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国内初の公立仮設病棟!180床を68日で稼働した建設プロジェクトの全容

2020年10月現在、ワクチン開発が急ピッチで進んでいるという報道はあるものの、新型コロナウイルスは未だ猛威を振るっているところです。

当社は病院CMを生業とする者として、医療施設という観点から、新型コロナウイルスへの対策の最新検討事例を紹介しています。その中でも取り上げております神奈川県による仮設病棟建設の取組みについて、詳細な情報を入手しましたので、皆様に発信します。

新型コロナ対策として国内初、公立仮設病棟建設プロジェクトの概要

設営者・運営者

【仮設的病床/病室の簡易陰圧化】医療施設で新型コロナウイルスに対し"今検討できる"ことは何か』でもお伝えした通り、概要は以下となります。

神奈川県では、新型コロナウイルス感染症に対応する医療体制「神奈川モデル」の一環として、中等症患者を受け入れる「重点医療機関」の病床数を確保するため、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、設置された臨時の仮設医療施設です。

(1)開設者
神奈川県(法的根拠:改正新型インフルエンザ等対策特別措置法第48条第1項)

(2)運営
医療法人 沖縄徳洲会

(3)設置場所
湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)内のグラウンド

(4)病床数

180床

工期

神奈川県の発表内容では、「4月中旬に建設がスタートし、5月上旬の稼働を目指している」とのことでしたが、実際は、着工が2020年4月22日、段階的な建設と検査・運用開始を繰り返し、第5期工事の検査日である同年6月29日に工事は完了しており、工期は68日間となっています。

ちなみに、詳細は後述しますが、第1期工事(B病棟39床)だけをみると、4月25日に基礎工事が開始され5月19日には工事・検査が完了しており、その工期は25日間となっています。
海外には、より短期間での仮設病棟建設が行われた事例もありますが、そちらは超法規的措置がとられたであろうことを考慮すると、日本においても短期間で仮設病棟が建設できた事例という捉え方もできる考えます。(参照『10日間で完成した武漢「火神山医院」に関する技術考察と「各国の取り組み」』)

1.jpg①医療法人 沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院
②仮設発熱外来
③A病棟(後のD病棟)建設地
④B~F病棟建設地

先行して建設されていた仮設病棟とその移設再利用

先行して建設されていた31床の仮設病棟

実は、本プロジェクトに先行して、湘南鎌倉病院敷地内には31床の仮設病棟が建設・運用されていました。この病棟(A病棟)は、「火神山医院」と同じく、ユニットハウスを使用した2階建ての建物です。

陽性患者用11床、HCU多床室15床、疑似症患者用個室5室の計31床で構成されており、その他にスタッフステーションや面談室、ユニットシャワーなどが1階に配置され、2階は当直室や休憩室・更衣室といったスタッフエリアとなっていました。
ユニットハウスはW2282×L7500のタイプが使用され、1階で34棟、2階で4棟の計38棟が使用されているようです。

2.jpg3.jpg

この31床は、後に第3期工事のD病棟として表題の神奈川県が設置する180床の中に組み込まれる事となります。

仮設発熱外来

湘南鎌倉病院では、仮設病棟の他に、仮設発熱外来を建設しています。建設場所は主出入口の脇で、診察室4室と放射線検査室(一般撮影室)、及び受付と待合があります。
こちらもユニットハウス9棟で構成されています。
また、診察室と放射線検査室は患者の出入口とは反対側にスタッフ用通路があり、患者とスタッフの動線が分かれた構成になっています。

180床の仮設病棟建設

全5期にわかれた建設プロセス

工事は、配置遣り方や鉄板敷から始まり、敷居全体の給排水設備や医ガス(酸素)の敷設を行うと同時に、病棟建設を行っています。
建屋の建設は全5期に分けられ、各期の工事が終わるごとに検査を受け、順次使用が開始されました。

全5期の工事期間もそれぞれ重複する期間があり、全工事工程を通して68日間となりました。

期ごとの工事内容

4.jpg5.jpg

第1期工事

第1期工事の工期は22日間でした。
精神科病床を含む全39床があるB病棟の他に、管理棟1が建設されました。
管理棟はスタッフルームや事務室、更衣室の他に、初療室や放射線検査室(一般撮影室)が含まれています。

第2期工事

第2期工事の工期は38日でした。
C病棟全39床と、CT室、栄養室などが含まれた管理棟2が建設されました。

第3期工事

第3期工事はD病棟31床となるのですが、これは先のA病棟を移設したものです。
D病棟内の室構成は、A病棟と同じものとなっています。

火神山院と同じようにユニットハウスを用いた計画で、ユニットハウスで構成されている利点を最大限利用した形となっています。
第1期・2期工事中に基礎コンクリートの打設や地中の先行配管を行っておき、B・Cの両病棟が稼働を開始したタイミングで一気にユニットハウスを移設する手順となっており、工事中でも、稼働病床数は減らないよう配慮した工程となっています。

第4期工事・第5期工事

第4期工事、第5期工事はそれぞれ34床・37床の病棟で、34日・43日で行われました。
個室ではなく「総室」(多床室)であることが特徴で、第1期~3期とは異なる使い方が想定されています。

6.jpg

構造や空調換気方式、病院としての設え

構造

D病棟(A病棟)はユニットハウスを接続した形で構成されていますが、それ以外の棟はプレファブ方式での建物となっています。

空調換気方式

仮設病棟における病室の換気は、基本的に病室からの排気、病棟廊下からの給気となっています。
病棟廊下の端部には外部若しくは渡り廊下につながる扉があり、その扉のアンダーカットから給気がなされてます。
空調設備は病室及び病棟廊下に取り付けられています。病室へ入る空気は空調された空気となるような設計です。

病院としての設え

続する壁には手すりが取り付けられ、医ガスやナースコール、電源、床頭台が各ベッドに配置されるなど、病院としての設えが整備されています。

仮設病棟の利用状況

新型コロナウイルス対策として建設された仮設病棟は、6月に竣工を迎え、神奈川県の感染症医療を支え続けています。
入院患者数は、最盛期で53人、現在までで延256人の利用があったと報告されています。

また、施設内では今後遠隔操作ロボット「ニューミー」が看護師に変わって医師の回診についていくことを検討しているということです。

新型コロナ対策医療を支える仮設病棟

仮設病棟の最大のメリットは、言うまでもないことですが、新型コロナウイルス感染症患者と一般外来患者への対応を物理的に分けることができる点です。そして、その分離は一般の外来患者だけではなく、医療を支えるスタッフにとっても感染リスクの低減となります。

今後の流行の状況にもよりますが、この仮設病棟の建設方法は、場所を変えても可能性があるものと考えています。

新型コロナウイルスは世界の、日本の医療を大きく変えています。
プラスPMはこれからも、この危機を乗り越える一助となるべく、新しい取り組みの情報を集め発信していきたいと思います。


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