PM/CM、建設コラム

工場建設

「医療機器の工場」建設の基礎知識|基本構想・基本計画・設計段階等、予算内に収めるための要点を簡単解説

本記事は、はじめて「医療機器の工場の建設担当」になった方に向けて、医療機器の「工場建設を予算内に収める」ためにまず押さえておかなければならない基礎知識について、わかりやすく解説しています。

なお、同じ医療現場で使用するものを製造する工場に「医薬品工場」があります。
「医療機器工場」と「医薬品工場」には以下のような違いが見られます。

【医療機器工場と医薬品工場】
項目 医療機器工場 医薬品工場
主な規制 QMS省令やISO13485 GMP省令
重視する点 製品ライフサイクル全体での品質マネジメント 交差汚染・微生物汚染、コンタミネーションの徹底的な防止
空調・清浄度 製品リスクに応じた清浄度クラス 厳格な室圧管理と高度な清浄度
建物・内装 必要エリアでクリーンルーム仕様を適用 清掃・消毒が容易なR構造、平滑な表面および静電気を生じさせない仕上げ、防虫対策
製造用水 一般的に医薬品工場ほど厳格ではない 注射用水(WFI)など、大規模で特殊な設備が必要な場合がある

1.「基本構想」段階で行うこと

工場建設の最初のステップである「基本構想」段階では、まず現状を正しく把握し、建設計画の出発点を明確にすることが求められます。

1-1.課題を抽出する

工場を新設する場合、医療機器製造業に限らず多くの場合「すでに稼働している工場があり、何らかの理由で新工場を計画する」というケースが大半です。

医療機器工場の場合、その主な理由としては次のようなものが考えられます。

主な理由

  • 既存工場の老朽化
  • 増産体制の構築
  • 生産スペースの不足(狭隘化)
  • BCP(事業継続計画)への対応
  • 生産拠点の不足
  • QMS省令への対応強化
  • 新たな医療機器クラスへの対応

もちろん、これ以外にもさまざまな理由がありますが、共通しているのは「問題や課題がある」という点です。

したがって、建設計画をスタートする際に最初に行うべきことは、その現状を正しく把握することです。
現状の問題を明確にし、そこから課題を抽出し、さらに将来を見据えたゴールを設定することが、成功する工場建設の第一歩となります。

1-1-1.問題から課題をどう整理するか

例えば「問題から課題をどう整理するか」を示すと、次のようになります。

【工場建設の問題と課題】
問題 課題
既存工場の老朽化 QMS省令を満たす「安全で品質の高い製造環境」の実現
生産スペースの不足(狭隘化) 目標とする生産量を生み出す適切な製造空間の確保
BCP対策 被災などトラブル発生時の生産継続体制の確立
生産拠点不足 地理的リスクや物流効率を考慮した新たな生産拠点を計画・整備
QMS省令への対応強化 高度管理医療機器等の製造に対応した品質管理体制の構築
新規医療機器クラスへの対応 より厳しい基準の医療機器を製造できるよう専用エリア・設備を整備

1-2.ゴールを設定する

課題を抽出して明確にできたら、次に今回の建設プロジェクトのゴールを設定します。

ゴールは「何を・いくらで・いつまでに」という3つの視点で事業計画に合わせて定めますが、その中でも特に重要なのは、課題から導き出された「何を実現するのか」という点です。

例えば、「既存工場の老朽化」が問題であれば、次のようにゴールを整理できます。

何を:QMS省令に準拠し、最新の衛生・安全基準を満たした信頼性の高い新工場を建設する

いくらで:総事業予算○○で実現する

いつまでに:○年○月までに完成させ、○○から生産稼働を開始する

上記のように「老朽化」という現状の問題を出発点に、達成すべき完成像(ゴール)を具体的に描くことで、建設計画の方向性が明確になります。

2.「基本計画」を策定する

基本計画は、プロジェクトの方向性を定める土台となる重要なステップです。
ここでは医療機器工場の建設において重要なポイントを解説します。

2-1.「何を」「いくらで」「いつまでに」を決める

プロジェクト初期の基本計画の段階では、「何を・いくらで・いつまでに」を実現するために、まず「プロジェクトをどう進めるか」を考える必要があります。

2-1-1.「何を」:プラン構成の策定

医療機器製造における原材料の入荷から製造、最終製品の出荷までの全生産フローを整理し、関連法令や条例を確認します。
そのうえで、QMS省令やバリデーション規定に適合するための要求基準を設定します。

2-1-2.「いくらで」:建設予算書の策定

プラン構成をもとに建設に必要な費用を具体的に見積もり、事業計画に沿った予算を明確にします。

2-1-3.「いつまでに」:マスタースケジュールの策定

建設期間だけでなく設備導入や試運転も含めた全体スケジュールを組み、完成時期と生産開始時期を確定させます。

上記のような準備を経て、設定したゴールに到達するための具体的な「プロジェクトの進め方」を組み立てていくことが重要です。

2-2.発注方式を決める

工場建設の発注方式には、主に次の3つがあります。

主な発注方式

  • 設計施工分離発注方式
  • 設計施工一括発注方式(デザインビルド方式:DB方式)
  • ECI発注方式(Early contractor Involvement 方式)

それぞれにメリット・デメリットがあり、どの方式を選ぶかは「QCD(品質・コスト・納期)のどれを優先するか」によって方向性が決まります

特に医療機器製造工場の場合は、QMS省令に準拠した品質の確保が最も重要な要件となります。
そのため、まずはこの品質要求にしっかり対応できる設計者を確保できる発注方式を選ぶことが大切です。

お問い合わせバナー

3.「設計段階」で注意すること

医療機器製造工場の設計では、薬機法に基づくQMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)を満たすことが最も重要な前提条件となります。

QMS省令は品質マネジメントシステム全体に関わる枠組みであり、工場の設計から製造・品質保証までの一連の活動を規律するものです。
加えて、建築基準法や消防法、労働安全衛生法などの関連法規にも適切に対応することで、初めて安全性・信頼性の高い工場を実現できます。

3-1.設計時の留意点

工場設計においては、まずQMS省令の要求に沿って品質を確保することが前提となります。
そのうえで、以下のような具体的な設計上の配慮が必要です。

設計の留意点

  • 製造する医療機器のクラスに応じた清浄度レベルの確保
  • 交差汚染を防ぐゾーニング計画
  • バリデーション要求の確認
  • 原材料から最終製品までの効率的かつ安全な動線計画
  • 外部からの汚染物質(塵埃・虫・細菌等)の侵入防止策
  • 温度・湿度を安定的に管理できる空調設備の設計
  • 製品品質に影響を与えない仕上げ材(壁・床・天井)の選定

特に高度管理医療機器(クラスIII・IV)を製造する場合は、より厳格な環境管理基準を満たす必要があり、設備計画の重要度はさらに高まります。

参考:公益財団法人医療機器センター|医療機器の認証「認証制度とは」

3-2.予算内に収めるポイント

設計段階でのコスト管理も、QMS省令や法規制への準拠と同様にプロジェクトの成功を左右します。

実施設計が完了した時点で詳細な工事費見積が提示されますが、もし予算を超えていれば以下の判断が必要となります。

予算超過していた場合

  • 予算の上積み
  • 設計内容の見直し
  • プロジェクト自体の再検討

また、設計変更などでコストが変動する場合には、その都度概算コストを確認し、予算超過が想定される際には早めに削減策を検討しましょう。

4.失敗しない医療機器製造工場の建設

医療機器工場の建設では、まず QMS省令に準拠することが不可欠です。
そのうえで、現状の課題を解決し、将来の事業成長を支える生産拠点として機能することが求められます。

そのために計画初期では、省令に基づく運用方針を明確にし、設計段階では適合性の確認と防虫・防鼠・防塵対策などの技術的対応を徹底します。
また、製造する医療機器のクラス(一般・管理・高度管理)によって求められる品質管理レベルが異なる点にも注意が必要です。

こうした複雑な要件を満たすためには、豊富な実績と専門知識を持つパートナーの支援が不可欠です。
プラスPMは発注者の立場で工場建設を支援し、事業成功につながる最適な工場づくりを実現します。

PM/CM、建設コラムMENU

プラスPMについてもっと詳しく知る

  • 工場・物流施設 支援実績

    工場・物流施設 支援実績

    プラスPMの支援した生産工場・物流施設プロジェクトについてご覧いただけます。

  • プラスPMの強み

    プラスPMの強み

    プラスPMのコントラクションマネジメント(CM)の特徴や、CMについてを解説しています。

  • 会社案内

    会社案内

    プラスPMの会社概要・アクセスや主要取引先、沿革やトップメッセージをご覧いただけます。

  • 主要取引先

    主要取引先

    プラスPMの主要取引先を国内外問わずご紹介しています。

プラスPMへのお問い合わせ

当社コンサルタントによる初期ヒアリングは無料です。まずはお客様のご要望をおうかがいいたします。

電話

受付時間 平日9:30~17:30
(夏期休業および年末年始を除く)

当社サービスに関するお問い合わせ専用の番号となります

ページトップに戻る