PM/CM、建設コラム
本記事では、公共施設や工場などの建設プロジェクトで専門家の支援を検討している発注者の方に向けて、コンストラクション・マネジメント(以下、CM)方式のメリットについてできるだけわかりやすく解説します。
CM方式を導入する主なメリットは以下の6つです。
メリット | 内容 |
---|---|
専門家が発注者目線で建設プロジェクトを管理する | 発注者の伴走者としてCMr(コンストラクション・マネジャー)が全体を管理し、専門知識を活かして最適な意思決定をサポート |
建設コストの最適化が図れる | 設計段階からコスト意識を持った提案や市場価格に基づくチェックを行い、無駄なコストを抑える |
工事の遅延リスクを抑える | 施工性を考慮した計画提案や、進捗管理の徹底により、スムーズな工事進行と工期短縮を図る |
品質の確保・向上が期待できる | 発注者の求める品質基準を初期段階から明確にし、設計・施工を通じて一貫した品質管理を行う |
多様な発注方式の活用が可能になる | 建設プロジェクトに最適な発注方式(分離発注、一括発注、ECI方式など)を戦略的に選択・活用できる |
社内外への説明責任が果たせる | 進捗・コスト・意思決定理由をレポートで可視化し、発注者自身が関係者に納得感ある説明ができる体制を整えられる |
それぞれについて、解説していきます。
なお、「CM(コンストラクション・マネジメント)方式の概要」については、下記記事をご確認ください。
CM方式では、コンストラクション・マネジャー(以下、CMr)が発注者の伴走者としてプロジェクト全体を管理します。
そのため、発注者に専門的な建設知識がなくても、CMrの支援により意思決定を円滑に進めることが可能です。
CMrが設計事務所や施工会社と利害関係を持たない中立的な立場から、設計や見積の妥当性、工期や品質に関するリスクをチェックし、必要な交渉や調整も代行します。
特に複雑なプロジェクトでは、信頼できる専門家が発注者の立場で支えてくれるので、大きな安心材料となります。
建設プロジェクトの成功には予算を守るだけでなく、「いつ・どうコストを最適化するか」が重要です。
CM方式ではCMrが建設プロジェクトの初期から関与して戦略的なコスト管理を支援します。
CMrは各工種や資材の市場価格・動向を把握し、設計内容や見積もりが相場に適しているかを第三者の立場でチェックします。
また、発注者の要求に対して過剰なスペックになっていないかを見極め、コストの適正化をサポートします。
CMrは単に設計内容をチェックするだけではありません。
同等の性能や品質を維持しつつ、コスト抑制や省エネ化を実現できる材料・設備の選定や施工手順の改善提案(いわゆるValue Engineering)もCMrの重要な役割です。
発注者や設計者だけでは見落としがちなコスト最適化の余地を早期に発見し、設計変更や手戻りによる無駄なコストの発生を未然に防ぐことが可能になります。
建設プロジェクトにおけるスケジュールの遵守は、事業計画の達成や施設の早期稼働に直結する非常に重要な要素です。
CM方式を採用することで工事の遅延リスクを抑え、工期の短縮やスケジュールの確実性向上を期待できます。
建設プロジェクトでは、「施工に入ってから設計上の問題が見つかり、手戻りが発生する」といったケースが少なくありません。
CM方式を採用すれば設計の初期段階からCMrが関与し、事業性や機能面だけでなく施工性の観点でも設計内容をチェックします。
施工に支障をきたす可能性のある課題を早期に洗い出し、設計者と協議して改善することで、施工段階での手戻りやトラブルを未然に防止し、スケジュールの遅延リスクを大きく抑えられます。
CM方式では、CMrが発注者の立場で全体の工程を管理します。
CMrは現場の進捗を常に把握していることに加え、経験をもとにリスクを事前に洗い出しています。
そのため、トラブルの兆候が現れる前に具体的な対策を講じることが可能です。
万が一、遅れや問題が発生した場合も発注者の立場で迅速に関係者を集め、協議を主導して解決へと導きます。
特に分離発注において生じやすい「施工者間の連携不足や意見のすれ違い」であっても、CMrが中立的な立場で間に入って調整することで、トラブルの拡大を防ぐことができるでしょう。
上記のように工程管理をCMrに任せることで、建設プロジェクトを円滑に進行させ、計画どおりの工期内竣工が期待できます。
建設プロジェクトの成功には、コストやスケジュールの管理だけでなく、「品質」の確保が欠かせません。
CM方式は発注者が求める品質レベルを明確化し、設計・施工段階でその実現と向上に努める仕組みを提案します。
建設プロジェクトで求める「品質」は、発注者によってさまざまです。
CM方式では建設プロジェクトの初期段階からCMrが発注者と協力し、求める品質を具体的に言語化・整理します。
言語化や整理したうえで、設計図や仕様書に正しく反映されるよう、設計者との調整もCMrがサポートします。
CMrが介在することで関係者全員が同じ品質イメージを共有でき、設計から施工まで一貫した品質管理が可能になります。
CMrは建設技術や建材に関する幅広く最新の知識を持つだけでなく、専門性の高い施設である工場・病院・研究施設などの建設プロジェクトにおいても、豊富な知識や経験を持つ人材も多くおります。
したがって、建設プロジェクトの目的や求められる性能、予算、工期などを総合的に踏まえ、最適な工法や材料の選定について、発注者や設計者に専門的なアドバイスが可能です。
具体的には施設の用途や業種に応じて、次のようなサポートが行われます。
最適な工法・材料の提案 例
CM方式を採用することで単なるコストやデザイン優先の判断にとどまらず、長期的な品質確保や安全性、衛生性、メンテナンス性に優れた施設づくりが実現しやすくなります。
近年、国土交通省により建設プロジェクトにおける多様な発注方式の活用が推奨されています。
CM方式を採用する大きな特徴のひとつは、建設プロジェクトの特性や発注者の目標に応じて、多様な発注・契約方式を戦略的に選択・活用できる点にあります。
実際、建設プロジェクトにはさまざまな発注方式があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
発注方式 | 特徴 |
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設計・施工 分離発注方式 |
透明性が高く、コスト管理がしやすい一方で、設計と施工の連携不足による手戻りが起きやすい。 |
設計・施工 一括発注方式(デザインビルド〈DB〉方式) |
設計と施工が一体のためスピーディだが、施工者主導になることでコストの内訳がわかりにくく、発注者のコストコントロールが難しくなる。 |
ECI方式 | 施工者が実施設計段階から参画し、コストや工期を最適化できるが、発注者側の管理能力が求められる。 |
CM方式を導入することで、発注方式の選定段階から専門的な支援を受けることができ、無駄なやり直しやコスト超過のリスクを回避しながら、プロジェクト全体の効率と成果を高めることが可能になります。
CM方式では利害関係のないCMrが「工事の進捗」や「費用の使途」、「意思決定の理由」などを、定期的に分かりやすいレポートとして発注者に報告します。
例えば、「なぜこの工事会社を選んだのか」「この費用は何に使われたのか」といった内容を、経営者の皆様が求める項目を理解したCMrが、客観的な根拠とともに整理して伝えるため、プロジェクト全体の状況が明確に把握できます。
加えて、中立的な立場であるCMrの透明性の高い情報共有により、発注者はもちろん、社内関係者や出資者、監査担当者、議会、市民等に対しても納得感のある説明が可能となり、「説明責任を果たせる体制」が整います。
CM方式を採用することで「情報の見える化」と「意思決定の透明性」が向上し、発注者の皆様からの信頼を得ながら、円滑なプロジェクト運営につながります。
ここまで、CM方式を導入するメリットについてご紹介してきました。
ただし、建設プロジェクトは一つひとつ条件が異なるため、得られる効果や最適な進め方もプロジェクトごとに違ってきます。
「いつ相談すればいいのか」
「何を相談すればいいのか、まだイメージが固まっていない」
という方も、ご安心ください。
プラスPMでは経験豊富な専門家が発注者様の立場に立ち、状況を整理しながら、今何を考えるべきかを一緒にクリアにしていきます。
悩んでいる時間を行動に変えることが、プロジェクト成功への一番の近道です。
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