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生産工場・物流施設

食品工場を建設する際に重要な「4つの検討ポイント」と建設事例の紹介

本記事は、はじめて「工場建設担当」になった方に向けて、食品工場を建設する際にしっかり検討しなければならない、重要な「4つのポイント」について解説しています。

1.食品工場を建設する際に重要な「4つの検討ポイント」

食品工場の建設を検討する際、まず下記の4つのポイントについてしっかり検討しましょう。

4つの検討ポイント

  • 施設の衛生管理
  • 食品安全管理手法
  • 労働環境
  • 立地

それぞれの検討ポイントと対策方法について解説します。

1-1.衛生管理に対応した工場を作る

食品工場は、消費者が口にするものを製造するので、当然のことながら衛生管理が何よりも優先されなければなりません。

食品工場を建設する際の「衛生管理」の対策は以下のとおりです。

【衛生管理について】
対策 内容
ゾーニングを明確にした工場を作る 清潔度のレベルに応じて優先順位を設け、工場内を「3つのゾーン」に区分する
「空気の流れをつくる」設計にする 最も清潔な区域から清潔度の低い区域に向かって空気が流れる設計にする。
交差汚染を発生させない動線を作る 各ゾーンを材料や製品が一方通行で流れるように設計し、従業員がゾーンを極力またがないようにする。

【対策①】ゾーニングを明確にした工場を作る

食品工場全体を常に衛生的に保つことはもちろんですが、さらに清潔度のレベルに応じて優先順位を設け、工場内を「3つのゾーン」に区分することが一般的です。

【ゾーニングの区分】
区域 内容
清潔区域 製造工程の中で、調理された食品を加工したり冷やしたりして最終的に包装されるまでのエリアを「清潔区域」とされます。
製造工程の中で最も清潔な状態を保つことが求められるエリアです。
準清潔区域 計量や仕込み、調理などを行う製造エリアは「準清潔区域」とされます。 
外部からの異物の侵入を防ぐための前室と、清潔区域への直接的な出入りを防ぐための前室の2つを設置する必要があるエリアです。
汚染区域 入荷室や出荷室、梱包室、保管庫、下処理室などは外気に面する「汚染区域」とされます。
外部からの入ってきた段ボールの開封や、泥の付いた食材などの洗浄もこのエリアで行います。
虫や塵、埃の侵入を防ぐ工夫はされますが、清潔度は低いエリアです。

【対策②】「空気の流れをつくる」設計にする

食品工場では適切なゾーニングや前室を設けても、空気の流れによって清潔区域に汚染が及ぶリスクがあります。

そのため、最も清潔な区域から清潔度の低い区域に向かって空気が流れる設計が必要です。

清潔区域を陽圧化し、空気の逆流を防ぐことで、クリーンな環境を維持します。
また、工場内の温度や、湿度が上昇する部屋では「空気を外部に逃がす仕組み」を取り入れるなど、全体のバランスを考慮した設計が重要です。

【対策③】交差汚染を発生させない動線を作る

交差汚染とは、異なるエリアや物質間で汚染物質が移動し、清潔な環境や製品に影響を与える現象を指します。

工場内では交差汚染がさまざまな場所で発生する可能性があるため、

各ゾーンを材料や製品が一方向で流れるように設計し、従業員の動線が交差しないようにすることで、汚染物質の移動を防ぐことが重要です。

また、効率的で最短ルートとなる動線計画を立てることも必要です。

1-2.多様な食品安全管理手法に対応する

食品製造業を営む方にとって、「食の安全」を確保するための「食品安全衛生管理」は非常に重要です。

近年、食品規格の制度化に関する取り組みが世界的に活発化しているため、内容をしっかりと把握しておくことが求められます。

【食品安全管理手法について】
対策 内容
HACCPへ対応する 日本では食品衛生法の改正により、2021年6月からすべての食品関連事業者にHACCPの導入が完全義務化。
国際基準の食品安全マネジメントシステムに適応する FSSC22000などの国際基準に対応することで、国内外での取引拡大や信頼性の向上につながる。
FSMA(米国食品安全強化法)に対応する アメリカへの食品輸出を目指す食品工場では、FSMA(米国食品安全強化法)への対応が必須。
ハラール認証に対応する イスラム圏への食品輸出を目指す場合、ハラール対応が必要。

【対策①】HACCPへ対応する

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、

食品事業者が食中毒菌による汚染や異物混入といった問題を防ぐために、原材料の入荷から製品の出荷までの全工程を管理する衛生管理の方法です。
特に重要な工程を重点的に管理することで、食品の安全を確保します。

日本では食品衛生法の改正により、2021年6月からすべての食品関連事業者にHACCPの導入が義務付けられており、HACCPに対応した工場を建設する必要があります

なお、HACCP導入にかかる費用を支援するため、国や自治体が補助金制度を用意している場合があるので、事前に確認して活用しましょう。

参考:厚生労働省|HACCP(ハサップ)

【対策②】国際基準の食品安全マネジメントシステムに適応する

近年、食品の流通が国内外で複雑化し、食品安全のガイドラインだけでなく、国際的に認められた食品安全規格への対応が求められています。

食品工場を新たに建設する際には、

国際規格への対応を見据えて計画を立てることで、国内外での取引拡大や信頼性の向上につながります。

【食品安全マネジメントシステムの難易度イメージ】

特に、「ISO22000」や「FSSC22000」は国際取引の場でも非常に高い信頼を得ており、これらの認証を取得していない商品とは取引を行わない企業も存在するので、注意が必要です。

【対策③】FSMA(米国食品安全強化法)に対応する

アメリカへの食品輸出を目指す食品工場では、FSMA(米国食品安全強化法)への対応が必須です。

FSMAでは、予防コントロール(PCHF)の導入やトレーサビリティの確保が求められ、工場設計の段階から衛生的な動線設計や異物混入防止設備の導入が必要です。

また、PCQI(予防管理適格者)の資格を持つ担当者の配置が義務付けられており、専門機関のセミナーを活用して対応を進めることをおすすめします。

【対策④】ハラール認証に対応する

イスラム圏への食品輸出を目指す場合、ハラール対応が必要です。

ハラールとはイスラム法で「合法」を意味します。
輸出先がイスラム圏である場合、輸出先の国の認証機関や公認の認証団体でハラール認証を取得する必要があります。

工場設計では「ハラール食品専用の製造ラインを設ける」、「非ハラール製品と工程を分離する」、「衛生管理を徹底する」など、ハラール基準を満たす環境を整備することが重要です。

また、従業員への教育や認証取得に向けた準備も必要になります。

参考:農林水産省|国内の認証機関

1-3.食品工場の新設を機に労働環境を見直す

食品工場は衛生管理や体力が必要な作業が多く、「働きづらい」というイメージを払拭したいとお考えの方も多いです。

従業員が健康的かつ快適に働ける環境を整えることで、人材の確保や定着率の向上を図ることができます。

【労働環境について】
対策 内容
従業員がストレスを感じない衛生管理手法を取り入れる 誰もが「直感的」に「無意識」で正しい衛生管理を実践できる環境を整える。
作業環境に適した温湿度管理で従業員を守る 食品の品質維持に適した温湿度管理はもちろん、従業員が快適で安全に働けるための温湿度管理にも対応する。
作業の自動化を積極的に導入する 従業員が行う重労働や単純作業を減らし、体力的な負担や繰り返し動作によるケガのリスクを減らす。

【対策①】従業員がストレスを感じない衛生管理手法を取り入れる

食品工場では、従業員全員が衛生管理の手順を確実に守ることが製品の品質や安全性に直結しますが、複雑な手順や分かりにくい動線ではルールが徹底されにくく、従業員もストレスを感じます。

そのため、工場の新設を機に、誰もが直感的で無意識に正しい衛生管理を行える仕組みを取り入れることが重要です。

例えば、作業区域ごとに分かりやすい表示を設置したり、設備の配置を工夫したりすることで、自然と正しい手順が守れるような環境を整えることができます。
さらに、年齢や国籍、文化が異なるスタッフでも理解しやすい、シンプルで視覚的な指示を取り入れることも効果的です。

【対策②】作業環境に適した温湿度管理で従業員を守る

作業環境に適した温湿度管理は、従業員の健康や作業効率、食品の品質維持に欠かせません

高温環境では、調理機器から発生する熱や湯気を効率的に排出するために局所排気装置を導入し、空調効率を高めることが重要です。
一方、冷蔵工場では、食品の品質を保ちながら従業員を暖めるスポットヒーターや保温ウェアを活用し、寒さによる負担を軽減します。

上記のような対策を組み合わせることで、快適で安全な作業環境を実現できます。

【対策③】作業の自動化を積極的に導入する

食品工場では、作業の一部を自動化することで労働環境を大きく改善できます。

例えば、製品の梱包や原材料の運搬を自動化することで、従業員が行う重労働や単純作業を減らし、体力的な負担や繰り返し動作によるケガのリスクを軽減できます。

また、自動化されたラインを導入することで、均一な品質を保ちながら作業効率を向上させることが可能です。

1-4.食品工場に適した立地を選ぶ

食品工場の立地選定は、工場の運営効率や製品の安全性に大きく影響します。

【食品工場の立地について】
対策 内容
交通アクセスと物流の利便性の高い立地を選ぶ 輸送時間を短縮して物流コストを削減するとともに、納品スケジュールの安定にもつながる。
製品によっては水質と水資源に恵まれている立地を選ぶ 食品加工や洗浄工程では大量の水を使用するため、清潔で安定した水源を確保できる場所がのぞましい。
周辺環境を慎重に確認して選ぶ 煤煙や塵埃などが発生する工場が近隣にある場合、風向きや距離によって食品工場の衛生環境に影響を与える可能性がある。

【対策①】交通アクセスと物流の利便性の高い立地を選ぶ

食品工場では、原材料の搬入や製品の出荷を効率化するため、高速道路や幹線道路へのアクセスが良い場所を選ぶことが重要です。

輸送時間を短縮して物流コストを削減するとともに、納品スケジュールの安定にもつながります。
また、農業地帯や漁港に近い場所を選ぶことで、新鮮な原材料の調達もスムーズになります。

【対策②】製品によっては水質と水資源に恵まれている立地を選ぶ

食品工場の立地選定においては、水質や水資源の豊富さが重要なポイントとなります。

食品加工や洗浄工程では大量の水を使用するため、清潔で安定した水源を確保できる場所が求められます。
特に、地下水や川などの天然水源が豊富で、質の高い水を使用できる地域は食品の品質向上に寄与するでしょう。

一方で、排水には食品廃棄物や油脂が含まれることが多いため、汚れた水を浄化する設備やリサイクルシステムの導入が求められます。

【対策③】周辺環境を慎重に確認して選ぶ

食品工場の立地を選ぶ際には、周囲の工場の存在や環境の清潔さを慎重に確認することが求められます。

特に、煤煙や塵埃などが発生する工場が近隣にある場合、風向きや距離によって食品工場の衛生環境に影響を与える可能性があります。

そのため、年間を通じた風向のパターンや、隣接工場との距離を事前に把握しておくことが重要です。

食品工場の建設支援で「プラスPMが選ばれる理由」として、主に以下の3点が挙げられます。

  • 食品工場の建設支援で、豊富なノウハウや実績を有していること
  • 世界基準の工場品質を十分に把握していること
  • お客様の状況に合わせて柔軟な提案ができること

食品工場は一度建設して稼働を開始すると、変更や改修が非常に困難なうえ、追加で変更・改修するには余計な費用が発生してしまいます。

私たちプラスPMは食品工場の建設に関する豊富なノウハウや知見を活かし、工場新設や建替えの基本計画から設計、施工まで多岐にわたるサポートを提供しています。
また、食品工場プロジェクトの経験豊富なコンサルタントが担当しますので、安心してご相談ください。

生産工場・物流施設 建設、コンストラクションマネジメント
プラスPMの強み
導入の流れ・費用

2.食品工場の「建設事例」

ここではプラスPMが支援した食品工場の「建設事例」を紹介します。

食品工場の建設事例

  • 株式会社ウイッシュボン
  • 株式会社アヤベ洋菓子
  • 五十嵐冷蔵株式会社
  • AJINOMOTO(MALAYSIA)BERHAD

【事例1】 株式会社ウイッシュボン幸浦工場

建設プロジェクトの特徴

  • 各種動線やクリーン度等を踏まえたゾーニングの検討
  • 食品工場に求められる機能や施設に関する提案

洋菓子の製造・販売を行う株式会社ウイッシュボンの第2工場を神奈川県横浜市に新築した事例です。
食品工場としての「建物品質の確保」、「効率的で生産性の高い建物計画」、「早期の建物稼働」を目指し、実現しました。

用途 洋菓子の製造
所在地 神奈川県横浜市
延床面積 約1,970㎡
構造 鉄骨造・4階建
株式会社ウイッシュボン 公式サイト https://wishbon.co.jp/company/

【事例2】 株式会社アヤベ洋菓子

建設プロジェクトの特徴

  • 安全性と高品質を確保しつつ、予算内で最適な仕様
  • 食品工場建設の実績豊富な建設会社の技術提案を重視

高級な洋菓子を製造するアヤベ洋菓子の新工場の事例です。
製造する商品の「品質向上」と「生産量・売上の拡大」、さらに「工場施設の集約」を目的としています。

用途 洋菓子の製造
所在地 埼玉県吉川市
延床面積 約4,600㎡
構造 S造・2階建
株式会社アヤベ洋菓子 公式サイト https://www.ayabe-yougashi.co.jp/company/sample-company3/

【事例3】 五十嵐冷蔵株式会社 日高LSS 食品加工棟

建設プロジェクトの特徴

  • 建設事業全体の品質・機能・コストの最適化
  • 食品加工工場としての衛生管理目標の達成

五十嵐冷蔵株式会社のグループ企業向けに、飲食店や有料老人ホームで提供する食事の加工工場の新棟建設の事例です。
品質や機能、コストのバランスを考えた計画により、スムーズに竣工し、稼働を開始しました。

用途 飲食店や老人ホーム向けの食事加工工場
所在地 埼玉県日高市
延床面積 約2,500㎡
構造 S造・2階建
五十嵐冷蔵株式会社 公式サイト https://www.gorei-g.co.jp/premises/

【事例4】味の素(マレーシア)エンステック工業団地 新工場

建設プロジェクトの特徴

  • 創業以来続いていた拠点からの大規模工場移転プロジェクト
  • 敷地取得先の工業団地開発デベロッパーとの協議しながらの竣工

味の素株式会社の連結子会社であるAJINOMOTO (MALAYSIA) BERHAD(以下AMB)のマレーシア ヌグリ・スンビラン州エンステック工業団地への工場の新築移転の事例です。

約20万㎡の広大な敷地に、延べ床面積約5万3,200㎡の大規模な工場施設を建設しました。

用途 調味料の製造
所在地 マレーシア ヌグリ・スンビラン州
延床面積 約5万3,200㎡
構造 RC造、S造
AJINOMOTO (MALAYSIA) BERHAD 公式サイト https://www.ajinomoto.com.my/contact-us/factory-visit-0

今回ご紹介した食品工場の建設支援事例は、ほんの一部に過ぎません。
プラスPMは、日本国内および海外の建設プロジェクトに精通しており、最新の技術や品質を常に把握しています。
お客様のご要望に応じた最適な提案が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

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