PM/CM、建設コラム

発注方式

ECI方式を簡単解説|「DB方式との違い」や「適した建設工事」、「メリット・デメリット」についても言及

本記事は、「遅延が許されない」「限られた予算で最大限の建物を建てたい」「既存建物との接続が必要」など、複雑な条件下での建設プロジェクトを検討している担当者に向けて、解決策となる「ECI方式」について図表を交えてわかりやすく解説します。

ECI方式とは「建設プロジェクトにおいて基本設計完了後、実施設計段階から施工会社が関与し、施工の実施を前提として設計内容に対する技術協力を行う発注方式」です。

施工会社の技術力を早期に設計に反映させることで、標準的な施工では対応が難しい工事など複雑なプロジェクトにも適応しやすくなります。

1.ECI方式とは

ECI(Early Contractor Involvement)方式は、

建設プロジェクトにおいて、
特に設計や施工の難易度が高い場合や、仕様や施工条件の確定が難しい場合に利用される、
実施設計段階から建設会社が参画して、施工を前提に技術的な支援を行いながら設計に反映させていく発注方法」です。

<図 ECI方式のイメージ>

2022年に国土交通省が公共工事の入札契約指針を改正して「ECI方式」を正式に導入したことで、近年注目を集めています。
特に、設計や施工の難易度が高い場合や、仕様や施工条件の確定が難しい場合に効果的な発注方式です。

例えば、「既存建物との接続が必要で、調査を進めながらでないと計画が立てられない」「特殊な敷地条件のため、造成工事と建物工事を一体で進める必要がある」といったケースでは、施工会社の知見が早期から求められるため、ECI方式が採用される傾向にあります。

参考:国土交通省|国土交通省直轄工事における技術提案・交渉方式の運用ガイドラインを改正しました

1-1.設計施工一括発注(DB)方式との違い

ECI方式は「実施設計段階から施工予定者(建設会社)が参加し技術協力を行う方式」であるのに対し、設計施工一括発注(DB)方式は「設計と施工を一括で施工者(建設会社)に発注する方式」です。

ECI方式と設計施工一括発注(DB)方式の違いを以下にまとめました。

<図 ECI方式と設計施工一括発注(DB)方式の違い>

【ECI方式と設計施工一括発注(DB)方式の違い】
発注方法 ECI方式 設計施工一括発注
(DB)方式
施工会社への発注方式
  • 設計図書や仕様書に基づいて、見積もりや施工計画を検討する
  • 性能や機能を提示され、それを実現するための設計・施工計画を検討し、検討案より見積もりを作成する
    (部分的に仕様に従う場合もある)
施工会社の責任区分
  • 設計段階から責任が発生しない。施工段階から。
  • 設計段階から責任が発生する。
品質
  • 設計事務所提示の品質に対し、建設会社の技術協力により、品質を確保しつつコストを抑えた提案が期待できる
  • 建設会社の技術・ノウハウによる品質確保ができる
工期
  • 建設会社の早期参画で工期短縮が期待できるが、一般的にDB方式の方が短い
  • 建設会社に一括発注で工期短縮が期待できる
コスト
  • 設計者が見積りの妥当性を確認できる
  • 第三者のチェックが難しく、費用や設計の妥当性が見えにくい
発注者側の労力・手間
  • 設計者と建設会社、それぞれで選定作業が必要なうえ、プロジェクトを進める中でも調整の手間が発生する
  • 一括発注なので管理の手間が少ない
効果が期待されている建設プロジェクト
  • 公共工事
  • 大規模なインフラ工事
  • 複雑な設備工事
  • 工場建設や倉庫建設
  • 標準化された建築物
  • 工期が厳しいプロジェクト

1-2.ECI方式に適した建設プロジェクト

ECI方式は、特に複雑で設計変更が予想される建設プロジェクトに適しています。

ECI方式に適した建設工事

  • 大規模な公共・インフラ工事(橋梁、空港など)
  • 高度な技術が要求される施設(研究施設など)
  • 災害復旧工事 など

参考:国土交通省|Ⅳ.多様な入札契約方式の選択・活用
防衛省・自衛隊|「最適化事業に係るECI設計の今後の発注方法(案)」に係る意見公募について

なお、建設工事の内容によって適切な契約方式は異なります。
例えば、「ECI方式が最適」と考えていても、建設マネジメントのプロに相談することで、実は他の方式の方が向いている場合もあります

建設プロジェクトの契約方式を検討している際は、コンストラクション・マネジメント会社「プラスPM」にご相談ください。
最適な契約方式を選定し、コスト管理や進行管理を効果的に行うことができます。

2.ECI方式のメリット・デメリット

ECI方式には、いくつかのメリットとデメリットが存在します。

それぞれについて解説します。

2-1.ECI方式のメリット

まずはECI方式のメリットを3つ紹介します。

〈メリット1〉品質とコストを両立した、実現性の高い提案が期待できる

ECI方式では、設計事務所が基本設計段階で発注者の要望に沿った最適な仕様や性能(=品質)を提案し、実施設計段階からは施工会社が参画します。

これにより、設計事務所の「より良い選択肢」を尊重しながら、施工会社の技術的な視点から施工性やコスト面の調整が行え、品質とコストを両立した実現性の高い提案が期待できます。

DB方式や分離発注方式にはない、ECI方式の大きな強みです。

〈メリット2〉標準的な施工方法では実施できない工事へ対応できる

「既存建物と新設建物を接続するような複雑な計画」や「造成と建物工事を一体で進める必要がある特殊な敷地」など、標準的な施工では対応が難しい場合があります。

ECI方式なら施工会社が設計段階から関与することで、現場の制約を早期に共有し、現実的な対処法を検討できます。

その結果、DB方式や分離発注方式では難しい複雑な条件下でも、無理のない施工計画が可能になります。

〈メリット3〉建設費を確認しながら事業進捗が可能になる

設計段階から施工会社が参加することで、工法や仕様の検討と並行して概算費用や見積もりの精度を高めていくことができます。

そのため、設計の進行とともに建設費の全体像を把握でき、コストが想定を超えそうな場合には早期に仕様の見直しや調整を行うことが可能です。

予算に対して実現可能な計画を段階的にすり合わせながら進められるため、後から大きな設計変更が発生したり、予算超過で計画自体が頓挫したりするリスクを抑えることができます。

2-2.ECI方式のデメリット

次にECI方式のデメリットを3つ紹介します。

〈デメリット1〉発注者のコントロール力によって成果が左右される

ECI方式は、DB方式と分離発注方式の中間に位置する発注形態です。
設計と施工を柔軟に連携させられる一方で、発注者の判断や調整力によって、その成果が大きく左右されます。

うまく進めば両方式の「良いとこ取り」ができますが、調整が不十分だった場合には、かえって両方式の「悪い面」が表れる可能性もあります

そのため、発注者にはプロジェクト全体を適切にマネジメントする力が求められます。

〈デメリット2〉施工会社選定を誤るとECI方式の効果が少なくなる

ECI方式では施工会社の役割が設計段階から重要になるため、適切な建設会社を選定しないと、品質やスケジュールに悪影響を与える可能性があり、プロジェクト全体の品質が低下するリスクを抱えることになります。

そのため、発注する建物用途が得意、ECI方式の経験が豊富な建設会社を選ぶことが重要です。

〈デメリット3〉設計完了後に施工会社が確保できないリスクがある

建築コストが上昇し続けている局面では、設計完了時点で当初想定していたよりも工事費が膨らみ、施工会社が辞退してしまうケースがあります。

仮に発注者が長納期資材を先行発注していた場合、キャンセルが難しく、大きなリスクを抱えることになります。

また、施工会社の辞退によって一から選定をやり直す必要があり、スケジュールの遅延や、場合によってはプロジェクトの一時中断を余儀なくされる可能性もあります。

ECI方式を採用する際は、メリットを最大限に享受しながら、デメリットを最小限に抑えるために「コンストラクション・マネジメント会社を活用することが一般的」です。

コンストラクション・マネジメントを依頼することで、施工者選定や高度な技術に関する客観的なアドバイスを受け、意思決定をサポートしてもらうことができます。

ECI方式を検討している場合は、ぜひコンストラクション・マネジメントのプロである「プラスPM」にご相談ください。

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