社会福祉法人伸こう福祉会
足立聖子 様社会福祉法人伸こう福祉会は、神奈川県内で、介護事業および保育事業を手がけている社会福祉法人です。設立は1999年。2013年現在、従業員数は830名、売上高は約39億円。保有(または管理)している施設数は高齢者事業所36箇所、保育事業所8箇所です。
今回は、プラスPMが建設コンサルティングを行った、保育園と老人ホームのプロジェクトについて、社会福祉法人伸こう福祉会理事長の足立聖子様に、お話をうかがいました。
足立:伸こう福祉会では、保育園や老人ホームを建設するときの「設計」と「設計事務所への依頼時の、第三者としての助言」を、プラスPMに依頼しました。
前理事長の口癖は、「総合建設会社に設計・施工を任せきりにしてはいけない」でした。「総合建設会社任せにすると、最後はコントロールができなくなる。そうならないよう、大事な案件は第三者を参画させるべき」とよく言われていたのです。
これまでプラスPMには、小さな相談から大きなプロジェクトの総合監理まで、さまざまな仕事を依頼しています。具体的には、次の2つです。
開設日:2007年1月/定員:114名/
併設事業:病後児保育、休日(日祝日)保育/認証:ISO9001、ISO14000取得
足立:これは藤沢市に保育園を建設するプロジェクトです。私たちから藤沢市に「認可保育園を建築・運営したい」と提案し、認められたものだったのですが、承認されるまでに相当の時間がかかってしまったため、設計・施工に当てられる期間がわずか1年しかありませんでした。
通常この規模の保育園であれば、設計開始から竣工まで2年はかかります。今回はその半分。行政の仕事は期日内の計画実行が原則ですので、交渉の余地もなく、きわめて厳しいスケジュールでした。
そこで、プラスPMに相談しました。担当のAさんに連絡すると、早速複数の設計事務所に掛け合ってくださいました。しかし、どの事務所からも良い返事がなかったので、頭を抱えることになったのです。そこにプラスPMから提案がありました。
それは、「設計作業そのものをプラスPMに依頼していただけませんか」というものだったのです。つまり、プラスPMが「設計事務所のお目付役をする」のではなく、「設計そのものを行う」。合わせて施工の際は、総合建設会社の管理もプラスPMが行う。そうできれば自分たちが設計したものなので、的確な指示を行うことができ、急な変更にも対応することができます。
足立:「短工期」「高品質」「低価格」が実現できたのは、プラスPMと共に、バリューエンジニアリング(VE)を入念に繰り返したからです。このVEの考え方は、このプロジェクトを通じて、プラスPMから学びました。
今は、どんな案件でも、設計・施工中に何か問題が起きたら「VEしましょう」が合い言葉です。ちなみに「VE/CD」という略語もあります。これは「バリューエンジニアリングとコストダウン」という意味です。
バリューエンジニアリング(VE)とは、獲得したい価値(バリュー)を明瞭に認識することで、品質を落とさずコストダウンを実現するための手法です。
たとえば、ある仕様を実現する際に、非常に高コストになったとします。それに対して、設計事務所や総合建設会社に、「コストを下げろ!」と反応すると、手抜き工事や品質低下につながりかねません。
そこでまず立ち止まり、「そもそもその仕様によって、自分たちは、どんな価値を得たいと考えていたか」「得たい価値」を明瞭にすることが大切になります。それができれば、「別の簡単な仕様で良いかも、同じ価値が得られるかも」と、生産的な方向へ進みます。「仕様ありき」ではなく、「得たい価値ありき」で柔軟に発想する、これがバリューエンジニアリングの考え方です。
足立:この案件ではまず、老人ホームで多くの実績を持つ、ある有名な設計事務所を起用することにしました。しかし、一方で、ひとつの設計事務所に全てを任せてしまうのは不安だなとも考えていました。 何が不安かというと、まずは、コストが高くなってしまわないかということでした。有名な設計事務所だったので設計料が高いことは良いのですが、合わせて建設コストまで高騰してしまうことは避けたかったのです。そこで、プラスPMであれば、きちんとコストコントロールしていただけるのではないかと考えたのです。
実績ある有名な設計事務所が、理想論に基づいた設計を提案してくるのはよくあることです。しかし、それをそのまま受け入れるとコスト高騰を招きます。予算はいつもタイトですし、老人ホームの運営は公益性が高い事業なので、事業の健全な運営も求められます。そのためにも、やはり建設費用は適切な時期までに回収する必要があります。
「理想と現実のバランス」を取るためにも、やはりバリューエンジニアリングの手法を効果的に使うことが有効です。
たとえば、「介護士が入居者をお風呂に入れる設備」を考えると、入居者のプライバシーを考慮すると、理想的には一室にひとつの浴槽です。しかし、それでは費用とスペースの面で無理が出てきます。また、介護士の人数からも、すべての個浴をサポートすることが難しかったりもします。
そこで現実的な案を考えていくと「一室に2つの浴槽(浴槽間はカーテン間仕切り)」という設計を導き出すことができます。これであれば、ひとりの介護士が二人の入居者を段取りよく入浴させることができる。浴室数は半分で済むので、費用もスペースも大幅に節約することができます。ここでも獲得したい価値を考えながら、バランスをどう取るかがポイントとなります。
足立:当たり前のことですが、実績のある設計事務所は、自分たちが持っているやり方をベースに進めることを望まれます。しかし、私たち伸こう福祉会は、どちらかというと「注文の多い施主」なので、任せ切りにはしたくありませんでした。だからこそ、ここでもプラスPMに介入していただいて、私たちの希望が通るように、設計事務所と交渉をしていただきたいと考えました。結果的には、プラスPMに入っていただいてよかったです。
設計がはじまると、やはり意見が相違することが何度かありました。たとえば、インテリアの色について、私たちは「白」でまとめるのが好きです。これは完成後の写真ですが、このように「白」の中に、家具や小物で色味を加えていき、全体の雰囲気を微調整していきたかったのです。
ところが設計事務所は「老人ホームで白は冷たい雰囲気がする」という意見でした。もちろんその考えも分からないでもありませんが、私たちは妥協できません。床材についても同じように白か木目かで、意見がぶつかりました。その際も、プラスPMに間に入ってもらい、「色が白で、かつ汚れにくく、かつ高コストでない床材料」を複数個提案していただきました。そうしたプロセスをきちんとつくることで、設計事務所にも理解を得ることができました。
この件を通じて、改めてプラスPMは、設計事務所としても優秀だと感じました。デザインについても、建築についてもよく知っています。コスト削減も徹底的に追求してくださいます。それでいて、プラスPMには「芸術家的こだわり」や「エゴ」はほとんど見られません。 デザインの基本方針は、施主の意向を受け入れてくださり、その上で「そのデザインを実現するなら、この材料を」と、積極的な提案もいただくことができるのです。
足立:設計事務所や総合建設会社にお金を払い、さらに建設コンサルティングにお金を払うなんて、無駄だと思う人も少なくないと思います。しかし結果として、プラスPMのような「お目付役」に間に入っていただいたほうが、自分たちの望み通りのものがつくれ、予算やスケジュールも予定内に収まることになります。
中には、自分たちはクライアント、発注者なのだから、何かあればお客として堂々と意見し、意思を貫けば良いと思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、実際の建設工事がはじまると、自分たちの意思を通すことは、大変難しくなっていきます。これまで多くの場数を踏んできた設計事務所や総合建設会社には、自分たちのやり方があるものです。そこに自分たちの意思を通したい場合は、同様に場数を踏んできたプラスPMのような第三者を入れ、助言をしてもらえれば、状況は変わります。プラスPMへ支払う費用は、自分たちの会社が「建設準備室長(プロジェクトマネージャー)」を一年間雇うと考えれば良いのではないでしょうか。
プラスPMには、これまで何度も助けていただきました。これからも、お世話になることと思います。プラスPMといっしょに話し合いながら、「いいものをつくっていく」のは、私にとってはとても楽しい時間です。これからも、よろしくお願いします!
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