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病院建設

病院建設の基本構想では「根拠性」が大切です

病院設計における用語の1つに、EBD(Evidence-Based Design)がありますが、これは 「根拠に基づく設計」を意味し、既に設計者の常識としてしっかりと浸透しています。
もともと医療分野で広まった概念であるEBM(Evidence-Based Medicine) を語源としており、 課題解決のための方法・方策に、その根拠の確かさをもとめようとする方法論です。

個人もしくは組織の慣習的、従来的な基準や規格、指針などに盲目的に従う設計ではなく、 ていねいな課題把握と確かな推論により、最高の効果を期待できる設計を目指す概念です。CM業務においても、「根拠性」に基づくマネジメントがますます求められています。

例えば、建設事業において重要な段階である事業の立ち上げ段階、 いわゆる基本構想においては特に「根拠性」が必要となります。
その段階では、第三者性的視点での検証、関係者への説明責任・ 義務、そして意志決定(もしくは共有)会議などがあるからです。 もとより生命に大きく関わる医療建築は、機能性が最も重視され、 それを具現化する計画が求められますが、経営的な視点の重要度が高まっている昨今の 病院建設事業では、EBDを効果的に活用することで、

  1. 建設費高騰の中で、もっとも効率的かつ経済的な設計
  2. 事業に関わる多くの関係者に、客観性な指標を示すことでのスピーディな経営判断

が可能となります。

具体例として、弊社で基本構想における病院規模設定の段階にて、 「根拠性」が活用されたCM事例を紹介します。

事例1

最近急性期一般病院で、約120床の病院の移転新築を計画されている病院さんから相談がありました。
「設計事務所と細かい部門別ヒアリングを積み重ねて計画をまとめたが、 概算コストを算出したところとんでもなくオーバーしてしまった。 改善の糸口として一体何から手をつけていいのかがわからない。」 とお悩みのご様子でした。

基本計画を見てみますと、1床あたりの面積が95㎡でした。3次救急のあるような災害拠点病院であればまだしも、100床を超える程度の規模であれば、まずあり得ない数字です。また部門別の面積構成比も検証してみると、外来が15%程度あり、一般的な約9%比べ広すぎると思えました。設計の進捗過程で、客観的に規模の根拠性を検証すればこのような事態は防げたと思われます。

その後は各部門の規模の再設定を、全体面積とのバランスを比較しながら設計事務所と共に検証し、 改善した結果予算内で収まるプランとなりました。

事例2

民間の250床の急性期病院の建替で、各部門の担当者の要望を極力取り入れて計画した結果、規模が拡大する一方となり改善したいのだが、どの部門も面積削減には非協力的で、ただ単に削れと言われても納得できないといわれ、行き詰まっているとのことでした。

基本計画を検証したところ、診療部門の面積比率が一般の平均値に対して大きく、その中でも手術部門と内視鏡部門の規模が突出して大きいと思われました。
手術部門の計画において、有名大学病院の出身で経験を積んだ医師が その大学と同じようなプランを持ち込もうとしていることが背景にあるように感じられました。手術室のプランを見てみると、「回収廊下型」となっていました。

不潔と清潔のゾーンを明確に分けることで感染リスクを抑える平面計画ですが、 廊下が長いのが特長で、スタッフや患者、器材の移動の制限や負担が大きい上に、建設コストも増大します。コストより機能が優先したかつての大学病院、自治体病院では、 回収廊下により清汚ゾーンを分ける平面型が主流でした。

しかし、米国の感染対策のガイドラインであるCDC※1が浸透した現在では、「回収廊下型」以前に主流であった、廊下にてゾーンを分けない「中央ホール型」に 回帰して、収益を生まない廊下の面積は抑え、その分手術室の数を増やしたり、 または全体の規模を抑える傾向の事例も増えています。

感染に関しては、どうしてもリスクを考えるあまり、経験主義、感覚的又は迷信的な 感染への防御に走り、明確なエビデンスがないまま、過剰な建築的対応になりがちです。このケースでは、CDCにもとづいて再度手術の運用を再検証した結果、「中央ホール型」でも円滑な運用が可能なことが判明し、規模縮小が可能となりました。

「根拠性」の活用は、医療技術、社会的背景や経済的な動向を背景としながら、 病院毎の医療環境や人的環境に対応し、治療そのものを向上させることが究極の目的です。 根拠性のもととなるエビデンスは刻々と変化します。面積根拠や国内外の様々なガイドラインだけでなく、 実際の医療の現場での経験に基づく蓄積データーなどの標準化も重要です。

プラスPMは、エビデンスを持った「根拠性」のあるデーターを様々蓄積しており、 それらを活用し、コストと機能性のバランスがとれた医療施設計画の支援を行っています。病院事業において「根拠性」のあるアドバイスが必要でしたら、 コンストラクション・マネジメント(CM)会社として、数々の病院プロジェクトを経験し、 開業までをしっかりとアドバイスできるプラスPMに、是非一度ご相談ください。

※CDCガイドライン:米国の政府機関である疾病予防管理センターCDC (Centers for Disease Control and Prevention) が出している、 感染対策に関する様々なガイドラインや勧告。先頃、手術部位感染予防のためのガイドラインが十数年ぶりに改訂した。


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