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病院建設

なぜ建設計画の当初予算と設計完了時の概算見積には大きな乖離が出てしまうのかを徹底解説します!

※2020.12.4改訂(2019.3.4公開)

当社には、北は北海道、南は沖縄、全国各地から日々沢山のご相談が寄せられます。その中でも多いのが「建設事業費の予算オーバー」に関するものです。
建設予算を厳守することは、新病院開院後に健全経営をしていく上で、最も重要な事項の1つと考えております。

今回は、予算を厳守するためのポイントについて、実例を交えて解説致します。

予算オーバーに陥る背景はココにある

なぜ予算オーバーが起きてしまうのか、事例を交えてご説明いたします。

事例1.間違った初期設定

某プロジェクトでは、基本構想時に類似案件比較で設定した工事予算のまま計画を進めていました。
ところが、基本設計完了時にゼネコンから概算を取ったところ、予算の1.5倍になりました。

何故のこのようなことになったのかというと、このケースの場合は、そもそも基本構想時に設定した工事予算が間違っていたのです。

このプロジェクトでは、規模‧病床数が自院と類似している案件の㎡単価で予算設定を行っていました。
基本構想のプロジェクト初期段階に予算を設定する際は、このように同規模、類似案件との比較で予算設定を行っている病院様も実際多いかと思います。しかし、病院の機能や建替え条件などのプロジェクト特性を考慮した予算設定を行っていないと、計画している施設に対して適正予算となっておらず、結果、予算をオーバーする事態に陥るケースが多くあります

事例2.外部環境の変化

某プロジェクトでは、数年前に設定した工事予算に対して、規模、及び設計仕様(施設グレード)を調整して計画を進めていましたが、最終的に予算を2割もオーバーしてしまいました。

このような事態に陥った原因は外部環境の変化です。

2013年から現在(2020年)まで、建設コストは上昇し続けていました。
例えば、同じ病院を建設するにしてもある時期に設定した30億円の予算は、外部環境の変化(上昇している場合)によっては35億円程度に上昇することがあります。この変化によって、予算を超過したのです。コストが上昇している局面では、この変化に対してなんの対策を講じることもなく設計を進めると、予算をオーバーしてしまいます。

事例3.過剰な設計

某プロジェクトでは、設計段階で過剰設計となってしまい、ゼネコンの入札時に予算を3割も超過してしまいました。

当初想定していた病院の規模、及び仕様(施設グレード)に対して、予算の設定は適切でありました。
しかし、設計を進めていくうちに、規模、及び仕様(施設グレード)がどんどん上がり、結果、予算を大幅にオーバーしてしまったのです。

この予算超過を防げなかった原因は2つありました。

  1. 建設投資額に意識が低い設計者は、凝ったデザインの外観や必要としない高いグレードの設備を発注者に提案し、発注者は予算通りの設計になっているかの確認を設計者にすることなく承諾した結果、過剰設計となってしまったこと。
  2. 発注者側の要望(面積増加、仕様のアップ)に対して、設計者がコストを検討し必要可否を判断せずに発注者の要望をすべて図面化してしまったこと。

設計者、及び発注者共にコスト感覚を持たないまま設計を進めてしまうと、このような結果となります。

では、どのように予算の設定、及びコスト管理を行えば、事業費の予算超過を防ぐことができたのでしょうか?

コンサルタントが教える予算管理・コスト管理

初期設定が重要

まず、事例1のようにならないためには、基本構想時の予算の初期設定が重要となります。

予算設定のポイントは、病院の機能や建替え条件などのプロジェクト特性を考慮した工事費を検討し採用することです。

同じ病床数の病院でも、手術室を7室設置する病院と、15室設置する病院とでは㎡単価は異なります。もちろん、手術室が多い病院の方が高くなります。
また、病院の現地建替え計画では別敷地への移転建替え計画と比べ、「水道やガス配管のつなぎ変え費用」や「利用者の安全を守るための間仕切りや保安係員の配置」が必要になり、㎡単価が高くなります。

これらの条件を整理し、一部、実際の計画に即した積算を行い㎡単価に反映するなど、プロジェクト特性を考慮した概算による予算設定を行う必要があります。

外部環境の把握

事例2への対策は、予算を設定した段階から、労務費が上がっていないか、材料費が上がっていないかを確認しながら計画を進めることです。
外部環境を確認する手法として、国土交通省が発表している「公共工事設計労務単価」で労務費を確認する、建設物価調査会が発表している「建設物価」で材料費を確認するという方法があります。

また、設計中のコスト管理については、設計者が作成する概算工事見積書も参考にしますが、実際に工事を行うゼネコンに概算工事見積書を作成していただき、その内容を確認することで外部環境の変化を把握するという方法もあります。

外部環境の変化により、計画が予算と乖離する場合は、予算の再設定、または設計内容の調整が必要です。
そうならないためにも、外部環境が大きく変化(コスト上昇)している場合などは、将来発注時のコストを予測しながら予算の設定を行うことも重要なポイントの一つです。

設計中のコストモニタリング

事例3への対策は、基本構想段階で設定した「予算」に適した「新病院の規模及び仕様(グレード)」を厳守していくことにあります。

設計中の部門ヒアリングでは、部門面積が広い方が使い勝手が良いため、面積増加の要望が出てきます。その要望をすべて反映すると面積が増大し予算を超過してしまうので、どこかを広げたら、別の場所を減らすといった全体面積を調整しながら設計を進めることが必要です。
面積はコストに直結しますので、「面積増=コスト増」ということを認識しながら進めることが重要です。

また、設計のグレードについては、過剰設計になっていないかをチェックしながら進めることが必要です。
病院の意匠性は重要ですが、設計者が提案する内容が「過度なグレード設定」になっていないかを確認しながら設計を進めることや、発注者の要望に対してコストが上がる内容については、設計者に概算を出してもらい予算をオーバーしていないか確認しながら進めることをお勧めします。

設計の決定事項及び変更内容に対して、初期設定したコストと合致しているのかを確認(コストモニタリング)し調整(コストコントロール)しながら設計を進めることが重要です。

基本構想段階の予算設定とコスト管理の重要性

発注時に建設価格が予算と大幅に乖離してしまうと、設計の見直しによるスケジュールの大幅な遅延、予算の積み増しにより経営収支の悪化、最悪の場合は、事業の中断ということもあり得ます。
このようにならないために、重要なポイントのおさらいです。

  1. 基本構想段階での初期予算設定を間違えない
    プロジェクト特性を考慮した概算により、確実な予算設定を行う

  2. 外部環境を踏まえた予算設定
    外部環境が大きく変化(コスト上昇)している場合などは、将来発注時のコストを予測しながら予算設定を行う

  3. 設計中にコストモニタリングを実施し、予算に合致した設計内容に調整
    設計の決定事項及び変更内容に対して、初期設定したコストと合致しているのかを確認(コストモニタリング)し調整(コストコントロール)しながら設計を進める

プラスPMでは、病院建設プロジェクトの初期段階から開院までプロジェクトを円滑に進めるための支援を行っております。もちろん、予算設定や設計中のコスト管理も支援しております。
病院建設プロジェクトを進めるにあたり、建設コストに不安をお持ちであれば、是非一度コンストラクションマネジメントのプラスPMへご相談下さい。


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