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今後さらに重要視される国策的食品管理手法(FSMA)と宗教的食品管理手法(HALAL)を設備面から考える

食品製造業を営む皆様にとって、「食の安全」を達成するための「食品安全衛生管理」は大変重要なことです。

また、世界的にも食品規格の制度化に対する取り組みは活発であり、当コラムにおいてもこれまで数回にわたりGMPHACCPについて解説してきました。
今回は数多くある食品規格や食に対する国の政策や宗教などの事情などを踏まえ、改めて整理してみたいと思います。

多様な食品安全管理手法

HACCPとは

2018年に食品衛生法が改正され、HACCPの導入が義務化されることになりました。(関連記事: 2020年「HACCP義務化」その前に! )
HACCPとはHA(危害分析)とCCP(重要管理点)の二つの語句が合成されたもので、製造工程全体のフローにおける重要な管理ポイントを特定し、そのポイントを重点的に管理するシステムのことです。

従来の品質検査は完成品の抜き取り検査が一般的であったのに対し、HACCPでは製造の全工程において安全を管理する全く新しい食品衛生管理システムと言えます。

食品安全管理手法の理解

ところで、皆様は食品安全管理の手法としてHACCPの他にもいろいろな用語を耳にすることが多いと思います。
例えば、GMPやSSOP、そしてISO22000やFSSC22000などです。しかしこれらの手法について正しく理解している方は意外に少ないのではないでしょうか。

まず、HACCPを導入するにあたり作業環境を衛生的に確保しておく設備条件のことを「一般的衛生管理事項:PP」と言います。
そしてPPはハード的な側面であるGMP(適正製造基準)とソフト的なSSOP(衛生標準作業手順)から成り立っています。つまりHACCPはGMPとSSOPからなるPPの上位に位置するわけです。

ではISO22000やFSSC22000とは何でしょう。
まずISO22000は食品安全マネジメントシステムに関する国際規格のことです。その対象組織は、食品製造業およびそのサービス供給者を含むフードチェーンに関与する全ての組織で、食品安全管理手法であるHACCPを内包したものになります。

そしてFSSC22000とは、ISO22000よりさらに厳密に手法について設定した国際基準になります。

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国策的、宗教的な食品管理手法

FSMA(米国食品安全強化法)とは

米国は、HACCPの導入など食品安全に関する制度について世界を牽引してきましたが、2001年9月11日の米国同時多発テロなどを受け2002年のバイオテロリズム法によるトレーサビリティの導入や輸入食品の安全対策の強化が図られました。
また、多発する食中毒など、現行の食品安全制度の有効性が疑問視され、このような状況から、2009年に国策として食品安全強化法案が提出され、2010年11月に可決、2011年1月に成立しました。

FSMAとはFood Safety Modernization Actの略称で、米国内に流通する輸入食品にも適用されることから、日本の食品輸出関連事業者にもその対応が求められています。そのためジェトロではFSMAの具体的対応を促すためのセミナーや・FSMA103条の「ヒト向け食品に対する予防コントロール」(Preventive Controls for Human Food:PCHF)で義務づけられた資格PCQIPreventive Controls Qualified Individual)取得のためのセミナー等、各種セミナーを開催しています。

ハラール認証とは

ハラール(HALAL)、近年この言葉を耳にされる方は多いと思います。
その背景には、日本食市場が中華圏からASEAN市場に拡大し、さらにその先にあるイスラム食品市場(ハラール市場)を見据えているからです。
イスラム食品市場はイスラム人口の増加とともに拡大を続けその規模は現在1兆6千億ドルと推測されています。

ハラールとはイスラム法で「合法」を意味するもので「許される物」のことです。
そしてハラール認証とは各国が定めたハラールに関わる食品・医薬品・化粧品などの認証のことで、その基準や認証の形態は国により異なります。
したがって、輸出先の国の認証機関や公認の認証団体でハラール認証を取得する必要があります。

このようにHACCPやFSSC22000などの食品衛生管理手法をクリアした上で、国の施策による米国食品安全強化法や宗教的理解が求められるハラール認証もあるのです。

食品衛生法と施設(建築)基準

施設基準

HACCPは製造の全工程において安全を管理する全く新しい食品衛生管理システムであると前述しましたが、その管理を支える施設基準も食品衛生法により定められています。
食品を扱う施設の新築や改修について、大まかな基準は国が定め、さらに詳細な条件については、各地方自治体が地域の現状に合わせ、条例を定めています。その内容は、建設地や面積、床・壁・天井などの内壁や構造、明るさなどに基準があるほか、換気設備、手洗い設備、防虫設備の設置など多岐にわたります。

具体的な一例として横浜市の場合(一部抜粋)は次のように食品衛生法に基づく営業の施設基準を定めています。

〇食肉製品製造業

・営業施設には、原料保存室、原料処理室、製造室、製品保存室、調合室及び更衣室が設けられていること。
ただし、原料保存室又は製品保存室については、原料又は製品を衛生的に保存することができる適当な設備が設けられている場合は、この限りではない。

・原料処理室、製造室及び調合室の作業面の明るさは、50ルクス以上であること。

・原料又は製品の種類により原料又は製品を冷却保存する必要がある場合の営業施設には、原料又は製品を常に10度以下に保存することができる冷蔵庫が設けられていること。

〇乳製品製造業

・営業施設には、原料保存室、製造室、製品保存用冷蔵室及び更衣室が設けられていること。
ただし、原料保存室については原料を衛生的に保存することができる適当な設備が設けられている場合、製品保存用冷蔵室については製品を保存することができる冷蔵庫が設けられている場合は、この限りではない。

・製造室の作業面の明るさは、50ルクス以上であること。

・原料の種類により原料を冷却保存する必要がある場合の営業施設には、原料を保存することができる冷蔵庫が設けられていること。

・営業施設には、機械、器具等の殺菌設備が設けられていること。

畜産物加工データベース食品衛生法の施設基準」より一部抜粋

その他、菓子製造業、アイスクリーム類製造業や乳製品製造業など30以上の業態ごとに施設基準は定められています。

まとめ

食品衛生法の改正により、食品業界では、業界全体にHACCPの導入が義務化されるのに加え、関連する事業者は取引先や輸出先などの様々な要求事項を理解し、それぞれに適した安全管理手法の導入の検討が必要となります。
しかしながら、HACCPやISO22000及びFSSC22000そしてFSMAやハラール認証などそれぞれの特徴をしっかりと理解し、その仕組みを取り入れることで、ビジネスの大きな拡大につながる可能性もあります。

私たちプラスPMは、食品製造にかかわる事業者様の良きご相談相手として、これからも丁寧で分かり易いご支援を続けて参ります。


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