PM/CM、建設コラム

本記事は、はじめて「建設プロジェクトの担当」になった方へ向けて、「設計・施工一括発注方式(デザインビルド方式/DB方式)」について、簡単に理解できるように図表や「他の発注方式との比較」を用いながら解説しています。
<発注方式の概要>

なお、建設する際の「発注方式(契約方式)」の概要については下記記事で解説しています。あわせてご覧ください。
設計・施工一括発注方式とは、「建物の設計業務と施工業務を1つの建設会社に発注・契約する建設手法」のことです。

英語では「Design-Build(DB)方式」と呼ばれ、海外では主流の発注方式です。
日本でも近年、公共・民間を問わず採用が広がりつつあります。
設計・施工一括発注方式の基本的な流れは以下のとおりです。
| 順序 | 内容 | |
|---|---|---|
| 1 | 事業者の選定 | 発注者が設計と施工の両方を行う建設会社を1社選定する。 |
| 2 | 設計・施工の契約 | 発注者が選定した建設会社と、設計から施工までを一括で契約する。 |
| 3 | 設計・施工の計画 | 建設会社が、施工のノウハウを反映させながら設計と施工計画を策定する。 |
| 4 | 設計と工事の並行進行 | 設計の進捗に応じて、工事の準備や段階的に施工を進めることができる。 |
| 5 | 完成 | 建設会社が工事中も設計図の品質を確保しているかを常時確認しながら、建物を完成させる。 |
上記のように設計から施工までを一貫して一つの事業者に任せることで、工期の短縮や発注者の負担軽減を実現できるのが、設計・施工一括発注方式の特長です。
一方で、1社がすべての工程を担うためコストの透明性確保や第三者による品質チェック機能の不在といった課題があるため、信頼できる事業者選定が成功の鍵となります。
設計と施工を一つの建設会社が担う「設計・施工一括発注方式」には、建設会社がどの設計段階から関与するかによって、大きく2つのタイプに分けられます。
一つは建設会社が基本設計から手掛ける方式、もう一つは実施設計から手掛ける方式です。
2つの方式の違いは、以下のとおりです。
<図 設計・施工一括発注方式の種類>

| 基本設計からの 設計・施工一括発注方式 | 実施設計からの 設計・施工一括発注方式 | |
|---|---|---|
| 契約の仕方 | 設計・施工を一括契約 | 基本設計と実施設計+施工を別々に契約 |
| 発注者の負担 | 少ない(一本化で簡便) | 多い(調整業務が必要) |
| コスト透明性 | 不透明な場合がある | 見積根拠の正確さがあり、コストの透明性も高まる |
| 品質管理 | 施工者が技術提案を行い、高品質かつ経済的な設計が可能 | 設計が確定した段階で施工者に引き継がれるため、当初イメージや性能が保たれやすい |
| 建設会社の技術力の活用 | 設計と施工が一体であるため、早い段階で施工技術やコスト縮減のノウハウを設計に反映できる | 当初イメージを維持しつつ、知見を活かしたVE提案を取り入れることで、コストの最適化と工期短縮、施工品質の向上を両立できる |
上記のように同じ設計・施工一括発注方式の枠組みの中でも、どの段階から建設会社が関与するかによって、契約形態から管理体制、発注者の役割まで大きく異なります。
「基本設計から」の設計・施工一括発注方式は、ワンストップでプロジェクトを進めるため、早期完成と発注者の負担軽減を最優先する場合には非常に有効です。
早い段階から施工のノウハウを取り入れることで、コストを早めに把握・確定しやすくなります。
「実施設計から」の設計・施工一括発注方式は、まず発注者が設計事務所と契約して基本設計を完成させてから建設会社を選ぶ方式です。
設計事務所とともに建物のイメージを自由に描きつつ、実施設計の段階では建設会社が加わり、技術的な知見を反映した設計に仕上げていきます。
コストの透明性も高く、「分離発注方式」と「一括発注方式」の良さを組み合わせた、バランスの取れた方式です。
「設計・施工一括発注方式」と、従来から多く採用されてきた「設計・施工分離発注方式」との違いを比較します。
なお、設計・施工一括発注方式にはいくつかのタイプがありますが、ここでは「基本設計から建設会社が担当するタイプ」を「設計・施工一括発注方式」としてご説明します。
| 設計・施工一括方式 (DB方式) | 設計・施工分離発注方式 (DBB方式) | |
|---|---|---|
| 契約先 | 設計・施工を一括契約 | 設計と施工を別々に契約 |
| 発注者の負担 | 少ない(一本化で簡便) | 多い(調整業務が必要) |
| コスト透明性 | 不透明な場合がある | 高い |
| 工期 | 短工期を目指す場合に有効 | 標準工期となり、短縮幅が少ない |
| 設計デザイン | 標準仕様に寄りやすい | 柔軟な設計が可能 |
| 品質管理 | 建設会社による「身内チェック」となる | 設計者による「工事監理」が中心 |
| 建設会社の技術力の活用 | 建設会社の技術力やノウハウを設計に反映できる | 設計に反映できない |
各方式にはそれぞれ特徴があり、一方が優れているとは一概にいえません。
加えて、設計・施工分離発注方式であっても、設計者の関与の仕方によって発注者の負担が軽減されるケースもあります。
このように、プロジェクトの内容や発注者の体制によって、適した方式は異なります。
なお、設計・施工分離発注方式を含む他の発注方式については下記記事で解説しています。あわせてご覧ください。
どの発注方式が自社のプロジェクトに適しているのか迷っている場合は、専門知識を持つ「コンストラクション・マネジメント会社に相談すること」をおすすめします。
専門的な視点から、各発注方式の特徴やメリット・デメリットを踏まえた最適な選定や運用方法まで、総合的にサポートしてくれます。
自社の目的や条件に合った発注方式を選ぶことが「成功への第一歩」ですので、まずはお気軽にご相談ください。
設計・施工一括発注方式(DB方式)の主なメリットは、以下の5つです。

それぞれについて解説します。
設計と施工を分離して発注する場合、発注者には設計者と建設会社の選定、個別の契約手続き、両者間の意見調整といった多岐にわたる業務負担が発生します。
一方、設計・施工一括発注方式であれば、設計者と建設会社の窓口を一本化できるため、発注プロセスが簡素化されます。
加えて、プロジェクト進行中のコミュニケーションコストも削減され、発注者側の総合的な負担を軽減できます。
設計から施工までを同じ事業者に任せることで、工期の短縮やプロジェクト全体の効率化が期待できます。
事業者選びの期間を短縮:
設計者と建設会社を別々に選定する手間や期間がなくなるため、その分スムーズに着工できます。
設計の手戻りがなく、工期の遅れを防止:
設計段階から施工の視点を入れることで、後からの大きな変更や調整をなくし、効率的に進められます。
窓口の一本化で、やり取りがスムーズに:
確認・調整がひとつの窓口で完結するため、コミュニケーションコストが減り、プロジェクト全体が円滑に進行します。
通常は、設計がすべて完了してから建設会社を選定しますが、設計・施工一括発注方式では、早い段階で建設会社と契約を結ぶことができます。
その結果、経験豊富な技術者や、腕の良い職人が所属する協力会社のスケジュールを早めに確保でき、質の高い施工体制を前もって整えることが可能です。
あらかじめ万全の体制を整えることで、工期の遅延リスクを抑えるとともに、建物全体の品質向上にもつながります。
特に近年は建設業界の人手不足や繁忙によって、施工体制の確保が難しくなっており、早期に体制を押さえられる点は大きなメリットといえるでしょう。
設計の初期段階から、施工のプロである建設会社の技術やノウハウを設計に直接反映できるのが大きなメリットです。
例えば、「より効率的な工法の採用」や「コストパフォーマンスに優れた材料の選定」といった施工面の工夫を、設計段階から盛り込むことができます。
その結果、設計と施工のズレを防ぎ、より実現性の高い設計を進めることが可能になります。
設計・施工を一社で一括して請け負うため、責任の所在は常に明確です。
万が一、建物に問題が発生しても、「設計と施工、どちらに原因があるのか」といった責任の押し付け合いにはなりません。
事業者が責任の窓口として一元的に原因を究明するため、迅速な問題解決が期待できます。
多くのメリットがある一方で、設計・施工一括発注方式には、発注者として事前に理解しておくべきデメリットや注意点が存在します。

それぞれについて解説します。
設計能力と施工能力は、必ずしもイコールではありません。
デザイン性に優れた設計事務所と、高い技術力を持つ建設会社を別々に選べる分離発注方式とは異なり、一括発注では「設計」と「施工」の両方を高いレベルで満たす一社を見極める必要があります。
デザインや技術力、コスト感、担当者との相性など、すべてを一社に委ねることになるため、最初の事業者選定がプロジェクトの成否に極めて大きな影響を与えます。
仮に選定を誤った場合、後から軌道修正することが非常に困難です。
設計者と建設会社が同じ組織にいるため、発注者の要望よりも「施工のしやすさ」や「自社の利益を優先した工法・仕様」が設計に反映されてしまうケースがあります。
本来であればもっと発注者の理想に近い設計が可能であっても、「その工法は手間がかかる」「その材料は扱いにくい」といった社内事情で、選択肢から除外されてしまう可能性があるのです。
その結果、デザインの自由度が制限されたり、本来採用すべき最適な設計案が見送られたりするリスクが考えられます。
設計・施工一括発注方式では、設計が完了していない早い段階で建設会社を決定するため、初期段階で正確な工事費用を把握することが難しいです。
また、分離発注方式では「完成した設計図に基づいて入札を行う」ことで競争原理が働きますが、一括発注方式では設計図が完成した後に入札を行わないため、費用の妥当性を判断する客観的な根拠が得にくいという課題があります。
その結果、設計の進行に伴って追加費用が発生し、気づかないうちに予算を超過してしまったというケースも少なくありません。
上記のようなリスクを避けるためには、価格の客観性を担保するための工夫が求められます。
設計と施工を分離した場合、設計者は建設会社が設計図どおりに正しく工事を行っているかを厳しくチェックする「工事監理」の役割を担います。
一方で一括発注では、設計者と施工者が同じ組織に属するため、チェック機能が「内部での確認」となります。
そのため、交渉が必要な場面などにおいて、発注者の立場を代弁する強い意見が出にくいケースも考えられます。
設計・施工一括発注方式が向いている建設プロジェクトは以下のとおりです。
設計・施工一括発注方式が向いている建設プロジェクト
設計・施工一括発注方式はプロジェクトの目的が明確で、スピードや効率、発注者の負担軽減を重視する場合に特に有効です。
また、工場や商業施設のように「何を」「いつまでに」建てるかが明確な案件では、設計と施工が一体となることで、スピード感やコスト効率が最大限に発揮されます。
ただし、発注者には「事業者の見極め」や「コストの透明性を確保する工夫」が求められるため、特性を十分に理解した上で選択することが重要です。
設計・施工一括発注方式は、工期短縮や発注者の負担軽減といった大きなメリットを持つ一方で、「コストの透明性」や「第三者による品質チェック機能の欠如」といった、発注者にとってのリスクも内包しています。
設計・施工一括発注方式のデメリットを補完し、発注者の利益を最大化するために有効な手段が、コンストラクション・マネジメント会社(以下、CM会社)の活用です。
コンストラクション・マネジメントについては下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
参考:
国土交通省|CM方式に対応した施工体制のあり方調査報告書
一般社団法人日本コンストラクション・マネジメント協会|CMとは
設計・施工一括発注方式で、「CM会社を採用した場合(CM方式)」と「一般的な発注方式の場合」の比較は以下のとおりです。
| CM会社を採用した場合 | 一般的な発注方式の場合 | |
|---|---|---|
| 発注者の負担 | 専門家が煩雑な業務を代行するため、負担を大幅に軽減できる | 事業者選定から契約、調整まですべての業務と責任を発注者が負うため、負担が大きい |
| 事業者選定 | 客観的な基準に基づき、プロジェクトに最適な事業者選びを支援する | 設計・施工能力を両立する一社を、自身で見極める必要がある |
| コスト管理 | 専門家が見積もりを精査し、コストの妥当性を客観的に検証する | 提示された見積もりの妥当性の判断が難しい |
| スケジュール管理 | 専門家が工程を管理し、計画の遅延リスクを低減させる | 事業者任せの管理となり、遅延の予兆を見逃しやすい |
| 品質管理 | CM会社が第三者の視点で品質を多角的にチェック | 「内部での確認」となり、第三者のチェックが入りにくい |
CM会社を採用しない場合、発注者はプロジェクトに関するすべての責任を負い、専門的な判断や調整を自ら行う必要があります。
一方でCM会社を採用すれば、発注者の「味方」として常に隣に立ち、プロジェクトの計画段階から建物の引き渡しまでを包括的にサポートしてくれます。
設計・施工一括発注方式を採用する場合、下記のような状況に当てはまるなら、CM会社の採用を検討することをおすすめします。
CM会社を採用した方がよいケース
設計・施工一括発注方式とCM会社を組み合わせることで、設計・施工一括発注方式のメリットを享受しつつ、そのデメリットを効果的に管理することが可能になります。
設計・施工一括発注方式で建設プロジェクトをご検討の際は、ぜひCM会社の採用も視野に入れてみてください。
もし、信頼できるパートナーをお探しでしたら、私たち「プラスPM」にご相談ください。
数多くの建設プロジェクトを成功に導いてきた経験を基に、常にお客様の立場に立ったコンストラクション・マネジメントをご提供します。
計画の初期段階からコスト・スケジュール・品質の最適化まで、一貫してサポートいたします。
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