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発注における「特命」とは ~ 特命随意契約の注意点と対策 ~

※2021.10.1 改訂(2016.4.1公開)

施設の建設計画を進める際、設計事務所や建設会社を選定する「発注方式」については、計画初期段階で検討しておかなければなりません。
しかしながら、これまでにお付き合いのあった設計事務所や建設会社に、まずはご相談されるケースが多いため、しっかりを協議されないままに発注方式が決まってしまい、実際の工事発注段階において苦労されたというお話を耳にします。

今回はある事例をもとに、発注で失敗しないためのリスクと対応策について考えてみます。

製造業A社様の工場移転新築計画の事例

信頼関係がある会社=どんな計画も任せられる会社?

「建設会社の見積が高くて計画を進めることができない。何とかなりませんか?」
ある日、A社様から突然このようなご相談を承りました。A社様とは半年ほど前に一度だけ、某銀行のご紹介を受け、当社のCM業務についてご説明にお伺いしたことがありましたが、そのときは特に困っていることはない、とのことで当社のサービスには関心を持っていただけませんでした。

今回、A社様より詳しい話をお伺いしてみると次のような事情でした。
A社様は事業拡大のために生産計画を倍増することになり、現工場の生産量では限界があるため、新規に土地を購入し全面的な工場の移転新築を計画しました。
現工場の工事を請け負ったB建設会社は、竣工後も小規模の改修や修繕の依頼に問題なく対応してくれていて信頼のできる会社であったため、今回の新築計画の相談に乗ってもらい、工事費予算を伝えたうえでB建設会社に設計施工一括発注(デザインビルド発注;以下DB発注)でお願いすることに決めました。

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設計施工一括発注方式(DB方式)で契約後のトラブルを防止するためのポイント

「発注者」以外が計画進行の主体者となることによるリスク

B建設会社は早速設計に取り掛かり、A社様(発注者)の新工場計画に対する要望事項を整理しながら、発注者による主体的な品質やコストの確認がないままに設計は進捗し、基本設計は一旦スケジュール通りに完了しました。
そしてこのタイミングでB建設会社より概算工事費が提示され、その金額が大きく当初予算を超過していたため、どうしようもなくなり当社へ見積の妥当性確認を含め相談が入りました。

当社はまず、B建設会社の概算見積資料の確認を行いました。
すると概算根拠となる資料は、平面図と立面図のみの基本設計図で、仕上げ材料や、構造計画・設備計画が分かる資料の提示はなく、概算見積は、建築・設備・外構の大項目の一式計上となっていました。

これでは金額の妥当性どころか、そもそもA社様の要望を満足する設計内容であるのかの確認もすることができません。

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当社はA社様の了解を得た上で、B建設会社に対してより具体的な基本設計内容の開示と作成を依頼し、それに基づいた概算見積の再提出を求めました。が、既に設計施工での契約を条件とした設計契約を取交し済であり、「特命発注」となっていたことも関係して、工事金額の圧縮には時間を要し、結果として建物の完成時期は、当初のスケジュールよりも遅れることとなりました。

発注方式と選定方式

発注方式

多様な発注方式については、大きくは下記の4つに分類できます。

  1. 設計・施工分離発注方式
  2. 実施設計・施工一括発注方式(実施設計 DB 発注方式)
  3. 設計・施工一括発注方式(DB 発注方式)
  4. ECI 方式

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発注方式の決定は、コスト・スケジュール・品質を大きく左右するために、プロジェクトの初期段階において十分に検討し決定することが重要になります。

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発注方式の工夫で建設コスト削減にゼネコンの持つ技術力を活かそう!

契約者の選定方法

発注方式の決定と同様に、設計事務所や建設会社の選定方法は、大きく3つに分けることができます。

  1. 一般競争方式:競争参加資格を満たす不特定多数の者が競争を行う
  2. 指名競争方式:特定の条件により発注者が指名した参加者が競争を行う
  3. 随意契約方式:競争によることなく、任意に特定した者を選んで契約を締結する

随意契約方式には、少額随契、不落随契、特命随契があり(一般的に特命と呼ばれる形式は特命随意契約方式のこと)、今回のA社様の場合は、DB発注で特命随意契約方式ということになります。

特命随意契約方式の注意点と対策

特命随意契約方式の短所

A社様の事例を参考に、特命随意契約方式の注意点を整理してみます。
まず発注方式については、B建設会社によるDB発注方式でした。工場建設の場合、一般的には建築の意匠性よりも機能や納期が重要視されることから、デザイン提案が得意な設計事務所でなくとも、建設会社の設計で問題は少ないと考えられます。従ってA社様の発注方式の選択は間違いではありません。
次に特命での契約ですが、これには"注意すべきだった点"が数点ありました。
特命方式の最大の短所は、競争環境の欠落です

例えばコストについては、競争相手がいないわけですから、多少高額な見積を提示しても比較対象がいないため、発注者にはそれが妥当な金額であるかどうかが分かりません。
また、設計品質やスケジュールについても、コスト同様に比較される相手がいないので設計施工者主導で計画を進めることになります。その結果として、高額な見積であり、さらに発注者の要求事項が一部反映されていないことも起こりえます。

特命随意契約方式でトラブルを回避するための対策

ここで、特命随意契約方式での注意事項とトラブル回避の対策について説明します。
重要なことは、契約を進める時点で条件を明確にしておくことです。

  • 設計、施工各段階と概算金額提示のタイミングを網羅したマスタースケジュールの作成と提示
  • 基本設計・実施設計の各段階完了時に設計説明会の開催を要求し、発注者が設計内容について確認する機会を設ける
  • 見積作成条件の明確化(見積明細書の項目、一括提示や出精値引き提示の禁止など)

上記3点は最低でも契約時に確定合意しておくことが必要ですが、もっとも重要なことは、発注者が主体的にプロジェクトを推進し、業者任せにしないということです。
特命随意契約方式を採用することにより、設計事務所、建設会社の選定に発注者が要する時間と手間は大幅に短縮できます。しかし、その業者選定時に手間をかけなかったことで起こりえるリスクを回避する方法を取ることが必要です。

まとめ

今までの付き合いがある、信頼関係のある会社という理由のみで、特命随意契約方式を選定することは大きなリスクを伴います。
A社様も、当初プラスPMがCM業務紹介にお伺いした時に、もし当社のご提案をお聞きになっていたら、結果は間違いなく変わっていたでしょう。

ここまで特命随意契約方式の注意点と対策について論じて参りましたが、つまるところ、この方式での契約でプロジェクトを成功させるのに重要なことは、工事金額が高騰する可能性や、スケジュールが遅れるなどに対するリスクマネジメントをすることです。

しかし、建設プロジェクトのご経験が豊富な発注者の方は決して多くないと思います。
したがって、マスタースケジュールを提示されても、もしくは工事の見積書を提示されても、その妥当性を自社内だけで判断することは困難だと考えています。そもそも見積条件の設定もよく分からないという方が殆どではないでしょうか。

発注方式、契約方式に不安や迷いがある場合には、是非計画の早い段階でプラスPMにご相談ください。


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