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病院建設

将来に亘り地域医療・福祉を支える病院になるために、必要な機能分化と地域連携を考える

"超高齢化社会"が到来するといわれる2025年まで、あと6年を切りました。
団塊の世代が75歳を超える"超高齢化社会"においては、医療・介護サービスの必要性は今後ますます大きくなっていきます。
病院経営に携わる皆様も、それを見据え、自院における経営方針を見直してこられたことと思います。
そして新たな方針は、医療・福祉行政における変革の行く末を想定したものになっているはずです。いかがでしょうか。
今回は、今一度「地域医療構想」を振り返ることで、皆様の今後の経営戦略がその内容に沿っているものなのか、ご確認いただく機会になればと思います。

地域医療構想とは

地域医療構想とは地域医療を支えるためにある

「地域医療構想」とは何かをまずは振り返りたいと思います。

『地域医療構想は、将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数(病床の必要量)を4つの医療機能ごとに推計した上で、地域の医療関係者の協議を通じて病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現する取組みです。
 医療介護総合確保推進法を受けて、厚生労働省は2015年3月に「地域医療構想策定ガイドライン」をまとめ、これに沿って、2016年度中に全ての都道府県で「地域医療構想」が策定され、2018年に4月から始まった第7次医療計画の一部として位置づけられました。』

公益社団法人全日本病院協会:みんなの医療ガイド【地域医療構想】より引用

ここから読み取れるのは、実は地域医療構想には、皆様の病院が「地域の医療・福祉を支える病院」になるための方法が記述されているということです。
地域の医療を支える病院になるには何が必要でしょうか。
それには、地域の現状とこれからを把握する事が必要です。地域にはどのような年代の人がどの位住んでいて、数年後にはどのように変化するのか。地域にどのような病床が不足、あるいは過剰な状態になっているのか。それが今後どう変わるのか。診療科や外来はどうか。
これらが記述されているのが地域医療構想です。

28.10.1.jpg政府統計:【平成30年 我が国の人口動態より引用

地域医療構想の実現に必要な病院整備

病院の経営戦略を、地域医療構想を見据えた上で見直すとき、ほとんどの場合は病院建築の再整備が必要になります。
病院建築の再整備では、地域の現在のニーズ、将来のニーズを地域医療構想によって正しく把握し、それに沿った病院整備計画とする必要があります。そして病院の再整備プロジェクトは非常に多くの資金が必要であり、大抵は数十年をかけて返済していくことになります。
地域医療を支える病院であり続けるためには、すなわち病院がその地域に必要な医療機能を将来に亘って維持し続け、住民に必要とされる機関でなければならないのです。

地域医療構想の実行に不可欠な病院機能

地域医療構想において必要な病院機能の傾向

地域毎に人口構成・年齢構成は多種多様ですので、地域医療構想もまた、地域毎の色が強いものになります。
しかし一方で、大きな括りでの全国的な傾向も見えてきます。これは、日本全体で年齢構成に大きな偏りがみられることによります。
例えば病床の需給分析を行うと、埼玉県など一部の病床不足地域を除くと、急性期病床は入院需要に対して全国的に過剰になっており、超高齢化によって回復期機能・慢性期機能が不足していることが分かります。

厚生労働省:各都道府県の地域医療構想について

整備されることの多い機能

病院再整備において機能を拡大する傾向にあるのは、例えば地域包括ケア病棟やリハビリテーション部門、化学療法部門、透析部門などがあげられます。
また需給分析を行うと、訪問系事業所などの機能も不足しているという結果が多く出ています。この傾向は今後も拡大するものと考えられています。
また、昨今では往診機能の強化を引き上げるといった病院機能の見直しを行っていらっしゃる中小病院もあります。

今後特に維持が難しくなる診療科

需給分析から、私立病院においては、今後非常に維持・運営が難しくなると思われるのが、小児科や産婦人科です。
特に同じ診療圏内に競合病院がある場合は、機能の維持が大変難しい事が多いです。
また、訴訟のリスクや医師確保の難しさからも、今後更に縮小・廃止を行う病院が増えると考えられます。しかし、必ず必要な診療科であることは間違いなく、現時点では一定の需要があることや、地域から設置の要望が出やすいこともあり病院の意思決定を難しくしています。

一方で、公立病院などでは継続させることが多い診療科です。
これらの診療科をお持ちの病院では、特に慎重な検討と意思決定が必要になります。

「機能分化」を行う意思決定ができるか

これまでの地域医療構想調整会議の流れをみると、地域医療構想実現のため病床機能の分化・連携に向けた踏み込んだ提言が示されています。そうなると、機能特化と連携を行う病院が、今後も手厚い報酬を得られる仕組みとなると推測されます。
つまり病院の特色を出し、医療機能を特化させて投資を集中させることができるかが、重要な鍵を握ります。

しかし一方で、目の前の患者さんにとっては、なんでも診てくれる病院の方が便利であり、ニーズも高いこと、今まで行ってきた医療を中止することにスタッフからも反対がでることも多いことから、今後もいわゆる「全方位型」の病院であることを選択される病院が多いことも事実です。

地域包括ケアシステムとの連携を建築面から考える

地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステムは、『要介護の状態となっても可能な限り、住み慣れた地域で自立した日常生活を営むことができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制構築を目指すもの』です。

公益社団法人全日本病院協会:みんなの医療ガイド【地域包括ケアシステム】より引用

地域を支える病院を目指し、地域医療構想を踏まえた病院整備を行うのであれば、地域包括ケアシステムとの連携を考えて行うこともまた、必要になります。

入院機能変更の建築上のポイント

医療とと生活支援を担う病床として、昨今よく設置されるのが地域包括ケア病床です。

『2014年度改定で厚生労働省は、医科点数表で地域包括ケア病棟(以下地ケア病棟)の役割を「地ケア病棟入院料は、急性期治療を経過した患者及び在宅において療養を行っている患者等の受け入れ並びに患者の在宅復帰支援等を行う機能を有し、地域包括ケアシステムを支える役割を担うものである」と定義した』

一般社団法人地域包括ケア病棟協会:【地域包括ケア病棟の病棟機能と地域包括ケア病棟を有する病院の病院機能】より引用

これが地域包括ケア病棟であり、まさに急性期病床と在宅の間を結ぶ病棟です。

一方で地域包括ケア病棟は、例えば原則として療養病床と同等の広い廊下幅員が必要になります。また、リハビリとの連携を考えると患者動線も十分な検討が必要になります。
施設基準や患者の特性などを十分に理解した建築計画が必要になります。

外来機能強化の建築上のポイント

予防としての健診機能を強化する病院が増加しています。

健診を計画する上で必要なのは、「一般外来と健診は、放射線検査・生理検査諸室など、どこまで共用とするか」と「一般外来動線と健診動線をどのように分離するか」です。
健診の規模に応じて検査関連諸室の共用度合は変わり、病院全体規模(延床面積)に大きな影響があります。また一般外来動線の分離も、建築計画上難しいものであり、分離を完全に行う場合は計画当初からの検討が必要です。

化学療法部門や透析部門を強化する病院もまた多いです。
化学療法部門は、どこで抗がん剤の調整を行うのかで薬剤部との位置関係や動線条件が変わってきます。化学療法部門にて調整を行う場合は、空気の流れを調整できる部屋でなければなりませんし、特殊な機械が設置されますので、それに合わせた換気機能などが必要になります。


透析部門は、ベッドが増えれば透析機械や排水設備を増設することが必要になります。各ベッドを渡る配管は、床上にあると安全上危険ですので床に溝を掘って配置しますので詳細な検討が必要になります。また、透析排水は病院内での処理を行ってからの排水となりますので、排水処理槽にも十分な検討が必要になります。

まとめ

地域医療構想は、日本にある数多の病院を、その地域にあった病院とするために策定されたものではないかと考えます。
病院整備は、30年に一度の大事業であり、病院経営を根本から見直す絶好のチャンスです。

病院整備事業においては、地域医療構想を踏まえ、地域包括ケアシステムを取り込んだ計画とすることが、病院が今後何十年も維持発展できる重要な要素ではないでしょうか。
そしてその整備事業は、病院の想いを十分に建築計画に落としこみながら進める必要があります。


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