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庁舎建て替えなど公共事業におけるコンストラクション・マネジメント(CM方式)の採用事例とメリット

公共事業にコンストラクション・マネジメント(CM方式)を活用する事例が年々増えてきています。
今回は、CM方式の採用が進む背景と、公共事業にCM方式を採用するメリット、そして、如何にすれば「採用前例のない」状態で予算確保の役所内コンセンサスを得ることができるのか、採用までのプロセスを解説します。

公共工事にCM方式の採用が進む背景

公共工事に求められるものは主に以下の3点といわれています。

  1. 適正な予算執行及び事業の公平性・透明性の確保
  2. 長期的な視点に立った計画能力や、市民、議会、所管行政庁の合意形成能力
  3. 企画・設計・工事・維持管理・運営のすべての段階を俯瞰的に統括管理し、価値のある社会資本の整備

しかしながら、地方公共団体は長年の公共事業の減少に伴い、技術職員が不足し発注者体制が十分に確保できなくなることが懸念されています。

平成17年3月に公布された、公共工事の品質確保の促進に関する法律 第15条(発注関係事務を適切に実施することができる者の活用)の中では、次のように規定されています。

第十五条 発注者は、その発注に係る公共工事が専門的な知識又は技術を必要とすることその他の理由により自ら発注関係事務を適切に実施することが困難であると認めるときは、国、地方公共団体その他法令又は契約により発注関係事務の全部又は一部を行うことができる者の能力を活用するよう努めなければならない。この場合において、発注者は、発注関係事務を適正に行うことができる知識及び経験を有する職員が置かれていること、法令の遵守及び秘密の保持を確保できる体制が整備されていることその他発注関係事務を公正に行うことができる条件を備えた者を選定するものとする。
国土交通省|公共工事の品質確保の促進に関する法律 より抜粋

このような背景のもと、発注者側の技術者や発注経験者が不足している自治体にとって発注者支援を受ける仕組みは公共工事の品質を確保するための、事業目的を達成させるための重要な選択肢となっています。

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日本コンストラクション・マネジメント協会|2020年9月集計 公共事業CM方式導入実績リスト より引用

事例で見るCM方式を採用するメリット

【事例】県立宮崎病院

宮崎県全県における中核病院の建設事業、再始動と実現
基本構想段階での建設事業予算185億円が、基本設計終了時316億円に増加。議会で予算化が見送られた。これにより事業は9か月間休止することとなった。
CMr(コンストラクション・マネジャー)が参画することにより、事業コストを46億円削減し、かつ全県レベルの中核病院としての医療機能・患者本位の医療環境を実現。再設定された予算内での発注を実現し予定通りに竣工を実現した。

5.jpg▲県病院局とプラスPMの関わり:関係者相関図

また、事業コストを削減するにあたり、多くの意思決定をスムーズに行う必要があるので、トップダウンで決めることと、ボトムアップで決めることを分けて会議体を設定し、根拠に基づくマネジメントを行うことで誰もが納得する意思決定を実現した。

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事業主 宮崎県病院局
建設地 宮崎県宮崎市
用 途 病院
構造・規模 S造(免震構造)/地上8階建/延床面積 約47,000㎡

【事例】習志野市大久保地区公共施設再生事業

テクニカルアドバイザーとしてPFI事業の推進を支援

老朽化した既存公共施設と、周辺に立地する4つの公共施設の機能を集約し、「(仮称)みらい創生館」として更新・再生することで、周辺のまちづくりと連携した地域の価値を高め、市民活動の拠点とすることを目的とした。
事業計画の基礎的な情報の整理、建築における要求水準書(案)の作成、VFM(バリュー・フォー・マネー)算定における情報提供等、事業の円滑な推進を支援した。

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事業主 習志野市
建設地 千葉県習志野市
用 途 図書館、公民館・市民会館、勤労会館

その他公共施設支援の主な実績

A自治体 CM方式採用までのプロセスと活用のメリット

某県A自治体にて「新庁舎建設地」や「事業方針」の検討をスタートしたことが報道され、担当部署にアポイントを取り、会いに行きました。
丁度事業は本格的にスタートする直前で、エビデンスのある情報源もなく、少人数の担当者で情報をかき集めながら手探りで事業計画を策定中とのことでした。

担当者は既に多くの建設関係会社の訪問を受けており、情報収集の中でコンストラクション・マネジメント(CM)という名称を聞いたことはありましたが、具体的に何をする会社なのか、どのようなマネジメントなのか、想像もつかない様子でした。

まずは一通り業務内容と合わせて、昨今、多くの公共事業でCMの採用が増えていることを、事例を交えて説明を行いました。

すると以下のような質問を受けました。

  • CM方式を採用することのメリットは何か
  • プロジェクトを進めるには、何から手を付けて、どのような進め方がよいか
  • 完成までのスケジュールはどのくらい見ればよいか
  • 現在の建設単価はいくら見ておけばよいか
  • 発注方式はどのように選べばよいのか

担当者は今までに大規模な建設計画の経験がなく、手探り状態の中でプロジェクトを進めることに不安を感じているようでした。
そこで担当者の悩みに対し、CM方式のメリットと、CM方式の活用で解決できることを3点にまとめ説明を行いました。

1.CM方式の役割とメリット

CMの役割は発注者側の建設担当として、建設プロジェクトチームに参画し、求める機能、規模の建物を適正予算でスケジュール通りに完成させることです。
CM方式活用のメリットは主に以下の5点です。

  • 適正な予算で発注できる
  • 求める機能・規模の建物が実現できる
  • 価格、品質とも最適な設計者(施工者)の選定ができる
  • スケジュール通りにプロジェクトを進めることができる
  • 発注者のスムーズな意思決定のため、エビデンスのある判断材料の提供を行う

そして発注者(担当部局)の役割は、庁内調整、議会対策、市民への情報提供、設計者や施工者との調整など、あまりにも多様で膨大な仕事量があります。
このことを事業の模式図を示し説明すると、建設プロジェクトのスケジュール管理や技術的な判断、意思決定には発注者を支援する第三者が必要であることをご理解いただけました。

2.適正予算と実現性のある事業工程はどのようにして策定すればよいか

当時東京オリンピック関連施設完成後も人件費の高騰が続き、建設資材も価格上昇傾向でしたので、これを踏まえて適正な予算を組むことが重要とされていました。
適正予算とは、発注時に大きくブレることの無い予算のことなので、ぎりぎりの希望価格ではありません。直近の同規模、同用途の発注事例と市場動向を分析し、予定価格を算定します。

事業工程は、発注方式により大きく変動することがあります。現在(2022年6月)鉄骨(BCP材)の納期は16ヶ月といわれています。つまり鉄骨発注からの納期なので、いかに早期に発注をかけられるかが重要です。
設計・施工分離方式の場合、設計完了後に入札を行い、ゼネコンを決定、工事請負契約後にゼネコンが下請け業者、メーカーと価格交渉の末、合意をして初めて発注がかけられます。
一方、設計・施工一括方式(デザインビルド方式;以下DB方式)の場合、設計期間中から鉄骨などの長納期資材の発注がかけられます。
このような市場動向を踏まえて現在の時点で必要な情報を分析し、発注方式ごとに工程表を作成し、慎重かつ柔軟に発注方式を決定し、現実的な工程を策定します。

3.発注方式はどのように決定すればよいか、発注方式によるメリットとデメリット

発注方式には、設計・施工分離方式、DB方式などがあり、各発注方式によるメリットと課題があります。

事業の特性、背景と優先順位により、発注方式の決定は重要な要素と考えています。図の通り①⇒②⇒③⇒④の順に、建設会社がプロジェクトに参加する時期と比重が高くなります。

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コストとスケジュールを優先する場合、早い時期に建設会社の知見を入れて設計を進める方がプロジェクトの安定した進捗を図れるという判断から②③④の採用が増える傾向にあります。
それぞれの発注方式の課題はCM会社が参画することによりほとんど解決が可能です。

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設計施工一括発注方式(DB方式)で契約後のトラブルを防止するためのポイント

CM方式採用のハードルは予算取り

A自治体に数回ほど訪問し、建設事業の進め方、CM方式活用のメリットも十分認識いただいたのですが、残念なことに「CMの良さはわかったけれど、CMの予算が承認されるかは、わからない。」とのご意見をいただきました。
経営企画部門では、CM方式の採用を通すために、こんな前向きな意見が出たそうです。
「これまで〇〇市ではCMの採用実績がないので理解を得るのが困難だろう。しかし経営企画部としては何としてもCMを採用したい。CMの費用対効果を示す資料はないか?他の自治体がCMを採用した経緯や効果などないか?新たな取り組みに対する懸念があるならば、一つ一つ払拭しなければならない。」

予算確保に向けプラスPMが行ったこと

当社では、予算確保の庁内コンセンサスを得るために必要な資料の収集を始め、できる限り客観的な情報提供を行いました。

  1. 公共事業でCM方式が採用されている件数
  2. 公共事業でCM方式の採用が増えている理由、背景
  3. CM方式の効果

半年後、A自治体 経営企画部の担当者の努力の結果、庁内の理解が得られ、CM方式の採用が決まりました。

根拠に基づく計画でプロセスの透明性を担保し、市民の納得を得られる公共事業を実現する

新庁舎の建設プロジェクトを進めている自治体のご担当者の皆さん。
A自治体 担当者のような悩みは多くの自治体で抱えている共通した課題であると思います。しかしながら、「CM方式なんて過去に採用事例がないので進め方がわからないし、庁内のコンセンサスを取るのは困難だ。いつもの設計・施工分離方式で進めよう。」と、半ば諦めている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、現在、公共事業でのCM方式採用事例は確実に増えてきており、その効果も随分と浸透してきています。事業手法の一つの選択肢として検討のテーブルにあげてみてはいかがでしょうか。

まずはお気軽にお問い合わせください。


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