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「半導体製造・関連(材料・製造装置)の工場」建設の基礎知識|建設費用や補助金・助成金制度、ポイント、流れを簡単解説

本記事は、はじめて「半導体製造・関連(材料・製造装置)の工場の建設担当」になった方に向けて、半導体製造・関連の工場建設を検討する際に必要な基礎知識についてわかりやすく、且つ網羅的に解説しています。

1.半導体製造・関連工場の建設費用

半導体製造・関連の工場建設の費用は、規模や設備により数億~数兆円規模に及びます。

特に、「半導体」や「関連する材料・製造装置」の製造には高度なクリーンルームや特殊設備が必要となるため、建設費用が高額になりやすいのが特徴です。

また、近年の半導体需要の拡大に対応するため、下図のように日本国内で新たな半導体製造・関連の工場建設が活況です。
加えて、国内の大型建設プロジェクト等によって建設費用も上昇傾向にあります。

<図 半導体製造・関連の国内投資案件>

出典:経済産業省ウェブサイト|https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0011/handeji_reviesd.pdf

1-1.「半導体製造・関連の工場」の建設事例

半導体製造・関連の工場建設には莫大な投資が必要です。
実際に現在建設中の半導体製造・関連の工場には、数千億円以上の投資がされています。

【例 半導体製造・関連の工場の投資額】※2025年2月時点
事業者名 キオクシア マイクロン jasm
設備投資額 約4,500億円 約5,000億円 約2兆円
主要製品 3次元フラッシュメモリ DRAM ロジック半導体
初回出荷
予定
2025年9月 2025年12月~2026年2月 2027年10月~12月
場所 三重県四日市市
岩手県北上市
広島県東広島市 熊本県菊池郡菊陽町

参考:経済産業省ウェブサイト|半導体・デジタル産業戦略の現状と今後

2.半導体製造・関連の工場建設における補助金・助成金制度

日本の半導体産業における補助金・助成金政策は、経済安全保障の観点からも重要な位置づけとなっています。

2-1.補助金・助成金制度の動向

政府は2021年度から2023年度にかけて約4兆円の補助金・助成金を確保し、半導体製造・関連の工場の新設や増設を積極的に支援してきました。
特に、次世代半導体の国産化を目指す企業「ラピダス」には、1兆円弱という過去に例のない規模の補助金が投入されることが決定しています。

2024年11月22日に閣議決定した経済対策の中で、

2030年度までに半導体や人工知能(AI)分野に対して、総額10兆円規模の公的支援を行う方針が示されました。

引き続き、半導体製造・関連の工場建設において補助金や助成金を活用できる見込みです。

2-2.補助金・助成金の事例

2024年までは、下記の半導体関連事業が支援対象となっており、各事業に応じた要件に基づいて補助・助成額が決定されます。

政府の支援対象となる半導体関連の品目

  • 従来型半導体(パワー半導体、マイコン、アナログ)
  • 半導体製造装置 等
  • 半導体部素材 等
  • 半導体原料
【例 支援対象となった事業者と最大助成金額】
事業者名 最大助成金額 認定日
イビデン株式会社 約405億円 令和5年4月認定
岩谷産業株式会社
岩谷瓦斯株式会社
約10.5億円 令和5年7月認定
ラサ工業株式会社 約1.6億円 令和5年7月認定
カナデビア株式会社 約9億円 令和6年11月認定
三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社 約80億円 令和6年11月認定
東洋合成工業株式会社 約70億円 令和6年11月認定
三菱ケミカル株式会社 約37億円 令和6年11月認定

参考:経済産業省|半導体

半導体の安定供給を目指す事業者は、供給確保計画を作成し、経済産業大臣の認定を受けることで支援を得られるようになります。

2025年1月現在、具体的な募集は行われていませんが、補助金・助成金を希望される場合は、経済産業省に問い合わせをするとよいでしょう

3.半導体製造・関連の工場建設「4つのポイント」

他の工場と異なり、半導体製造・関連の工場建設には以下大きく4つの特殊な要件があり、しっかりと押さえておく必要があります。

3-1. 微粒子の混入を防ぐ「クリーンルーム」が必要

半導体および関連製品の製造では、わずかな微粒子の混入でも不良品リスクが高まるため「クリーンルーム」が不可欠です。

超高性能フィルターと空気循環システムによって異物の侵入や内部の微粒子を迅速に排除し、製造工程の精度と品質を維持します。

こうした高度な清浄環境を安価かつ高機能で、さらにメンテナンス負担を抑えて構築するには、専門的なノウハウが必要です。

3-2.精密な「温湿度管理」が必要

半導体製造・関連の工場では、製造環境の安定性が製品品質に直結するため、精密な温湿度管理が必要です。

温度や湿度のわずかな変化でも製造プロセスに影響を与え、不良品の発生リスクを高める可能性があります。
そのため、工場内では高性能な空調システムを導入して、厳密に制御しなければなりません。

3-3.製造装置の安定性を保つ「振動対策」が必要

半導体製造・関連の工場では、わずかな振動でも製造装置に影響を与え、製品の品質や精度を損なう可能性があるため、「除振」や「防振」の技術が不可欠です。

除振は外部からの振動を遮断する技術を指し、防振は工場内で発生した振動が周囲に伝わらないように抑える技術を指します。

免震構造や防振台の設置、基礎構造の強化などにより、工場内の振動を最小限に抑える工夫が求められます。

3-4.大量の「電力供給と水資源」の確保が必要

半導体製造・関連の工場では、製造装置やクリーンルームの稼働に膨大な電力と大量の水が必要です。

安定した電力供給の確保が不可欠であるほか、あらゆる不純物を取り除いた超純水の使用量が1日数十万トンに達することもあり、大容量の水源と効率的な水処理設備が求められます。

そのため、エネルギー効率の高い設備の導入や、水の回収・再利用システムを活用した持続可能な運営が必要です。

4.半導体製造・関連の工場建設で「よくある課題」とコンストラクション・マネジメントによる「解決例」

半導体製造・関連の工場建設は、高度な技術と精密な施工が求められるため、コンストラクション・マネジメント(CM方式)を導入することで、下記のような課題を解決することができます。

「半導体製造・関連の工場建設」において、よくある課題

  • スケジュール・工期の遅延リスクを懸念している
  • 高度な技術要件への対応に不安がある
  • 生産機器や配管配線等の調整が複雑で、取りまとめが難しい
  • 多額の投資が必要になるが、適正コストがわからない

コンストラクション・マネジメントとは、建設プロジェクトにおいて建設・建築に造詣の深い専門家が発注者側の立場で、プロジェクト全体をマネジメントする手法です。
コンストラクション・マネジメント会社が、設計・施工の調整、コスト管理、工程管理、品質管理、安全管理などを担い、建設プロジェクトをサポートします。

以下にコンストラクション・マネジメントでの解決例を紹介します。

〈よくある課題1〉スケジュール・工期の遅延リスクを懸念している

〈コンストラクション・マネジメントを導入すれば〉
各工程のスケジュールを詳細に管理します。
半導体および関連製造分野では商品の付加価値が非常に高く、日毎の生産高や売上、利益は他の産業の比ではないです。
そのため、工程遅延に対する利益損失も甚大であり、厳格なスケジュール管理が求められます。

〈よくある課題2〉高度な技術要件への対応に不安がある

〈コンストラクション・マネジメントを導入すれば〉
建設される工場の不具合や設備の抜け漏れを防ぎ、品質を確保できます。
設計・施工の専門知識に加え、高度な技術要件を理解しているからです。

〈よくある課題3〉生産機器や配管配線等の調整が複雑で、取りまとめが難しい

〈コンストラクション・マネジメントを導入すれば〉
関連する工事や装置との責任範囲の調整を担います

半導体製造・関連の工場では、多くの生産機器や各々をつなぐ配管配線、建築側から供給するユーティリティなどの調整が煩雑となります。
しかし、CM会社が介在することで業務の抜け漏れが無くなり、スムーズにプロジェクトが推進します。
また、事前の細部にわたる確認により、トラブルを未然に防ぐことができます。

〈よくある課題4〉多額の投資が必要になるが、適正コストがわからない

〈コンストラクション・マネジメントを導入すれば〉
計画段階の予算作成から支援を行い、「コストの最適化」が提案可能です。
また、追加工事見積の妥当性確認や機能を維持したままの減額提案など、施工中においても適正なコストでのプロジェクト推進を支援します。

プラスPMは、半導体製造・関連の工場の新設・拡張における施主様の負担を軽減し、最適な結果を実現するプロフェッショナルです。
半導体製造・関連の工場建設において、「高度な技術要件への確実な対応」「コストの最適化」「スムーズな計画と施工」を実現したいなら、ぜひご相談ください!

コンサルティングを導入することで得られるメリットやサポートの流れについては下記で紹介しています。

生産工場・物流施設 建設、コンストラクションマネジメント
プラスPMの強み
導入の流れ・費用

5.半導体製造・関連の工場建設の流れ

半導体製造・関連の工場建設には、各段階での綿密な計画と高度な専門性が求められます。
ここでは半導体製造・関連の工場建設の流れを解説します。

〈STEP1〉基本計画を立てる

半導体製造・関連の工場建設は、まず適切な土地の選定から始まります。
安定した電力供給や交通アクセスの良さは重要な条件であり、大量の水資源を確保できる地域であることも不可欠です。

また、この段階は「事業戦略」や「投資金額」、「スケジュール」を具体化し、慎重に検討を進める期間でもあります。

〈STEP2〉工場の設計を行う

工場の設計段階では、「基本設計」と「実施設計」を通じて、工場全体の具体的な構造と機能が計画されます。

5-2-1.基本設計

基本設計では、詳細な技術的決定は行わず、工場の方向性を明確にすることを目的としています。

例えば、工場のレイアウトやクリーンルームのクラス、製造装置の配置を計画し、製造環境に必要な要件を具体化します。

5-2-2.実施設計

実施設計は、基本設計を基に具体的な建設計画を進める重要な段階です。

設備や構造物の詳細な図面を作成し、使用する材料や機器の仕様を確定します。
また、施工に向けた計画を立て、実際の工事がスムーズに進むよう準備を整えていきます。

基本設計の内容を現実の建設作業に反映させる役割を担います。

〈STEP3〉工事施工を行う

基礎工事や建物の構築、内装工事、製造装置の設置といった工程を経て、工場が完成します。

特に、クリーンルームの設置や温湿度管理システムの導入、製造装置や検査機器などの設備の設置は、製造効率や生産性に直接影響を与えるため、慎重に進められるのが特徴です。

そのため、半導体製造・関連の工場建設は一般的に長期化する傾向があります

〈STEP4〉工場の引き渡しを受ける

施工が完了すると、「試運転」と「検査」が行われます。
設置された設備が正常に動作しているか、また設計通りに施工され、設備が適切に機能しているかを確認します。

すべての基準を満たした後、工場は引き渡され、正式に稼働を開始します。

6.半導体製造・関連の工場建設の事例

ここではプラスPMが支援した半導体製造・関連の工場の「建設事例」を紹介します。

半導体製造・関連の工場の建設支援事例

  • 株式会社トリケミカル研究所の南アルプス事業所
  • 日本発条株式会社のマレーシア新工場

【支援事例1】 株式会社トリケミカル研究所の南アルプス事業所

建設プロジェクトの課題

  • 少しでも早く機能的な新工場を操業させたい

トリケミカル研究所様の新工場を山梨県南アルプス市に新築した事例です。

半導体需要の高まりを受け、「早期に機能的な新工場を操業させたい」というご要望に応え、生産コンサルと協力して短期間で基本計画を立案しました。
また、旧来の生産方法の改善計画や設計施工者選定を支援しています。

用途 半導体関連の生産
所在地 山梨県南アルプス市
延床面積 約5,500㎡(7棟合計)
構造 鉄骨造/木造・2階建
株式会社トリケミカル研究所
公式サイト
https://www.trichemical.com/

【支援事例2】 日本発条株式会社のマレーシア新工場

建設プロジェクトの課題

  • 半導体需要の高まりに合わせ、工場を増築したい

日本発条株式会社様のマレーシア現地法人(NHK MANUFACTURING (M) SDN BHD様)の工場を、マレーシア・セレンバンに新築した事例です。

新規工場の増築において基本構想の段階から参画して、「フィシビリティ・スタディ」や「施工者選定、コスト評価」、「基本設計・実施設計のサポート」、「工事中の常駐体制による品質監理」など、総合的な支援を行いました。

用途 パワー半導体に使用される金属基板の製造
所在地 マレーシア セレンバン
延床面積 15,725.9㎡
日本発条株式会社 公式サイト https://www.nhkspg.co.jp/

参考:PlusPM Consultant 「実績」|NHK新工場プロジェクト(外部サイト)

プラスPMは国内外の建設プロジェクトにおいて、豊富な経験と専門的なノウハウを活かし、計画段階から完成まで一貫したサポートを提供しています。

特に、言語や文化の壁、異なる法規制など、海外特有の課題に対しても柔軟に対応し、プロジェクトの成功を実現します。

「初めての海外進出で不安がある」「現地でのコストや施工管理に困っている」といったお悩みも、ぜひご相談ください。
お客様の立場に立った最適な解決策をご提案し、円滑なプロジェクト進行をお約束します。

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