

今回は、今注目されている「介護医療院」への転換・整備がなぜ進まないのか、そして介護医療院へ転換する事の課題とメリットをお伝えいたします。

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上記の図は慢性期の医療・介護ニーズへ対応するためのサービス提供類型をわかりやすく簡易にイメージ化したものです。
出典:厚生労働省
引用:介護医療院について「介護医療院の概要

介護医療院ができた背景

従来、「介護保険」の適用となる介護療養病床は、長期的な介護療養が必要な患者、「医療保険」の適用となる医療療養病床は、長期的な医療療養、管理が必要な患者と明確な区分で分けられていました。しかし、2006年の診療報酬・介護報酬の同時改定の際に厚生労働省で調査を行ったところ、2つの療養病床に入院する患者に明確な区分がなされていないことが判明し、また、医療区分の患者の一部には介護保険が使用されているなどの問題発覚や、これに端を発した医療費適正化の議論もあり、患者の状態に応じた病床の再編を行うこととなりました。

この結果、医療費削減などを考慮し、最終的に介護療養病床の廃止と介護老人保健施設などへの転換促進が決定したのです。

しかし、もともと介護療養病床への入院患者の多くは、がん末期で食事ができない、点滴が必要、肝硬変の末期で黄疸が出ている、喀痰吸引1日7回以下といった常時医療が必要な医療区分2、3の重度の方が多いのが現状です。在宅復帰を目指し、リハビリや医学的管理に重点を置く老人保健施設だけでは受け入れ切ることができません。

介護療養病床が廃止されてしまっては、急性期病院にも入院できず医療療養病床にも入院できない患者はどこへ行けばいいのでしょうか。

そこで、2018年3月の介護報酬改定が行われた際に、新たに誕生したのが介護保険法の本則に定められた施設「介護医療院」です。

介護医療院の特徴

2018年3月介護報酬改定が行われ、新しく「介護医療院」が誕生しました。

これまでの形態との決定的な違いは、介護医療院は施設ですが、介護療養病床は病院です。
つまり、介護療養病床から介護医療院への転換とは、「病院」から「施設」への転換となります。

介護医療院は2種類に分類される

■介護医療院Ⅰ型
設置根拠は介護保険法、従来の介護療養病床に相当します。主に要介護高齢者(在宅ケアが困難な重篤な身体疾患を罹患されている患者や、身体的な合併症のある認知症に罹患した患者)を利用者像として想定しています。
また、施設基準は現行の介護療養病床相当としており、医師48対1、看護6対1、介護6対1を最低基準としています。

■介護医療院Ⅱ型
こちらも設置根拠は介護保険法、従来の介護老人保健施設に相当します。利用者像は、Ⅰ型と同じく要介護高齢者を想定はしていますが、比較的容体の安定した利用者の受け入れを考えた施設となっています。施設基準は現行の介護老人保健施設以上となっており、医師100対1、看護・介護3対1(※うち看護2/7程度)となっています。

また、変則的な形態で言えば「医療外付け型」というものも考えられます

■医療外付け型
医療外付け型とは、居住スペースと医療機関の併設を行った形を指し、医療機関部は医療法が、居住スペース部は介護保険法・老人福祉法が適用されます。利用者像は医療の必要性は多様であり、容体の比較的安定した方を想定、そのため施設基準に医師や看護師の配置に関する規定はありません。また、生活空間をより重要視し、一人当たりの面積は現行の有料老人ホームの基準に相当する13.0㎡/室以上としています。
但し、これは個室を新設する場合であり、現行の建物を転用する場合、個室であれば面積の基準はありません。

生活施設としての介護医療院

ここで重要なことは、介護医療院は「病院」ではなく、要介護者のための「長期療養施設」であり「生活施設」でもあるということです。

現行の介護療養病床の床面積基準が6.4㎡/床であるのに対し、介護医療院ではⅠ型、Ⅱ型共に介護老人保健施設相当の8.0㎡/床が基準となっており、多床室であってもカーテンではなく家具やパーテーションによる間仕切りを設置するなど、プライバシーに配慮した療養環境の整備が検討され、個人の空間に配慮がされるようになっています。

また、施設基準は介護保険上の介護保険施設ではありますが、医療法上は医療提供施設としても法的に位置づけられており、これによってターミナルケアの実施や、経管栄養になった場合でも看取りまで対応が可能となります。医師が常駐なので医療対応の幅が広く、安心して生活することのできる施設だと言えます。

なぜ介護医療院の整備は進まないのか?

当初、介護療養病床は2006年の診療報酬・介護報酬の同時改定の際に廃止が決定し、廃止・転換期間を5年先の2011年度末と定めていました。しかし、2011年の介護保険法改正の際に、介護療養病床の介護老人保健施設などへの転換が進んでいない状況などを鑑み、廃止・転換の期限を更に2017年度末までの6年間延長することを決定しました。

では、なぜ介護医療院への転換、介護老人保健施設の整備は進まないのでしょうか。
実際に当社がご支援させていただいている病院の院長、理事長から聞こえる声を大きく分類すると次の2つでした。

  1. 転換・整備を進めたい気持ちはあるが、資金面や「病院」から「施設」への転換に伴う減床に躊躇いを感じてしまう。

  2. 施設整備の基準や補助金など、状況が変わり続けているので、現段階では院内での意見収集に留まっている。(様子見をしている)

    もともとは介護療養病床という要介護、長期療養を目的とした患者のための病床を転換、再整備しようというものです。

整備は進んでいないが期限が来たので「はい!廃止!」という訳には行きません。それでは現在入院中の患者の受け皿が無くなってしまいます。

また、1.でも書いている、結果的に「病床の減床」になってしまうという点については、現在の基準病床数制度に起因する、一度床数を減らしてしまうと新たに新設・増床することが困難という状況が大きな引っ掛かりとなっていると考えられます。

いずれにせよ、「病院」から「施設」への転換は、病院の経営層とって、大きな決断を強いるものになると考察できます。

介護医療院に転換するメリット

2018年度の介護報酬改定で単位数が設定されて以降、全国各地で徐々にではありますが開設が進んでいます。

2019.6.30.jpg出典:厚生労働省 
引用:介護医療院の開設状況等(令和元年6月末日時点)

転換の経営上のメリットとしては、病院から(現在入院している介護療養病床から)介護医療院へ移ることを「在宅復帰」とみなされることです。
これは、地域の医療・福祉への貢献と同時に、地域医療構想の目指すところであるターミナル期患者が安心して過ごせる施設の確保、在宅復帰率の向上へと繋がっています。

まとめ

介護医療院は、医療機能、介護機能、生活施設を備えた新しい介護保険施設です。
介護療養病床に現在入院中の患者の受け皿という意味だけでなく、地域医療・福祉への貢献、地域医療構想の実現を考えた時、今後どのような方針で医療機能、病床を変化させていくのか、地域医療・福祉を担う中でどのようなポジショニングを取っていくのか、今がまさにターニングポイントなのではないでしょうか。

介護医療院への転換に伴う計画に不安を感じたら、或いは診療機能の変更を目指し病院を再整備しようとご検討の際には、是非一度プラスPMへご相談ください。

参考資料 出典:厚生労働省
介護医療院 概要
(参考)地域医療介護総合確保基金について
介護医療院の開設状況等(令和元年6月末日時点)


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