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病院の建設コストを決める3つのポイントを事例で解説!収益改善ができる病院建設計画を立てよう!

※2021.7.21 改定(2018.3.5公開)

新病院の建替計画の成功とは、すなわち収益を生み出すことができる病院を計画し、運用開始後の事業収支が計画時に見込んだ通りとなることです。
そして、それを実現するための重要なポイントの1つに、基本構想で設定した建設予算を厳守し、計画を進めるということがあります。

病院建設コストを構成する要素は、

  1. 規模
  2. 仕様(グレード)
  3. 発注戦略

の3点があります。
今回は、この3点について、どのようにコストを調整すべきか、事例を交えながら解説します。

適切な規模設定が重要

予算を厳守するためには、適切な規模設定が重要なことは以前にもご紹介しておりますが、改めてその重要性をお伝えします。
まず、新病院の規模を決める際は病院の機能などの特性を踏まえた上で、病院全体の面積分析、部門別の面積分析を行い、適正な規模設定を行う必要があります。
事業収支が成り立つ建設予算を設定しても、そもそも新病院の建設規模(延床面積)が過大になると、予算内で建設することが極めて困難になります。

面積分析で検討するポイントとしては、類似病院と比べ外来部門や病棟部門などが全体の延床面積に対して、面積比率が悪くなっている部分の見直しや、収益を生まない部分が著しく大きくなっている場合に、面積の適正化を行っていくことです。経営的な視点で規模を設定する必要があります。

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建設予算内で工事発注するには、基本設計段階のコストマネジメントが重要です!

規模設定を間違えてしまった事例

先日、急性期一般病院で、約120床の病院の移転新築を計画されている病院様から相談がありました。
「設計事務所と細かい部門別ヒアリングを積み重ねて計画をまとめたが、 概算コストを算出したところ、とんでもなくオーバーしてしまった。 改善の糸口として一体何から手をつけていいのか分からない。」 とお悩みのご様子でした。

基本設計を見ると、1床あたりの面積が95㎡でした。3次救急のあるような災害拠点病院であればまだしも、100床を超える程度の規模であれば、まずあり得ない数字です。また部門別の面積構成比も検証してみると、外来が15%程度あり、一般的病院の約9%という数字と比べ広すぎると思われました。

結局このケースでは、計画内容が予算と大幅に乖離しているため、基本計画からのやり直しとなりました。こうならないためにも、基本構想・基本計画段階で、経営計画と整合の取れた適正な規模設定、各部門設定を行うことが重要です。

コストマネジメントと仕様(グレード)設定

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設計段階では、コストと品質のバランスを保ちながら「ライフサイクルコスト」を意識し、予算内に仕様が収まるよう調整していくことをお勧めしています。
「ライフサイクルコスト」の一般的な定義は、建築工事費(イニシャルコスト)と、その建物の使用期間を通して必要な運営費・維持管理費等の費用(ランニングコスト)の総合計です。
ライフサイクルコストのうち、建設工事費は約20%と言われています。
その20%の建設工事費が予算に納まらず、やむなく設計図を変更し、その変更によって80%の運営費・維持管理費が上昇してしまうことがあります。
このような仕様設定とならないために、設計中は仕様と予算のバランスを適宜確認し、コストマネジメントを行っていくことが重要です。

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仕様設定を間違えてしまった事例

仕様設定を間違えてしまった事例として、窓ガラスを含むサッシの遮熱性能や、遮音性能の低減を行い、初期の建設費は下がったものの、光熱費は上昇してしまったというケースがあります。

またLEDの照明器具を蛍光灯の照明器具に変更すると、初期の建設費は下がりますが、光熱費は上昇します。
このような変更については採用すべきではないと分かっていても、どうしても採用しなければならない事態に陥ることもあります。

それは、工事発注時に不調・不落が起こってしまい、設計図書が完全に出来上がった状態からコスト削減をしなければならなくなった場合です。
この状態からでは確認申請などの行政手続も進んでいるため、構造やインフラ等に係るコスト削減のための変更は採用することが困難です。
もし採用した場合は、確認申請のやり直しが必要となり、竣工(運用開始)スケジュールが大幅に遅れることになります。

そこで、申請に影響が少ない設計変更項目がコスト削減対象となりますが、この時点で行える設計変更は、建物性能を落とす項目がほとんどです。
コストダウン効果はほんの数パーセントしかないのに、その変更によりライフサイクルコストが上昇するという残念な結果になっている案件は、意外と多く存在しています。

建設コストは基本設計が完了した時点で80%が確定すると言われています。
上記は、建設コストのマネジメント不足により失敗した事例ですが、このような事態を回避するためには、設計の初期段階からコストの見える化を行い、予算との乖離について、適切な対策を打つコストマネジメントが重要です。

発注戦略によってトータルコストが大きく変わる

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発注戦略によって、トータルコストが大きく変わります。
発注のポイントは2つあります。

  1. 多様な発注方式を活用して、その建設事業に最適な発注方式を採用すること
  2. 発注後に発注者とゼネコン間で、トラブルが起こらないような契約条件を詳細に詰めておくこと

1つ目の多様な発注方式には、「設計施工分離発注方式」、「デザインビルド方式(DB方式)」、「ECI方式」など様々な手法があります。

これらの方式をうまく活用することで、コストダウンが図れます。
例えばデザインビルド方式は、設計施工を一括でゼネコンに発注する方式です。発注時にゼネコンのノウハウを最大限に発揮したコストダウン提案をもらい、提案の採否を発注者が行うことでコストダウンを図りながら発注する方法です。

2つ目にあるトラブルが起こらないような契約書を結ぶためには、契約締結後に起こり得ることに対して事前に取り決めをしておくことです。
例えば、「設計変更の金額を提示するタイミング」、「内訳明細書の提示の有無」、「設計変更時は契約単価か、または時価なのか」。このあたりを明確にして、お互い合意の下で設計変更を進めていく必要があります。

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発注戦略を間違えてしまった事例

以前、急性期一般病院で、約200床の病院の移転新築を計画されている病院様から相談がありました。
デザインビルド方式で発注を試み、ゼネコン3社から設計施工の提案をしてもらい、決定した1社が設計を進めていたとのことでした。
契約時点では設計費と施工費の総額を提示してもらい、その条件で設計施工を進めていましたが、設計を進めるうちに数億円もの追加金額が発生すると工事着工前に提示されたようです。

なぜこのようなことになったのでしょうか。
まず、設計の進捗に合わせて、設計変更による増減金額を確認できる仕組みとなっていなかったことが一つです。また、設計施工契約時には総額で合意しており内訳明細書がなかったので、何がどのように変更となって追加金額が発生したのか確認できない状態となっていました。
これでは、発注者側がゼネコンに対し疑義を持つのも分からなくはない状況です。しかし、積算を行うと本当に追加金額が発生しているかも知れないので、一概にゼネコンが悪いという訳でもありません。
契約書において、設計変更に対する契約条件が曖昧だったために、このような事態となってしまったのです。
その結果、予算を大幅にオーバーすることになりました。

設定した建設予算を厳守し、計画を進めよう

病院建設においては様々な要素がコストに影響しますが、当初設定した予算を厳守して進めることが重要です。
それを実現するために、

  • 適正な規模設定
  • コストマネジメントと仕様(グレード)設定
  • 発注戦略の構築

という3つのポイントを重視して、新病院の建設を成功していただければと思います。

プラスPMのコンストラクションマネジメントはお客様側の立場に立ち、コスト、品質、スケジュールの最適化による建設事業の推進支援を行います。
建設コストでお悩みの際には、多数のコストマネジメント実績のあるプラスPMに、ぜひ一度ご相談ください。


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