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生産工場・物流施設

【VE活用で工場建設コスト削減】品質とコストを満足する最適な生産工場・物流施設建設を実現する方法

※2022.8.17 改定(2020.2.12公開)

建設コストだけでなくエネルギー価格の高騰も続く中、「予算内で発注したい、しかし使い勝手が悪い施設や、汎用性の低い施設になってしまっては施設を整備する意味がない。」と頭を悩ませる事業主の方も多いと思います。では、どうすれば「安かろう悪かろう」の施設にならず、機能や品質を確保した上で予定どおり事業を進めることができるのでしょうか。

知っておきたい「バリューエンジニアリング(VE)」と「コストダウン(CD)」の違い

「建築コストを下げる」そう考える時、大抵の場合は「施工者に値下げを要求する」、「仕様を下げる」、「品質を落とす」、「面積を縮減する」ということを考えるのではないでしょうか。しかしそれは単なるコストダウン(CD)であり、予算内で建設することが目的になってしまい、本来の建設目的を果たせない施設となる可能性があります。

そうならないための手法として、今回ご紹介するバリューエンジニアリング(VE)があります。

建築におけるVEとは

「建築におけるVEとは:デザイン、品質及び管理・保守を低下することなく、最小のコストで必要な機能を達成するために、建設物、工法、手続、時間等の改善に注がれる組織的な努力」と定義されています

「VEによる民間技術の活用」建設省(現 国土交通省)パンフレットより引用

もう少し噛み砕くと、その施設にとって本当に必要とする機能に絞ることや、優れた技術の採用でコストを削減すること、発注方法の工夫により適切な競争環境を働かせること、リスク負担を削減することとも言えます。

コストを下げるために必要な機能を諦めるCDとは考え方の根本が異なるのです。
なおVEにおけるコストとは、イニシャルコストだけでなくランニングコストも含めたライフサイクルコスト(LCC)を指しています。

事例から見る!生産工場、物流施設におけるVE提案

ケース1:大空間の空調を効率向上させるVE

生産工場や物流施設には、メインとなる高天井の大空間が必要になります。ひと昔前であればその空間には空調など無く、夏は暑く冬は寒い環境でした。しかしES(従業員満足度)や従業員の健康管理、採用活動の観点から、新施設を建設する上で空調の無い労働環境というのはまずあり得ません。

大空間全体を空調空気で満たすのは、特に冬季においてエネルギー効率が悪いため、空間と作業場所を考慮した適切な空調方式を選択する必要があります。

一例として、天井にエア搬送ファンを設置する方法があります。冬季に上昇する空調暖気を吹き降ろし、作業空間に暖気を送ることで暖房効率を向上させることが可能です。全体を空調できる能力の空調機を設けることに比べ、イニシャルコストとランニングコストの両方を軽減することが可能です。ただし気流を生むので、清浄度を求めるラインや気流で動いてしまう製品や部品を扱うラインには不適です。

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ケース2:床仕上材の変更によるライフサイクルコスト削減

生産工場や物流施設の命ともいえる床の仕上げに関しても、必要とする機能とイニシャルコスト、そしてメンテンナンスコストと生産への影響を加味して最適な材料を選択する必要があります。

下表はある機械部品工場の塗床仕上材料を選定する際に使用した比較表です。一般的には左のエポキシ樹脂塗料を用いることが多いのですが、この工場ではフォークリフトを多用するので、摩耗や剥離が懸念されました。

そこでウレタン系塗床材(中央)と散布型塗床材(右)との比較を行いました。この比較項目にも機能とイニシャルコストだけでなくメンテナンスコストに影響する維持管理性を加えました。床を塗り替えるなど補修を行う際には、生産ラインを止めなければなりません。ですから、多少イニシャルコストがかかったとしても、維持管理の頻度やコスト、工期と生産に与える影響のバランスを勘案して材料を選定する必要があります。

kenzaihikaku.jpg ▲比較検討資料を作成/製品画像出典:株式会社エービーシー商会

某物流施設での長期的視点に立ったコスト削減

工事費は高くなるもののライフサイクルコストの観点で採用されたVEもあります。

その物流施設は天井高さが5.5mあり、天井照明もその高さに設置される設計でした。
お客様はその設置高さにメンテナンス面で懸念を示されました。照明機器の交換のたびに高所作業車を用意せねばならず、いくら器具が安くても非常に高い工賃がかかってしまうからです。

そこで当社は設計者と協力し複数の代替案を提案しました。
様々な照明メーカーの製品を照度や価格、耐用年数はもちろん、光束範囲も踏まえた具体的なレイアウトと台数、照度分布、そしてメンテンス性を比較しました。その比較では「単体のイニシャルは安いが、耐用年数が短く、台数が多いのは交換が大変だ」という意見や、「光束範囲は広いが照度ムラが大きく不快に感じるのではないか」など、様々な観点で議論がなされました。

結果的にはイニシャルコストは多少高めでも、耐用年数が長く台数が少なく済む照明器具がライフサイクルコストの点で優れているとして採用されました。

shomei.jpg▲某物流センター設計定例時に提示した資料

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失敗しないためのポイントは、建設目的を明確にすること

このようなVEの取組みの中で重要なのは複数案を比較することです。
そして、もっと重要なのは、「何を目的としてその機能が必要なのか」、「最も重きを置くのは何か」、つまり「建設目的」を明確にすることです。

上述の照明器具の比較検討を行った時は、お客様は「事業継続」を重視されていたため、ライフサイクルコストを優先されました。しかし「建設費を抑えることが何よりも重要で、ランニングコストは工夫次第で削減できる」と考える方もいらっしゃるでしょう。

または、「まとめて交換する方が楽で安上がりだから、5%の照明器具がダメになっても照度を確保できるよう建設費は高くなっても多めに設置しよう」と考える方もいるかもしれません。
その違いは目的の違いから来るものです。様々な観点での意見が出て判断を迷う場面では、この"建設目的"が明確であればあるほどプロジェクトは成功に近づきます。

コスト・品質を満足した理想の施設を実現するために

VEの大原則は品質を落とさずにコストを削減することです。しかし、コスト削減に注目するあまり、本来の建設目的を忘れてしまい気付かぬうちに品質を落として失敗したケースをよく耳にします。

またイニシャルコストだけでなく、ランニングコストも考慮しているでしょうか。建物のコストは建設時だけでなく、その目的や役目を終えるときまでのコスト(ライフサイクルコスト)で判断することが重要です。

VEの提案内容や採択判断が建設目的に照らして適切なものか、プラスPMでは「お客様の立場に立ち」検証・選択の支援を行います。目先のコストダウンではなく、お客様の事業を成功させるという視点で助言しています。もちろん、プラスPMは建築に特化した技術者の集まりですからVEをご提案するところからでもご支援可能です。

生産工場・物流施設の建築コストにお悩みの際には、ぜひ一度わたくしたちにご相談ください。


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