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プロポーザル方式とコンペや他の選定方法との「違い」を簡単解説

本記事は、建設プロジェクトにおける「設計事務所の選定方法」を検討している担当者に向けて、選択肢となる「プロポーザル方式」について、わかりやすく解説します。

プロポーザル方式とは価格だけでなく提案内容や事業者の技術力、実績などを総合的に評価して最適な事業者を選定する方式です。
契約条件の調整が可能なため、不落時も再交渉ができ、「不落のリスクが低い」のが特徴です。
また、複雑で仕様の確定が難しい事業に適しています。

1.プロポーザル方式と「他の選定方法」との違いについて

代表的な選定形式である一般競争方式や指名競争方式と、プロポーザル方式には多くの違いがあります。

大きな違いの一つとして、プロポーザル方式は、いわゆる「競争契約」ではなく「随意契約」の一種である点が挙げられます。

選定方法の主な違いは以下のとおりです。

【選定方法の主な違い】
選定方法 競争入札方式 プロポーザル方式
(企画競争方式)
コンペ方式
(設計競技方式)
随意契約方式
一般競争方式 指名競争方式
発注者
  • 官公庁や地方自治体
  • 公共性の高い事業を行う民間企業
  • 官公庁や地方自治体
  • 民間企業
  • 官公庁や地方自治体
  • 民間企業
  • 官公庁や地方自治体
  • 民間企業
  • 官公庁や地方自治体
  • 民間企業
契約方法 競争契約 競争契約 随意契約
(事業者選定後)
随意契約
(優秀事業者選定後)
随意契約
入札者 資格を満たす全ての事業者 発注者が選定した特定の事業者 資格を満たす全て、もしくは指名された事業者 資格を満たす全て、もしくは指名された事業者 発注者が選定した特定の事業者
事業者の
選定方法
  • 価格のみで評価する(最低価格落札方式)
  • 価格以外も総合的に評価する(総合評価落札方式)など
  • 価格のみで評価する(最低価格落札方式)
  • 価格以外も総合的に評価する(総合評価落札方式)など
  • 価格と提案内容、事業者自体の特徴等を総合的に評価する
  • 最も優れた企画提案や設計案そのものを選定する
  • 発注者が特定事業者に直接交渉する

「競争契約」とは、複数の事業者が参加して費用や提案内容を競い、その中で最も適した条件を提示した事業者を選ぶ方法を指します。
一般競争方式や指名競争方式で用いられ、主に一般競争方式は公平性(透明性)が高いため、公共性の高い事業で採用されます。

一方、「随意契約」は価格や条件を直接交渉して決定する方法で、「競争入札が困難な場合」や「特定の事業者にしか対応できない専門的業務が必要な場合」などに用いられます。

加えて、一般的な随意契約では発注者が「任意」に選んだ事業者と契約しますが、プロポーザル方式(企画競争方式)では、複数の事業者から提出された「提案内容」に基づいて事業者を選ぶ点が大きな違いです。

2.「評価の仕方(選定方法)」のコンペ方式等との違いについて

プロポーザル方式とは、提案内容や事業者の技術力、実績などの多角的な要素を総合的に評価して最適な事業者を選定する方法で、随意契約となります。

例えば、以下の点が評価対象となります。

  • 業務実績:求められる業務に合致している過去の成果や経験があるか
  • 業務実施方針:実施フローや工程計画に妥当性があるか、実施体制が充実しているか
  • 提案内容の妥当性・実現性:業務規模に合致し、実行可能な内容かを判断する
  • 技術者の保有資格等の有無:プロジェクトに関与する技術者の資格や経験を確認し、技術力の裏付けとする
  • 特定テーマへの技術提案:環境配慮や地域特性など、指定されたテーマ(発注者要望)への対応力を評価する
  • 価格:提案金額の妥当性とコストパフォーマンスを評価する

また、選定方法にはプロポーザル方式のほかにも「価格競争方式」「総合評価方式」「コンペ方式」などがあり、それぞれ以下のように評価の仕方が異なります。

【評価の仕方(選定方法)の違い】
選定方法 提案内容 価格 提案した
事業者
プロポーザル方式 評価対象
評価対象
評価対象
価格競争方式 評価対象外
評価対象
評価対象外
総合評価方式 評価対象
評価対象
評価対象
コンペ方式
(設計競技方式)
評価対象
評価対象
評価対象外


それぞれについて解説します。

2-1.価格競争方式との違い

【価格競争方式での評価の仕方(選定方法)】
選定方法 提案内容 価格 提案した
事業者
価格競争方式 評価対象外
評価対象
評価対象外

価格競争方式はプロポーザル方式と異なり、価格が唯一の評価基準となるため、選定するプロセスがシンプルで明確です
また、全ての事業者へ平等な参加機会を提供することから、機会均等性も高いとされています。

特殊な技術や条件が必要ない一般的な建設工事等で採用されるケースが多いです。

2-2.総合評価方式との違い

【総合評価方式での評価の仕方(選定方法)】
選定方法 提案内容 価格 提案した
事業者
総合評価方式 評価対象
評価対象
評価対象

プロポーザル方式と総合評価方式は、どちらも複数の要素を総合的に評価する点では共通しています。
しかし、「契約の進め方」や「適した事業分野」には明確な違いがあります。

プロポーザル方式は「性能仕様が複雑で確定が難しい事業」に適しており、契約条件の調整が可能なため、不落時は次点者と再交渉できるなど、事業の遅延リスクが低いのが特徴です。

一方で総合評価方式はプロポーザル方式と違い、入札時に提示された条件での契約が前提となるため、交渉が不成立の場合は「不落」となり、再入札が必要です。
「性能仕様をあらかじめ定めることができる事業」に適しており、「安かろう悪かろう」を防ぐ効果があります。

2-3.コンペ方式(設計競技方式)との違い

【コンペ方式(設計競技方式)での評価の仕方(選定方法)】
選定方法 提案内容 価格 提案した
事業者
コンペ方式
(設計競技方式)
評価対象
評価対象
評価対象外

「プロポーザル方式」と似ている選定方式に「コンペ方式(設計競技方式)」がありますが、評価の対象が異なります。

プロポーザル方式では、発注者が提案内容(技術提案)に基づいて「設計者(人)」を評価・選定します。
一方のコンペ方式(設計競技方式)は「具体的な設計案」を重視して評価するのが特徴です。

また、コンペ方式(設計競技方式)の場合、提案作成に必要かつ充分な要件や条件を提示することが必要になるため、発注者側の負担が大きくなる点にも注意が必要です。

3.プロポーザル方式について

最後にプロポーザル方式の「種類」や「採用するメリット・デメリット」、「実施する流れ」について解説します。

3-1.プロポーザル方式の種類

プロポーザルには、大きく分けて「公募型」「指名型」の2種類があります。

3-1-1.公募型プロポーザル方式

公募型プロポーザル方式とは、自治体・官公庁のサイトで事業者の参加を募集し、技術提案書や企画提案書などによって最も優れた「提案者」を採用する選定方式です。

応募に必要な参加資格があれば誰でも参加が可能で公平性が担保されているため、多くの自治体で採用されている方法です。

3-1-2.指名型プロポーザル方式

指名型プロポーザル方式とは、一定の条件を満たした事業者の中から、発注者が専門性や実績をもとに参加事業者をあらかじめ指名して、その指名された事業者だけが参加できる選定方式です。

一般に広く募集する「公募型プロポーザル方式」と比べて、特に高度な専門性や技術力が求められる業務で採用されるケースが多いです。


また、「公募型」や「指名型」といった従来のプロポーザル方式の枠組みの中に、特定の要件を加えて実施されるケースもあります。
例えば、温室効果ガスの排出削減など環境への配慮を重視した技術提案を求める場合は「環境配慮型プロポーザル方式」とも呼ばれ、近年注目を集めています。

参考:
国土交通省|環境配慮型プロポーザル方式
環境省|グリーン契約(環境配慮契約)について

3-2.プロポーザル方式を採用するメリット

プロポーザル方式のメリットは、主に以下の4つです。

それぞれについて解説します。

〈メリット1〉提案内容と事業者を評価できる

プロポーザル方式では単に価格で競うのではなく、「提案内容の質」や「独自性」、「課題解決能力」などに加え、事業者自体の「技術力」や「実績」などを総合的に評価します。

そのため、特定分野で高度な専門性や創造性を持つ事業者を選定しやすくなります

〈メリット2〉建設プロジェクトの柔軟性が高くなる

プロポーザル方式では選定後も発注者と受注者が協議を重ねることで、契約前に契約内容や予算配分、仕様変更などの調整が可能です
プロジェクト進行中の新たな要求や状況変化に柔軟に対応でき、計画の見直しや改善がしやすくなります。

発注者の要望が反映されやすく、業務のスピードアップやリスクの軽減につながる点が大きなメリットといえます。

〈メリット3〉協業体制が構築しやすい

入札方式では、設計業務の発注段階で建物の仕様や成果の形がある程度決まっているため、設計者の技術提案に委ねられる部分は限られます。

一方で、プロポーザル方式は技術提案をもとに基本的な方針や仕様を詰めていくため、初期段階から発注者と受注者が密に協議を行うことが可能です。
このように協議を重ねることで、双方が意見を交換しながら共同でプロジェクトを進める協業体制が自然に形成されます

この協業体制により、円滑なコミュニケーションが実現して各部門の連携が強化され、納期の遵守や品質向上が期待できます。

〈メリット4〉契約不落のリスクが少なくなる

プロポーザル方式のメリットの1つとして、「契約不落のリスクが少ない」ことが挙げられます。

プロポーザル方式では提案内容に基づいて交渉の対象となる事業者を順位づけし、通常は最も評価の高い事業者(第1順位)と契約交渉を行います。
交渉の中では、契約内容の調整も可能です。

仮に合意に至らなかった場合でも、再入札をせずに次点の事業者と交渉を行えるため、状況に応じた柔軟な対応が可能です。

3-3.プロポーザル方式を採用するデメリット・リスク

一方で、プロポーザル方式には以下のようなデメリット・リスクも存在します。

それぞれについて解説します。

〈デメリット1〉選定時間や手間が増える可能性がある

プロポーザル方式は、通常の競争入札と比べて評価プロセスが複雑なため、選定にかかる時間と手間が増え、結果としてコストが上がりやすくなります

また、評価基準が価格だけでなく「提案内容の質」や「事業者の実績」等で判断するため、必ずしも最も安い価格の提案が選ばれるとは限りません。

そのため、最適な提案が当初の予算を超えるケースも想定され、発注者にとって予算管理が難しくなる可能性があります。

〈デメリット2〉評価基準の設定が難しい

プロポーザル方式では適切な評価基準の設定が成功の鍵を握りますが、以下のような難しさがあります。

客観性と公平性の確保:
定性的な要素(創造性、提案力など)が多いため、客観的な審査基準の設定、公平な審査プロセスの構築が難しい

地域要件の扱い:
地域貢献度や地元企業への配慮をどの程度評価に含めるかといった地域要件の扱いも、判断が求められる場合もある。

評価基準が不明確だと選定理由を参加者に説明する際に適切な回答ができず、透明性が損なわれ、後に疑問や不満が生じる恐れがあります。

〈デメリット3〉提案者の能力と提案内容の質に依存する

プロポーザル方式は提案者の能力と提案内容の質によってプロジェクトの成否が大きく左右されます。
主なリスク要因は以下の通りです。

評価の難しさ:
発注側が評価判断を誤ると期待した成果が得られない可能性があり、特に実績の少ない事業者を選定する場合は発注者要望を叶えられないリスクが高い

提案全体の水準が低い:
全体的に提案の水準が低いと、プロジェクトの目標達成に必要な提案が得られず、実現性が損なわれるおそれがある

主観的評価:
定性評価には評価者の主観が避けられず、優れた提案の見逃しや不適切な提案の選定リスクがある

〈デメリット4〉当初の要件が交渉により変わるリスクがある

プロポーザル方式では選ばれた事業者と契約内容について交渉を行うため、当初の発注内容が変更される可能性があります。

柔軟な対応ができる点はメリットですが、その反面、発注者の意図や要望が契約に十分反映されないおそれもあります。
事業の方向性がずれてしまわないよう、交渉時には注意が必要です。



発注者側がプロポーザル方式に不慣れな場合、上記のようなデメリットやリスクによって、プロジェクトの成功を左右する重大な問題に発展する可能性があります。

もし、プロポーザル方式の運営に不安を感じているなら、ぜひ一度、プラスPMへご相談ください。
多数のプロジェクトを手がけてきた専門家が、具体的な事例や解決策をわかりやすくご提案し、最適な評価基準の策定から運営サポートまで、安心してプロジェクトを進められる体制づくりをお手伝いします。

3-4.プロポーザル方式を実施する流れ

プロポーザル方式を実施する一般的な流れは以下のとおりです。

プロポーザル方式を実施する流れ(公募型)

  1. 参加資格条件や評価基準を設定する
  2. 参加事業者を募集する
  3. 参加表明書の受付と審査をする
  4. 技術提案書の提出を要請する
  5. 技術提案を評価する
  6. 優先交渉権者を選定する
  7. 契約を締結する

なお、上記は一例に過ぎません。
プロポーザル方式でも総合評価一般競争入札方式と同様に、必要に応じて外部の学識経験者を交えた選定委員会を設けることがあります。
また、募集開始後に選定資料(公告内容)の説明会を実施したり、直接提案内容に関する質疑回答をおこなう「対話」と呼ばれるヒアリングを行ったりと、さまざまな対応が必要となります。



こうした多様な状況に対応するためには、コンストラクション・マネジメント会社などの専門家のサポートが非常に有効です。

「プラスPM」では、プロポーザル方式の評価基準の策定から説明会の運営、各事業者とのヒアリング調整まで、すべてのプロセスを一貫してサポートいたします。

豊富な実績と専門知識を活かし、透明性の高い公正な選定プロセスの構築をお手伝いし、発注者側が安心してプロジェクトを進められる体制づくりを実現します。

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